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2024年問題はすぐそこに。 #03【株式会社日東物流 菅原 拓也】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。前回に引き続き株式会社日東物流で代表を務める菅原拓也さんにインタビューしました。#03では、「独自目線で切り開く物流業界のミライ」についてお話いただきました。

<プロフィール>

▼ 株式会社日東物流 代表取締役 菅原拓也氏
1981年生まれ。千葉県出身。青山学院大学卒業後、西濃運輸、国分ロジスティクスの2社を経て2008年に株式会社日東物流へ入社。入社2ヵ月後、同社のトラックで発生した大事故をきっかけに「コンプライアンス改善の推進」を決意。コンプライアンスや労働環境改善に努める。2017年に2代目代表取締役に就任。



トラックドライバーのミライ

― 「コンプライアンス経営」や「健康経営」など、物流業界に一石を投じている菅原さんですが、業界の未来に向けて構想中のことを教えてください。
 
働く意欲がある高齢ドライバーのための、新規事業立ち上げです。日東物流の定年は65歳ですが、「まだまだ働きたい」「働かなくては年金だけでは生活できない」という声を多く聞きます。トラックドライバーの場合、安全の観点からトラックを運転することに対してはどこかで見切りをつけなくてはなりません。適正診断を受けた結果、反応速度が遅かったり視野角が狭かったりすれば、当然もうトラックに乗って仕事をすることはできません。

ただ、彼らの中にはまだ働く意欲がある方も多いのが実状です。かといって、トラックを何十年も運転し続けてきた彼らに、新しいコミュニティでゼロから仕事をし始めるのはとてもハードルが高いことなのです。このような働く意欲があるのに働けない高齢者は、この先どんどん増えてくるはずです。こうした背景から、彼らがトラックを降りても、私たちの会社で安心して長く働ける環境を整えたいと考えています。

― 具体的にはどんな働き方をしてもらうのでしょうか。

例えば68歳でトラックを降りたとしても、75歳や80歳まで自分のペースで、週に1回でも2回でも違う事業で働いてもらえるような仕組みを作りたいと考えています。収入面でいえば、年金と合わせて、月に20万円や25万円が手元に入るようになるのが理想ですね。私たちが健康経営に取り組む理由のひとつでもあるのですが、日本全体で労働人口が減少する中、健康で働ける期間を長くすることが労働力不足の緩和や解消になるのです。働く意欲のある人たちに、どのように活躍してもらうかは、今思案している最中です。

トラックドライバーが運転している様子

若者よ、アンテナは常に高く

― 菅原さんは現在、日東物流の代表取締役としてトップに立たれています。これから先、社会に羽ばたく若者に大切にしてもらいたいことを教えてください。

「アンテナを高く持つ」ことです。これは私が最初に入った会社を辞める時、上司に言われた言葉になります。大手の会社で大きな仕事をしていたら気づけることが、中小企業に転職すると、見えなくなってしまうことがある、とのことでした。つまり、中小企業においても、物流業界全体のことに対してアンテナを高くして、知識を吸収しながらキャリアを進めた方が良い、というアドバイスだったんです。

アンテナを常に高くしておくことでさまざまな知識を吸収でき、かつ発想も豊かになるのではないかと思います。若手時代は、若さゆえ色んな事に気付いたり、斬新なアイデアをひらめいたりできる時期です。私自身、学生時代のノートを見返すとものすごく恥ずかしいことを書いていたりもしますが、それはすごく大事なことだと思っています。

― 大切にしている言葉はありますか。
 
座右の銘というと照れくさいのですが、好きな言葉があります。小説家・武者小路実篤の『この道より我を生かす道なしこの道を歩く』です。私にとって“この道”とは“物流業界”で、私の能力を生かす場は物流業界以外にはないと思っています。実際のところ、私の適性が物流業界にあるのか、はたまた他の業界にあるのかは分かりません。しかし、物流業界で働くことが私にとってはベストで、最も能力を発揮できるのだと信じて動いています。

― 先行きの見えない社会で、「辞めたい」「この業界ではなかった」と、働く存在意義を見失う若者もいるかと思います。その点についてはどうアドバイスを送りますか。

人によっては「行きたくない業界で働かなくてはいけない」というケースや「なぜこの業界で働いているのか分からない」ということもあると思いますが、その業界で働くことになったのは何か意味のあることなのではないでしょうか。私の場合、嫌なことも辞めたいこともたくさんありましたが、目先のことだけを考えることは避けていました。

“その業界で働くことが、自分自身にとって意味があり、最も素晴らしいことである”と考えることができれば、めげそうなときに踏ん張って「自分がやらなきゃダメだ」と長期的なモチベーションにつなげられるはずです。実際、私自身も「物流業界以外に活躍できる場所はない!」と思っていたからこそ、実直に、長い時間をかけて少しずつ歩んで来られたのだと思います。

トラックが数台並んでいる様子

染まらない・学びをやめない

― 将来、役職に就くために必要なことは何だと思いますか。
 
まずは、業界や会社の慣習に染まらないことです。役職に就く場合、ダメなものはダメと正確にジャッジできる目を持たなくてはなりませんし、正しいと判断したことに対しては信念を貫かなければなりません。その次に必要なのが、学び続ける意思を持つこと。このふたつが出来るようになると、人生の可能性を大きく広げることができます。

例えばドライバーの給料について考える場合、知識の引き出しや思いつくアイデアの選択肢が少ないと「他の会社がこうやっているからうちもそうしよう」と、何も考えずに取り組むことになります。そうではなく、まずは幅広く興味を持って学ぶと良いでしょう。最近の労働問題を把握したり、異業種の知り合いから働き方について聞いたり、セミナーや勉強会に参加したり。多方面から知識を吸収すると、自分の中に選択肢が多く生まれます。どれが正しいのかは、結果論。しかし選択肢のひとつを選んだ時に、なにかしらの成功事例を生み出せるかもしれません。

私が取り組んでいる「コンプライアンス経営」や「健康経営」も、順調にいかなければ「そんなことばかりやっているから、コストがかかって会社が順調にいかないんだ」と言われてしまうでしょう。しかし、そうした選択肢が正しいと信じて進み続けてきたことで、成功事例を作ることができたと思っています。

「経験」と「学び」は、役職ではなく社会人全般に必要なものと言えそうですね。

そうですね。世の中は常に変化しています。今のやり方で成功していることが5年先も通用するかと問われれば全くそんなことはなく、どんどん新しい知識をアップデートしていかなくてはなりません。いざ選択を迫られたときの判断材料となるのは、情報や知識、経験です。

四六時中勉強し続けるなんてことはできませんが、それでも学ぶことを意識して行動するのはとても大切です。本を読んでみる、普段会わないような人と会ってみる、さまざまな土地に出かけてみる、なども学びのひとつ。「経験」や「学び」は、お金を使ってでも買うべきものだと思います

― 最後に、伝えたいメッセージをお願いします。
 
いま世間では『2024年問題』というパワーワードが取り上げられています。しかし、その大半がBtoCの宅配に関する内容で、私たちのような普段一般の方とは関わりのないBtoB事業者にスポットが当たらないという現状が、とても残念だと思っています。

物流が滞ると、モノが届かなくなるというだけではなく、モノを作るための原料が輸送できなくなったり、製品が作れなくなったりと、たくさんの問題が生じることが考えられます。買い物に行ってもモノがなく、混乱が生じてしまう前に、自分事として捉えてもらいたいと思っています。そのために、少しでもBtoBの物流に興味を持っていただき、『2024年問題』について、自分事として理解してもらえたら嬉しいです。
 
― 菅原さんの言葉ひとつひとつに、「物流業界をより良い方向に進めていきたい」という真剣な思いと業界への愛を感じました。貴重なお話をありがとうございました。


<取材・編集:ロジ人編集部>


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