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今年初ムヒ

日曜の夕方のスーパーの帰り道急に涙が出てきて、将来が不安なのか生理前かどっちだこれ、どっちもかと思いながらとぼとぼ社宅の階段昇ってさ。今日は日差しが強かった。シーツ洗ってる最中だからマットレス剥き出しだけどまあいいかと、家につくなりベッドに大の字になって放心して、そんでふと近くの山の上の神社に行くことにするのよ。そしたらそれが結構険しくて。もうすぐ17時なのにこんな山道進んで大丈夫か?帰り道分かんなくなっちゃうんじゃない?考えると途端に死にたくねぇなと思えて目印になりそうな青い小石探すんだけど、ないよね、ないからもういいやと思ってずんずん進む。汗がじっとり出てきて蚊が寄ってくる。今年初。蚊、刺すのはいいけどかゆくさせるのやめてくれよ。でも私は祈りのために祠を目指すから歩き続ける。彼が元気でありますように。夢を追うために少し遠いところへ行ってしまった彼が、ついに一ヶ月前から全く連絡が取れなくなった彼が、今日もちゃんと生きていますように。来週の試験の合格の先に彼の夢があるんだから、合格しますようにが正しいんでしょうけど、どうも上手くそれ神様に言えないな。私の夢じゃないし。私が言ったら違うじゃん。早く合格してそんな浪人生みたいな、っていうか僧侶みたいな生活やめちゃって、私の隣で眠りなよ。夏になったらクーラーがんがんにかけて寒いねって言いながら毛布被って擦り寄ってきてよ。にゃんにゃんって言って甘えてきて、アイス買いに行こうよ、えーもう深夜だよってもうここにない過去を反芻して、神様あの彼を返してくださいって言ってるみたいじゃない?考えすぎ?考えすぎて6ヶ月、私は、身体のバランスがばかになってるよ。山の中腹で寝転んで上を向く。ここは空が青くない。色んな種類の背高の木がワサワサと生い茂って空があるはずの場所が見渡す限りの緑。足首かゆいなぁ。それからしゃがんでもう一度首だけ上を見上げて動かずにいると、しばらくして、貧血か怪我したかに見えたのだろう、シュッとしたお兄さんが後ろから駆け寄ってきて「大丈夫ですか?」と声をかけられた。体調は大丈夫です、彼と将来はどうなんでしょう?「大丈夫ならよかったです」にっこりしてお兄さんは私を抜かして歩いていき、その後見えなくなるまで2回も振り返って様子を確認してくれた。心配しないで、一休みしてるだけだからと合図がてら手を振って見送った。家に帰ったらすぐに汗だくの服を脱ぎ捨てて、シャワーを浴びて身体を拭き、姿見の前に立った。また痩せている。彼を失って性欲も失った身体がどんどん厚みをなくしていくのを感じながら、テーブルに積まれた本に目をやる。最近和歌山県の熊野地方に熱中していて毎週のようにメルカリで買った関連図書が増えていく。熊野って黄泉の国なんだって。くびれをなぞりながら、腹斜筋は身体を捻るときに使う筋肉で、これを鍛えることで体幹がよくなるのだというピラティスの先生の言葉を思い出す。私の身体はますます先生の言うところの美しい身体になり、私もそれに呼応するように健康的な食事を心掛けることでまた引き締まり、そしてこの身体の使い道が分からない。ごちゃごちゃ言ってないで探せよって?分かってるよ。この後、姿見の前から移動してちゃんと服着て社宅の先輩と飲みに行ってるから。仕事どうやったらうまくいくか、後輩どうやって育てるか、教えてもらって一頻り笑った。楽しかったなぁ。神社に行った話は先輩にはしなくていいかなってそれ正解だった。ムヒ塗って寝よ。

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