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0. 父からの電話

 10月末、秋晴れのさわやかな朝のことでした。
 その日、私は、東京郊外の自宅で、二人の息子と妻が出かけた後、独り静かに過ごしていました。
 そこへ、家の電話が鳴りました。地元沖縄の父からでした。
「ハーイ、テツオくん、誕生日おめでとう!」
「あ、父さん。ありがとう。」
「テツオくん、君はもう32歳になったか。」
「うん、そうだね・・・。ところで、前に話したけど、来週末から帰省するから、そのとき家族みんなで食事するお店の手配、よろしくね。」
「あ、うん、モミジかツグミかに頼んどくサー。楽しみにしているサーネ。」
「うん、それじゃ、またね。」
「うん、またね。」
 会話はこれだけ、ほんの二、三分でした。
 秋の温かい陽が窓から差し込む、とても穏やかな朝でした。

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