見出し画像

アイドルが売れるためには 〜盛り上げるための術とは

売れてるアイドルには理由があるという話の第二回。パフォーマンスで盛り上げる術を知っている、ということについて触れていきたいと思う。

こんな経験はないだろうか。激しいギターリフやドラムに合わせて、メンバーは踊り、オイオイ!煽ってくるがどうも客席が乗っかってこない、微妙な空気感………おそらくやっている側もいたたまれない気持ちだろう。当然、これには複数の要因があるわけだが、いくつか上げていく。


【メンバーと客席の距離感】

何でもかんでも曲が鳴れば、コールを入れたくなるような人種が揃っている現場なら幸い(ハロヲタはこの辺甘め)だが、メンバーが盛り上げようとしても、観客の側が心理的な壁を作っている状態では煽ったところで上手く行くものではない。では、この壁はどのような状況から生まれているのか。

・グループを知らない

・ノリが分からない

・曲を知らない

根本的な知名度というか、人間誰でも初対面の人とは恐る恐るコミュニケーションをしてしまう。それが対バンであまり見た事無いグループとかであれば、そこで100%楽しむ人は希有だろう。

心理学において【ザイオンス効果】というものがある。簡単に言えば、単純接触した回数が多い程親しくなる、という法則である。この効果は10回まで実際に会ったり、電話やメールなどをすると心理的距離感が縮まるというものだ。恋愛において、3回会って進展しないと希望がない、という話も、これに基づくものである。

つまり、初めてライブで見た時から10回の接触の間に、その人を引き込めなければ、自分のライブで声を出してもらうのは難しいというわけだ。逆に言えば最初は知らなかったグループでも、色んな現場で会ってるうちに推してはいないけど盛り上がってくれる、ということは起こりうる。その数をどれだけ増やせるのかというのが、最初の関門だろう。

当然、接触した時の態度やコミュニケーションの質というのが重要になる。顔がかわいい、顔が好みというのはもはや度外視するとして、その人それぞれ、ライブ中に目一杯踊ってるとか、レスをくれるとか、物販で覚えてくれるとかは変わってくるだろうが、大きく言えばライブそのものの出来だって、コミュニケーションの質と言える。


10回もライブ見てれば、ノリは分かっているかと思うが、ここでもう1つ、メラビアンの法則というものを考えたい。人は情報を受け取る時、話の内容(言語情報)が7%、口調や話の早さ(聴覚情報)が38%、見た目、手振り(視覚情報)が55%の割合とされている。時折見られるのだが、煽るメンバーだけが感情を爆発させて振りかぶって煽っているが、他のメンバーはどこかしらっとして踊っている場面だ。

1つ前の記事でも書いたが、パフォーマンスは【エネルギーの交換】である。メンバー一人が息巻いたとしても、グループとしてはトータルのエネルギーで見た時に、本当に観客に届いているだろうか。


曲を知らない、というのは非常に難しい問題である。正直、一発で心を動かされるような良曲、アイドル楽曲大賞にノミネートされるような代物を持ってれば話は別だ。しかし、どこのグループもそんな強い曲を作れるとは限らない。10回ライブを見ているうちに曲も覚えたりするだろうが、もっと曲を覚えてもらうためのプロモート方法はたくさんある。


【指原莉乃も使う盛り上げ術とは】

・後方のお客さんを温めろ

生粋のハロヲタであり、今やTIFの公式チェアマンを勤める指原莉乃だが、彼女がライブの時にHKT48のメンバーに言い続けて来たのが「後方のお客さんを温めろ」という言葉だ。

48グループは普段から200〜300人程度のキャパの劇場でライブを行っている。舞台上からは最後尾も確認が出来る程度の大きさである。その大きさに慣れてしまうと、他の会場に行った時にその大きさに合ったパフォーマンスしか出来ないのである。

これは、彼女が見ていた頃のアリーナクラスでライブをしているモーニング娘。などのグループを見てのものが大きいように思う。映像で見ても分かるが、大会場での経験が多いグループは常に視線が上や遠くにあり、パフォーマンスも大きく、声や煽りにしてもそこへ届くようにと行っている。例えば、ハロプロであったとしてもグループでそういう大きな会場での経験が少ないグループは、パフォーマンスそのものの上手さはあっても観客を巻き込んで盛り上げていく力には乏しい。

先日のロッキオンジャパンでSOUND OF FORESTに出演したアンジュルムもリーダー竹内が隣接するフードコートのお客さんにまで声をかけ、最終的にはそちらまでお客さんがはみ出していたというのだから、すごい話である。


・目の前のお客さんにロックオン

後方のお客さんを温めろ、と言った矢先に、最前のお客さんにアプローチをする話だ。これは、後ろのお客さんを温めている最中だからこそ活きる。見つめるでもいいし、指差しでもいい。1日のライブで誰か1人見定めて、特別感を演出するのだ。

これが圧倒的に上手いのが、後藤真希だ。周囲が会場の上の席を指差し煽っている時や曲中の少しの隙間に、最前のお客さんや自分のファンにしているのをよく見る。またその時に緊張の抜けた笑顔を見せるギャップの付け方も上手い。

変則的にこの技を使うのは、SKE48の須田亜香里である。劇場公演などでかつてはアンダーとして最後尾の三列目で踊っていた彼女は、そこからお客さんをロックして、視線を送ったり、笑いかけたりするなど気に留めてもらうというのを繰り返し仕掛け続けた。パフォーマンスのレベルは高く、握手のコミュニケーション能力も高い須田だったが、こういう技術にも長けているのである。

 

・言葉遣いで距離を近付ける

一番最初に激しい曲でオイオイ!と煽る、というパターンを話したが、例えばでそれで客席との温度感があるというのは、観客側が温まっていないという場合も考えうる。そこで敵対的、扇情的な煽りをしても、付いてはこない。

指原莉乃の煽りは客席との距離が非常に近い。言葉のフレーズとして「あれあれ、まだまだ聞こえませ〜ん」や自らも全力でMIXするなど、非常にポップなのだ。形式的なコールに囚われず、まるで観客と同じ立場のようにアクションすることで、楽しんでいる自分とリンクをさせていくという技術になる。

これはMCも含めてなのだが、言葉というのはその人の内側から出てくるものじゃなければ伝わらないし、人として相手と向かい合っていなければ伝わらないものだ。

そこで言うと、二丁目の魁カミングアウトのぺいにゃむにゃむの煽りは時としてメロディラインからはみ出す勢いだ。しかし、二丁魁の楽曲はポップさはありつつも、彼等が訴えたいメッセージ性に富んでいる。必死さやそのテンションが楽曲のエモーショナルを加速させて、ライブとして成立させている。

今年のTIFの大阪☆春夏秋冬のSMILE GARDENでのMAINAのMCも話題になった。最後の曲前に人生の失敗や曲に込められたメッセージを真摯に訴えかけた。元々自分の言葉を強く持つタイプのボーカルだが、その姿勢が初めて見たという人にも深く刺さったようだ。

反対に、ロックフェスでのももいろクローバーZ百田夏菜子の言葉は、目の前にいるアイドルファンではない人達を刺激する。また、その言葉を裏付けるパフォーマンス力で応えて見せるからこそ、評価を上げ続けると言えるだろう。


・振りコピ、シンガロング、曲にも盛り上げ術はある

パフォーマンスだけじゃない。楽曲やコレオにも客を引き込めるポイントを作ることは可能だ。一見さんでも真似のしやすい振りを入れるというのも1つだし、K-POPのガールズグループやCRE8BOYのコレオによく見るのは、一目見ただけでその曲である印象的なポーズを入れるというのも効果的である。またそれを曲前に教えたり、曲中に動きを教える煽りがあったっていい。

曲中にコールが入れやすい構造の楽曲を狙って作るのだって作戦の1つだ。例えば、シンガロング、皆で一緒に歌ったり、コーラス部分を歌うような曲も一体感を生むはずだ。自分達の曲はそこまで計算されているだろうか。

 

最後に、心理的にコミュ障や人見知りだけど、アイドルには興味があるという子は少なくないと思う。しかし、コミュニケーションを成功させるコツは、自己開示する、ということにあるのだ。恥ずかしがったり、緊張して動きが小さくなるよりも、嬉しさや楽しさというポジティブな気持ちをパフォーマンスに変えた方が観客には伝わりやすい。もし、自信が持てないなら死ぬ程練習してステージに上がればよいのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?