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学生起業で選んだ「物流×アルゴリズム」にかける想い #02 【株式会社オプティマインド代表取締役社長 松下健】

ロジ人では物流テック(LogiTech)と分類される業界の著名人、サービスをインタビューしていきます。#02では松下さんが描いている世界観についてや、今後挑戦していきたいことについてお話していただきました。最後には学生から起業していた松下さんだからこそ伝えられる、若い人たちに向けたメッセージもいただいておりますので最後までお見逃しなく!

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▼ 株式会社オプティマインド代表取締役社長松下健氏
岐阜県岐阜市出身。名古屋大学情報文化学部卒業、名古屋大学大学院 情報学研究科数理情報学修了。専門は組合せ最適化アルゴリズム/厳密解法/メタヒューリスティクス。学術研究と実社会の架け橋になりたいという想いから、2015年に株式会社オプティマインドを創業。


目的は「世のため人のため」

ー 2020年4月にForbes 30 under 30 Asia 2020※に選出されていましたよね。選出されるために戦略的に動かれていたのでしょうか?

いや、全然なにもしてなくて、急に迷惑メールみたいな感じで外国人からメールきて(笑)Forbes Asiaって来たから一回消したんですよ。そしたらリマインドで来たから、なんだこれと思って見たら、ノミネートされましたって書いてあって。何の前兆もなかったです。後から分かったのですが、過去に受賞した人たちが、候補者を推薦するんですよね。去年とかは僕にも来て、30歳未満で活躍している起業家知りませんかって英語でメールが来ました。そこからその部隊が色々調査して選ぶらしいです。

※Forbes 30 Under 30 Asia 2020とは:毎年アジア太平洋地域の23の国と地域を対象に各分野で活躍中の30歳未満の人材を選出するForbes誌の企画。3,500人を超えるノミネートの中から10カテゴリー計300人が選出され、過去にはサッカー選手の香川真司氏やテニス選手の大坂なおみ氏が選出されており、世界的にも名誉ある賞となっている。

ー そうだったんですね(笑)実際にForbes(雑誌)のインタビューも拝見しましたが、「人の温かさの部分にフォーカスできる世界をつくりたい」という回答が印象的でした。それは具体的にどのような世界なのでしょうか。また、その世界はどのようにしたら実現可能だとお考えですか。

ありがとうございます。社員にも話しているのですが、一番しちゃいけないのは、最適化すること自体が目的になってしまうことなんですね。

最適化するために物流会社さんはどうなってもいいというのは本当のミッションではないと考えていて。究極のミッションは、綺麗ごとに聞こえるかもしれないですが、働いてる人や世の中が幸せになるための手段として、最適化をしなければいけないと思っています。

インタビューの様子

ー とても本質的な考え方ですね。

例えば、ある大手の物流会社さんがルージアで全体最適をした結果、岐阜(※松下さんは岐阜県出身)の田舎の営業所がない方が営業利益があるという結果を出せちゃうんですよね。でもそれって住んでる人からしたらめちゃめちゃ不幸せじゃないですか。それって本当に幸せなんだっけっていうのが僕らとしてはあります。

問答無用にドライに最適化するのではなく、この人たちにも荷物が届くという世界をどう持続可能にするかっていうゴールに対するHowで、あくまでドライバーを支える基盤としてアルゴリズムがないと、無機質な世の中になってしまうというのが前提としてありますね。

その上で目指したいのは、例えば、今の世界では宅配の荷物を届けたときに、おばあちゃんが判子を持ってくるのに戸惑ってたらイライラしてしまいますよね。早く次行きたいのにって。そうではなくて、おばあちゃん大丈夫だから、ゆっくり判子持ってもらっていいよって待つ世界を目指したい。おばあちゃんを待ってる間に、実は裏側でアルゴリズムが計算をしていて、少し遅れてるから、あの荷物をこの人に預けておきます、というのが自動で計算される世界観を僕らは目指したいと思っています。ドライに最適化しないという信念が根本にありますね。


ー 最適化というと人を排除するようなイメージを持ってしまっていましたが、全然違うんだなと思いました。

実現したい世界とは

ー オプティマインド社は最近資金調達もして順調に見受けられますが、松下さんが今後挑戦したいことはありますか。

大きく二つあります。一つ目は、今はあくまで日々の配送の効率化にしかフォーカスできていなくて、いわば「業務効率化専門のシステム屋さん」になっているのですが、もう少し物流業界の意思決定をアップデートしたい、レベルを上げたいと思っています。とても僭越な発言なのですが…。今はテクノロジーが進んでるので、データドリブンで「こういうところって非効率ですよね、でもこういうふうにしちゃうと、こういう人たちに歪(ひずみ)が起きますよ」っていうのを全部定量的に出せた上で、物流の責任者さんが、それでもこうしようっていう意思決定をするところまで自分たちが提案したいです。

今って、(定量的に)やるべきことが見えない中で「やっぱりこれやった方がいいよね、多分」という決め方で、判断基準が曖昧だと思うんです。実施した結果、ドライバーさんからのやめた方がいいというご意見で取り下げることが結構多いんですね。そこに少しでもファクトを与えて物流の責任者さんの意思決定の手助けになりたい、手助けすることが多分僕たちの使命なんじゃないかなって思っています。

「ルージア」は今は配車マンやドライバーさんのルート最適化ツールですが、将来的には責任者や業界の人たちに対して、セールスフォースのダッシュボードのように、全体を考える時の判断材料として与えてあげるようなプロダクトに昇華したいと思っています。

インタビューの様子

ー ありがとうございます。実現したいことの二つ目を教えて下さい。

二つ目は、やっぱり海外を考えており、外貨をある程度稼ぎたいと思っています。日本の物流品質ってめちゃくちゃ高いので、そこのナレッジを海外に輸出したいですね。自分たちのプロダクトを直接広げていくのか、開発者用APIのような形で海外版のルージアを作ってる人に繋いでもらうとのかは分からないですが、中長期的にミドルマイル※からラストマイルを中心に今後も展開したいと考えています。川上の物流輸送は現在は考えてないですね。

※ミドルマイル:「物流センターから店舗などの中継点」への輸送を意味し、川上の長距離大型物流「ロングホール(long haul)」と、消費者向けの宅配「ラストマイル」の中間領域にあたる。

世の中を知れる、それが物流

ー 先ほどは今後の展望として、「ルージア」を業界に対してファクトを与えるプロダクトにしていくこと、そして海外展開に取り組まれていくことの二点を挙げていただきました。実は、私達がロジ人を立ち上げたのも「業界を活躍している人達の姿や思いを通して業界にいる人や、若い世代の人を鼓舞する」思いがありまして。ですが、今、物流業界に興味を抱く若者が少ないというのが課題としてあります。若くして活躍されている松下さんから、若手へのメッセージをいただけると有難いです。

ありがとうございます。それでいうと、僕が経営しているオプティマインドに入ってくれるメンバーもそうなんですけど、「世のため人のため」みたいな人が多いんですよね。一昔前だと「お金を稼ぐ」ということがステータスだった時代から、明らかに時代遷移していて、今って自分たちが内発的動機で世の中のためになってるって実感が、報酬対価であるという人たちが多いんですよね。そういう手触り感がやっぱり一番感じられるのが物流なんじゃないかなって思ってます。

なぜこう思っているかというと、メタバースやゲームを除いたほとんどの産業で物流って絡むわけですよね。教育だって教科書運んでる物流会社さんがいるし、給食を運んでるドライバーさんもいるわけだし、医療でもワクチン輸送もあるし、みんなが当たり前に健康診断で採血してるのを検体回収してる運送会社もいるわけで、ありとあらゆるものはモノが動いてる状態なんです。物流業界に飛び込んでみると、学生さんからすると、トラックの運ちゃんみたいなイメージしかないかもしれないんですが、全産業を知れる物流という切り口で、色んな産業が世の中でどう成り立っているかを知っていくことは、キャリアという意味でも絶対にプラスだし、純粋に面白いと僕は思ってますね。

インタビューの様子

ー 私も就活してた時、物流は正直私生活で意識した事がなかったんですけど、飛び込んでみたら、すごく面白いなと思いました。

そうですよね。これは学生さん向けというよりは業界向けなんですけど、自分たちで自分たちをちょっとネガキャンしすぎてる気がしていて。名古屋ベンチャーと同じ話で、名古屋ってベンチャー不毛の地って言われるんですけど、それって業界の本人たちが言っているから周りからも言われてるんですよ。(一同笑)それと一緒で物流業界は人気ないとか、物流業界はおっさんしかいない、泥臭い業界だって言ってるからそう伝わってるだけなので、もっとキラキラ感出して、自信持っていいんじゃないかなと思ってて。いや面白いよとか、来ないとやばくない?くらいの感じで。業界から激アツ感を発信していくことが大事なんじゃないかなと思います。


ー まさに
松下さんのTwitterの発信を見て、キラキラで激アツな感じが伝わっているのかなと思います。松下さんだけではなくオプティマインドの方々は広報まわり、本当にお上手ですよね。

全社で広報まわりを強めていこうというのは、去年くらいに僕が直下で始めて、個人の人事評価のKPIにも入れています。記事の数をKPIにしてますね。とにかく露出を増やして、興味を少し持って採用サイトに来てもらったら、基本的に社内の雰囲気が分かるようには極力しようとしてます。あとはエンジニアしか見ないようなサイトの記事に、エンジニアが投稿するとかですね。


ー とても注力されているのですね。私はもともとスタートアップに興味があったので、松下さんのこともずっと知っていて、憧れだったので今日お会い出来て嬉しいです。

ルージアが当たり前の存在に

ー あとは経営者としてのお話をお伺いしたいです。中長期のお話だと先ほどデータドリブンの話をいただいたのですが、この先、直近3年~5年くらいの目標ってありますか。

まずルージアのシェア国内1位を目指したいです。そもそも配車市場自体がそこまで成熟してないので、アルゴリズムに頼っても大丈夫なんだと、業界の認知を変えることはやりたいなと思ってますね。

今はまだそこの認知獲得で失敗してしまったり、システムがなくてもずっと人間だけでやっていけるよ、という考えの人たちもいらっしゃって。いよいよ2025年度で人手不足になった時に、で、どうしようってなってるけど過去に失敗したし、配車システムは頼りないんだなという認識の人たちがいっぱいいらっしゃると思います。いやいやもうフェーズはそういう感じじゃないですよっていうのを伝えて、3年ぐらいでルージアが一強だよねって感じに会社としてはしていきたいですね。

素晴らしい先輩たちと肩を並べられるよう頑張りたいです。物流業界の経営者の先輩って良い人が多くて現在も仲良くしていただいてます。僕なんて学生上がりで社会経験もなくて、人脈もない状態から、多くの人が別け隔てなく温かく受け入れてくれるというか。入る前は絶対関われない領域に見えるんですけど、実際入るとみんなとっても歓迎してくれて。物流業界来てくれてありがとうね、って感じじゃないですか。それがいいなと思いますね。スタートアップもそうだし、お客さんもそうなんですけど。あったかいですね。

特にShippioさんとsoucoさんと仲良くさせてもらってて、採用イベント一緒にやろうとか、マーケティングとか展示会ってどうやってるとか、情報交換しています。僕らじゃなくて社員同士が勉強会やってたりしてますね。


ー 横のつながりも意識されているのですね。次に、若手起業家として名高い松下さんですが、仕事に対する中長期のモチベーションを教えていただきたいです。

クセが強くて自分の意思がある人はほっといても起業するし、ほっといても戦い抜けるんです。でも僕みたいな中間層というか、やりたいことは強い思いはあるけれども、人間的に大企業にも勤められちゃう層が「私も挑戦してもいいかも」って思ってもらえるサンプルでありたいなと思っています。私でもできるかもって思ってもらえる人でありたいというのはすごくありますね。(小早川に向かって)是非起業して下さい。あ、しばらくは(ダイアログに)居てください、危ない危ない(笑)


ー (笑)、最後に、告知などありましたらお願いいたします。

オプティマインドでは採用を積極的に行っており、色んな人材や面白い人たちがいますよってことはお伝えしたいです。エンジニアやBizDeVなど職種も沢山ありますが、物流業界を経験していない人が多いということは強調したいですね。業界を知らないけれど世のため人のためになりたいって人たちが、入社して一か月物流業界を勉強したら面白いねってドップリはまっていくんです。我々の告知というよりは業界の告知として、業界経験のない人たちが活躍できる業界でもあると思うので、自分は物流業界を知らない、という理由で気負わなくていいなと思います。

例えば弊社でセールスしている社員がいるんですけど、彼女はもともと大学卒業して小学校の先生をしていて、それからうちに入ったんですよ。もう一人の若手が、新卒で大手アパレル企業の店長していて、それから弊社に入社したんです。という感じで、全然違う業界が来ているんですけど、普通にTwitterで興味ありますってDMくれたりとか、転職サイトでたまたまスカウトしたりとか、そういう感じですね。

最近意識しているのは、社内の情報を極力開示するようにはしています。僕だけじゃなく、こういう仕事していますよとか、物流業界のセールスってこういう感じですよってことを記事で出したりとかはしてますね。

ー 貴重なお話を沢山聞かせて頂き、本日はありがとうございました!


松下さんとロジ人編集部小早川さんで記念撮影
松下さんとロジ人編集部小早川さんで記念撮影

<取材・編集:ロジ人編集部>


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