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目指す未来と若者へのエール #03【株式会社NX総合研究所 井上 浩志】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。前回に引き続き、株式会社NX総合研究所で取締役を務める井上浩志さんにインタビューしました。#03では、「目指す未来と若者へのエール」についてお話いただきました。

<プロフィール>

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▼ 株式会社NX総合研究所 取締役  井上浩志氏
大手電機メーカーとシンクタンク系システム会社を経て、2006年に日通総合研究所(現・NX総合研究所)に入社。物流コンサルティングに従事した後、2015年に「ろじたん事業」を立ち上げ、現在、責任者として事業の拡大を遂行。


目指す合言葉は「ろじたんしようよ!」

― まずはこの先、『ろじたん』をどう変えていきたいか、目指すビジョンについて教えてください。

『ろじたん』は、業界のトップかつスタンダードを目指したいと思います。まずは物流業界に携わる人たちの中で、『ろじたん』と聞いたときに「あぁ、スマホやタブレットで時間計測できるやつね」と共通言語として理解してもらえるまでに認知度を高めることが目標です。つまり「ろじたんしようよ!」と言うと「作業時間の計測ね」とつながるまで認知してもらいたいと思っています。業界のトップになれば、必然的に多くのデータが集まるようになります。データが集まると、物流コンサルやシンクタンクとしての価値も上がると考えています。今後、データを持っているか否かは、物流コンサル会社としての大きな差別化要因になるでしょう。

また、現時点の『ろじたん』は、あくまで業務を可視化するためのツールでしかありません。ここに私たちの強みであるコンサルティングのノウハウを埋め込めないか思案しています。例えば、蓄積された過去のデータ傾向から、どこに課題があり、その課題に対してどのような解決策が有効かをシステム的に提案できるといった機能。こうした機能があれば、倉庫現場の改善を急速に進められると考えています。

AIも日々進化しているので、過去の作業時間の傾向から、翌日の作業に要する時間を予測する仕組みなども近い将来できると思います。その先は、倉庫の業績改善だけでなく、管理する人、作業する人たちの意識改革や、物流業界全体のレベルアップに貢献できる仕組みを作りたいと思っています。

― 物流業界全体では、どのような未来を目指しますか。

まだ物流業界の地位が低いと感じる機会もあるため、業界外の人からも「お、物流の人ってすごいな」と思われるよう少しずつ地位を高めていきたいです。最終的には、周りから一目置かれるような業界を目指したいと思っています。そのためには、データ分析を行ったりAIの力を借りたりすることはもちろん、教育レベルも含めて全体をレベルアップすることが重要だと考えています。そうすることで、物流業界で働く人の賃金は上がり、良い人材も入ってくるはずです。「物流やりたいです!」と言ってくれる人を増やすことが、我々の役目だと思っています

インタビューの様子

物流業界はオモシロイ

他業種を経て物流業界に入った井上さんにとって、物流のおもしろさとは何か教えてください。
 
ほとんどの会社で「モノを動かす」というプロセスが発生するため、どこにでも物流の存在があるということです。いつも、幅広い業界の仕事に携わることができるという楽しさと刺激を感じています。電機業界・小売流通・商社・医療機器・アパレル・自動車など、多くの業界に携わらせてもらいましたが、そのたびに新しい学びと刺激があり、飽きることはありませんでした。

またモノを運ぶということは、特に医療機器や医薬品の場合「命に関わること」とも言えます。社会インフラとしてきちんとモノを届けるということ、つまり「あって当たり前のサービスをきちんと提供する」ことはとても大切だと感じています。物流業界は漠然としているところがあるため、実際に働くイメージが湧きづらい業界でもあります。しかし、ジャンルや考え方、方法が多岐にわたるからこそ、提案やアレンジについて毎回あらゆる方面から試行錯誤できるところがとてもおもしろいです。

データ分析の重要性は、どのようにお考えですか。

モノの移動に伴い、多くのデータが発生します。そのため、物流業界では特に大量のデータを扱う機会が多いように感じています。私はデータを扱うのが好きだったので、毎回異なるデータを理解しながらExcelなどを駆使し、お客様のデータを元に課題へのアプローチを考えることに楽しみを感じていました。この先どの業界でも、売上データやマーケティングデータに基づいて定量的かつ論理的に説明する力は必要になります。20代や30代の若い時は大量のデータ操作に慣れながら、経験の浅い分野にも臆せず飛び込んでみてください。するとデータ活用を軸に、柔軟に活躍できるスキルが身につくと思います。スキルを得てから、自らが得意とする領域や業界を見つけ、磨きをかけていくのが良いのではないでしょうか。

"ちょっと上"がちょうどいい

― 物流コンサルタントとして日々の仕事の中で意識していることは何ですか。
 
お客様が望んでいることの“ちょっと上をいく”ことを意識しています。あまり行き過ぎてしまうと互いに疲弊してしまうので、ある程度のラインを見極めることが大切です。コンサルタントには、お客様が求めていることのはるか上を目指す人が多いです。しかしながらコンサルタントとは、マルチな仕事。Aの仕事だけをやって終われるわけではなく、AとBとCを並行しながら進めるのが基本的なスタンスです。そのため、ひとつのことに時間をかけすぎてしまうと疲弊してしまうのです。どこまでを目指して仕事をしていくか、少しずつ目線を変えて意識しながらバランスをとっていくことが、大切なことだと思います。

インタビューの様子

― 井上さんは取締役として、若手の育成にも力を入れておられます。その上で大切にしていることを教えてください。

我慢することです。私のレベルが高いという意味ではなく、人の仕事に対して自分のやり方やレベルを求めてはいけないと思っています。「ああしろ」「こうしろ」と自分のやり方を他人に押し付けてしまうと、どうしてもギャップが生まれてしまいます。そうではなく、許容できる範囲に収まっているかどうかでジャッジするのです。自分の考えと違ったアプローチをしていたとしても、仕事が求める水準を上回っていれば、それでいいんです。人材育成をする中で重視すべきは、実行したことに対してしっかりと評価し、課題についてはやんわり指摘すること。我慢とアドバイスをうまく使い分けながら継続的に指導し続けることが、リーダーやマネージャーには必要なことかと思います。

― 具体的には、日々の仕事の中でどんな「我慢」をしていますか。

お客様やパートナー企業からのメールに対して、他のメンバーからの返信がいつ来るかは気にしています。ただすぐに「どうした?」とは言わず我慢して、24時間はそのまま放置。24時間経ってはじめて、「〇〇の件って対応してくれてるの?」と尋ねるんです。すると、「忘れていました」「あとでやろうと思ってました」という返信があることも。実は、ベテランでもメールがたくさん届くとそれらを処理しきれないことがあります。ただ、メールは放置されると相手から「信頼できない」というレッテルを貼られてしまいます。お客様に迷惑をかけないよう、もしくはパートナー企業ときちんと信頼関係が築けるよう、最後ギリギリまで見守るようにしています。本当は気づいたときにすぐ指摘する方がラクですが、そうなるとメンバーから頼られてしまい、それぞれの力が身につきません。だからこそ、我慢して見守るスタイルをとっています。

― リーダーやマネージャーとして成長したいと思う人へ、今日から実践できるおススメのアクションを教えてください。

自戒も込めてにはなりますが、メンバーへの伝え方を考えることです。リーダーやマネージャーはメンバーを巻き込んで仕事を進める能力が求められます。言い方によっては相手の感情を「傷つけてしまう」「逆なでしてしまう」こともあります。例えば、期限に遅れそうな同僚や後輩に対し、「期限は必ず守ってください」「なんでスケジュール通りにできないんですか」と言いたくなることがあるかと思います。しかし、こうした言い方を続けていると、人によっては「生意気だ」「これからやろうと思っていたのに」と反発されることもあります。

そうならないために、まずはグッと耐えてやわらかい表現に変えてみてください。「(私は)〇〇さんは期限を必ず守ってくれると思っています」「(私は)〇〇さんにはスケジュールを守って仕事をしてほしいです」。これだけで、かなり柔らかい印象になりますよね。このように、相手に配慮して要望や気持ちを伝える表現を、アイメッセージ(I message)といいます。「私」を主語にすることで相手に寄り添った言葉に変えることです。ぜひ、自分の意見や思いを伝えるときの選択肢のひとつとして使ってみてください。
 

― データを相手にしながら、行動には人に対する温かさが溢れている井上さん。新たな技術によって物流業界が、より働きやすくなるのも遠い未来ではなさそうです。貴重なお話の数々、ありがとうございました。


<取材・編集:ロジ人編集部>



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