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今後目指したいキャリアビジョン #03 【合同会社インフィニティーオクターバー代表社員 栗田由菜】

ロジ人では物流テックと分類される業界の著名人、サービスにフォーカスしていきます。今回は合同会社インフィニティーオクターバーで代表を務める栗田由菜さんにインタビューしました。#03では、今後のキャリア形成についてお話いただいています。

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<プロフィール>

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▼合同会社インフィニティーオクターバー代表社員 栗田由菜氏
大学在学中、コンビニにおける通販配達システム開発立ち上げを経験。大学卒業後は、数多くのECサイトにおけるシステム開発やITサービスの導入に携わる。その後、2015年に合同会社インフィニティーオクターバーを創設し代表に就任。以来、物流コンサルタントとして数多くの企業のEC及び倉庫のITサービス・コンサルティングを行なっている。
現在のプロフィールは、東京学芸大学大学院修士課程 / 平成31年将棋普及指導員 / ポケモンカードゲーム公式イベントオーガナイザー / MENSA会員
専門は成人教育(ノンフォーマル教育)、教育工学(インストラクション・デザイン)、現象学(E・レヴィナス)他にもアドラー心理学のワークショップにも参加。日本教育工学会 / 日本健康心理学会 / 日本教育支援協働学会 / 日本アドラー心理学会所属


今後のキャリア形成の展望

ー 栗田さんの今後のキャリア形成についてのお考えをお聞かせください。

私は仕事をお金のためではなく、自分の「人間的な成熟」のためにするべきこと、と捉えています。人生を歩む上で自分にとって何が一番大切なのか、また人間的に成長できているかどうかといった視点から、仕事を自己の成長する場として考えているのです。

成熟というのはフランスの哲学者であるエマニュエル・レヴィナスがテーマとして掲げています。わたしも超難解なレヴィナスの本を何年も読み続けてまったく理解できないことは理解できました。でもそのようなプロセスを経ることが成熟への一つの道ではないかとおもっています。そして、気がついたらレヴィナスの考え方や息遣いが私の知の基盤になっていました。

その上で、現実を見渡した時に、最近の若い世代の働き方の傾向として、3ヶ月ごとの成果や給料の高低などの短期的な視点からしかキャリア形成を考えていない場合が多いように感じています。私は、人生において局所的な視点で仕事をするのではなく、10年後や20年後の自分を見据えて成長できる職場や環境なのかを見極めることが肝要だと考えています。

ー 昨今、日本では働き方改革の推進が叫ばれるようになり、ひと昔前より多様なキャリア形成が世間的に認知されてきているようには感じます。

たしかに、少しずつではありますが、仕事内容そっちのけでとにかく大企業を目指すという風潮からは社会が遠ざかっているように思います。自分は何を目指したいのか、どんな人間になりたいのかというような軸を持っていなければ、結局効率が良くて給料の高い就職先を選ぶしかなくなってしまいます。

繰り返しになりますが、あくまで仕事は自分の人間的な成熟を促す一つの要素でしかありません。昇進や社内での成果ではなく、自分自身が時間の経過とともに成長できる道を常に考えて選択することこそが、キャリア形成をしていくにあたって大切なことだと考えています。

ー 最近では、一つの企業でキャリアを形成せずに転職することが当たり前になっています。

人口減少による働き手不足が、近年の転職活動の活発化を促進させているのだと思います。ただそこでも短期的な視点で転職をしているのであれば、転職を何度も繰り返すことになります。たとえば、「年収が低い」という理由で転職した場合、転職当初は自己肯定感が高まって満足するかもしれません。しかし、しばらく経てばもっと年収の高い企業への転職を検討するようになり、このサイクルを繰り返していくことになります。

日本は、他者からの評価を中心に考えたキャリア形成をする割合が非常に多いです。果たして世間体を気にして職場を選ぶことは、キャリア形成と呼べるのでしょうか。こうした風潮の影響で、特に物流業界では人材不足が深刻化し、将来的な配達サービスの継続が難しくなることが懸念されています。他者からの評価ではなく、何が自分自身の成熟や成長のために必要なのかを考えて仕事を選ぶことが重要です。

インタビューの様子

自分のキャリアを振り返って

ー 栗田さんはご自身のこれまでのキャリアについてどのように振り返っていますか。

仕事がなぜ必要なのか、自分にとってどんな意味があるのかを日々考えながらキャリアを積めたことは、自分自身を形作る経験として有意義だったように感じています。もちろん、ひとつの選択肢として、新卒で企業に就職していたらどうなっていたのかは少し気になります。しかし、エンジニア関連だけでなく、物流業界にも携わることができたり、一般のサラリーマンの方々がどうやって働いているのかを外から見ることができたりしたのは、私にとってかけがえのない経験であり財産です。

ー これからの時代にキャリアを形成していく上で、考えなければならないことは何でしょう。

人間的な成熟を考えることはもちろん、日本経済の推移もキャリアを形成する上でみておくべきだと考えています。

ー 具体的に教えてください。

従来の日本社会で理想とされてきたキャリアパスは、日本経済が右肩上がりに成長することを前提として描かれています。しかし、人口減少が進行し日本の経済圏が縮小している以上、理想としてきたキャリアパスは思い描いたようにはいかないと考えるのが自然です。たとえば、人材不足で物が届かなくなることが懸念されていたり、育休取得女性が増加したことによって周囲の負担が重くなったりといったポジティブの裏に隠れたネガティブ要素が、経済にも大きな影響を及ぼします。社会の仕組みや企業の構造が高度経済成長期から変わっておらず、社会の変化に対応できていないことが、こうした状況をもたらしているのです。

こうした変化について考えながら、いかに自分のキャリアパスを書き換えていくかが大切です。そして今後は、今まで成功だと言われてきたルートが通用しなくなってくる可能性があるでしょう。

ー これまで良しとされてきたキャリアパスモデルの先行きが不明瞭だからこそ、栗田さんの仰った「人間的な成熟」を考えながら仕事をする重要性がさらに高まるような気がしています。

生活するためには経済的な面ももちろん重要ですが、豊かなキャリア形成のためには経済面以外のキャリア軸が大切になってきます。キャリアを積んでゆく上での価値基準は人それぞれです。自分が納得できるような軸を見つけて、それに沿ったキャリア選択ができればいいですね。

そういう意味では、私も去年から普通にアルバイトを始めました。自分のなかにもっといろいろな価値基準をいれて、そして他の人がしないことをすることが私の軸の作り方です。

仕事をする目標を考えて転職を

ー 昨今では、転職者が年々増加しています。今後転職をするかどうか悩んだ際は、何をもとに決断をするべきでしょうか。

自分が何を次の職場に求めているかを考えた上で、転職先を選ぶことが重要です。基本的に、転職をしたいと思ったときには、すでに転職を決意してしまっている場合がほとんどです。だからこそ、多くの転職希望者は転職する理由を後付けで決めているのです。給料が安いのか、家から会社までが遠いのか、上司とうまくいっていないのか、こういった自分を納得させる理由を悩んでいるのです。

ー もう転職を考えた時点で転職をする決断はしていて、あとは理由を探す段階に入っているということですね。

そうです。そしてそのまま、後付けの転職理由を自分が転職先に求める条件だと勘違いしてしまい、流されるまま新たな職場を決めるケースが多くあります。そういった方々は、結局同じような思考を繰り返して、何度も転職を繰り返すようになってしまうのです。

ー 自分が職場に求める本当の目的がわかっていないことが、転職を繰り返すことにつながってしまうと。

人にはそれぞれやりがいや仕事の目的が必ずあります。だからこそ、転職をする際には転職したいと考えた本当の原因はどこにあるのか、また自分が仕事をする目的は何かを見つめ直さなければなりません。

ー 自分が仕事をする目的がわかれば、おのずと転職先も見えてくるということですね。

前述の話にもつながりますが、結局仕事をする上でどの軸を大事にしているかだと思います。私の場合は「人間的に成熟すること」をベースに、「人の道に反していないこと」そして「困っている人に手を差し伸べられる」ことを仕事の軸としています。

個人的には、将来的に自分が目指すゴールさえあれば、どんな選択をしたとしても最終的にはそこにたどり着くことができるのではないかなと思っています。やりたいことがあればやったらいいと思いますし、失敗した時は教訓だと思って学びと捉えることができれば人としての成長ができるはずです。

ー 長期的な視野でキャリアをデザインすることができれば、目の前の課題にも前向きに取り組めますね。

はい。自分が前向きに納得できるのであれば、正しい選択だと考えています。転職や人生で違うステージに進む際に「卒業」というキーワードを使う方がいますが、これまでいた職場に満足して次のステージや今後の進路が明確になっているからこそ出る言葉だと思うのです。会社から得られるものが何なのか、目標から逆算して自分に足りないものは何かがわかっていれば、会社を「卒業」したとしてもポジティブに人生を進んでいけると思いますね。

ただ人生に「卒業」はないので、仕事も一つのプロセスと捉えて進むことが必要ではないかと考えています。それこそが生きる意味なのかもしれません。

ー お話いただきありがとうございました…!

ロジ人編集部と栗田さんで記念撮影


<取材・編集:ロジ人編集部>


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