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2019年10月の記事一覧

「舞台の上にあるものは、何もかもニセモノでなくちゃいけません。たとえ、役者が舞台上で本当に脳溢血で死んだとしても、その本物の「死」は、ニセモノに見えなくてはいけません。観客に大笑いされて退場しなくてはいけないのです」 〔三、四代目出雲阿国〕 野田秀樹『足跡姫 時代錯誤冬幽霊』

再生

映画 《万引き家族》

「捨てたんじゃないんです。拾ったんです。誰かが捨てたもの拾ったんです。捨てた人っていうのは他にいるんじゃないですか?」柴田信代(安藤サクラ) === 消費税増税前日の9月30日。 「増税前の爆買い」が話題になった。「爆買い」されているものがトイレットペーパーとティッシュペーパーだった。私もその日の夜ドラッグストアに行った。本当にペーパー類は品薄状態になっていた。オイルショックはこんなだったのかな、と思ってしまったほどだった。これまでの消費増税の時は、家や車など増税で数十万単位で打撃を受けるものが増税前に駆け込みされるような感じだった気がする。 それが、今回は、日用品の消耗品なのだ。 それくらい日本の経済は危機的なのだろうと思う。 他方、もちろんのことながら「増税前の爆買い」を冷笑する人たちが現れた。「2%だけでしょ?」「どうせ明日になったらもっと安くなるでしょ」「消費税増税に踊らされている」「増税前の爆買いとかしないで働け」と言わんばかりだった。 きっとこの人たちにはトイレットペーパーを爆買いしている人たちの気持ちなんてわからないだろうなと思った。私には冷笑している人の方が愚かに見えた。 こんな気持ちにさせたのは、おそらく《万引き家族》を見たからなんだろうなと、勝手に思った。「万引き家族」は日本にはたくさんいる。でも見ようとしなければ見つけることはできない。切り捨てることは簡単だ。見なければいいだけだから。直視しようとしてない人たちが、「警察」を気取って、「正義」をふりかざして、「万引き家族」をさらに社会的に排除していくのだろうな。 でも、それで本当にいいのか? 日本は「美しい国」のスローガンとともに貧しく冷たい富めるものしか幸せになれないところになってきた。こんなことが書けるからまだ大丈夫なんだろう、ということにしておこう。いやはや、いい映画だった。

死神と大罪。 韓国ドラマ 「トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜」vol.3

死神と大罪。 ドラマ「トッケビ」のふたつめのストーリ。死神はなぜ死神になったのか。 死神の仕事人間が死んだときに黒いスーツと黒いハットで身を包んだ死神が「名簿」を持ってくる。死んだ人にしかハットを被った死神は見えない。人は死んだ場所で、死神に死んだ時刻と年齢、名前を呼ばれ自身が死んだことを悟る。 その後、死神の茶房に行き、「現世の記憶を消すお茶」を飲む。現世の記憶を消したくなくても、死神から「神からの配慮だ」と言われ、死者は「お茶」を飲む。 死んだ人間に「現世の記憶を