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絵本から経済を考える 第3回 「子どもが夢中になる、登場人物が大人だらけの、ちょっと珍しい絵本について」 谷 美里

 子ども向け絵本の主人公は、動物でなければ子どもである。これはもう、ほぼ全ての絵本についてそうだと言えるだろう。試しに過去に読んだ絵本を思い出してみてほしい。あるいは手近にある絵本を何冊か、パラパラとめくってみてほしい。人間が登場する絵本で、子どもの出てこないものがあっただろうか。滅多にない、はずである。
 ではもし、動物たちの話ではなく人間たちの話で、かつ子どもが一切出てこないような絵本があるとしたら、つまり、登場人物が全て大人であるような子ども向けの絵本があるとしたら、それは一体どんな絵本だと、あなたは想像するだろうか。大人たちが子どものような振る舞いをする世界の話……? どこかにそういう話があったような気もするが、他にはどうだろう。ちょっとなかなか思い付けないのではないか。
 そうだとしたら、それは私たちがもう当たり前に大人になってしまったからであろう。大人しか出てこない話で、子どもが目を輝かせて夢中になって読むような絵本が、果たしてあり得るのか。当たり前に大人になってしまった私たちは、その可能性になかなか思い当たらない。

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