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#日記

夜のシーツお化けの巨視的ルーティーン(河野咲子のマイクロダイアリー8月12日)

朝の時間が東から訪れるのと同様に夜の時間もまた東から訪れるのだというごく当然のことをわたしは大抵覚えていない。 確かめるためにはごく単純な手順をふめばよく、まずはスマートフォンを手に取って顔の前にしばらく掲げ、ロック解除されたらホーム画面を右にスワイプ。整然とならんでいる角丸の正方形のアプリアイコンのうえから4段目のいちばん右、思いのほか親指でタップしやすい箇所の、明るめの藍色に触れて画面をひらく。はじめに気づくのはそこに緑褐色のオーストラリア大陸が描かれていること、そうだ

濡れた草むらの住人たち…(河野咲子のマイクロダイアリー7月16日)

湿った草むらのなかにIさんが手を突っ込み、ざわざわと草をゆらしつつ跳ねてゆくなにかを追っていく。その指の先になにがあるのかわたしの目にはわからないがどうやらとても小さく、おそらくは緑色の生きものであることが見てとれる。「バッタですか?」と聞けば「かえるです」と答えた。 「逃げた」 吊るさないタイプの絵馬があり(立て札のように地面からにょっきりと生えていた。それを絵馬と呼んでよいものかわからない)、油性ペンが添えてあった。コロナが収まりますように、ウクライナに平和がおとずれま

食思考マラソン(28)飲酒について(ノンアルコールビール その2)|太田充胤

ノンアルコールビールの常飲という、飲酒しない人からみれば二重に不可解と考えられる習慣についての話の続きです。 多くの酒飲みにとって、ノンアルコールビールは仕方なく選択される代替物であろうと思われます。飲みたいがさまざまな事情で飲めないときに、ビールの代わりに飲むもの。味覚を通じて脳を騙し、あたかもアルコールを摂取しているかのような気分で飲むもの。宴会でノンアルコールビールを飲んでいると、アルコールも入っていないのに酩酊感を覚えるというのはよく聞く話です。 しかしながら、私

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ラムネ瓶について知らなかったいくつかのこと(河野咲子のマイクロダイアリー7月10日)

夜。ばらりとした群れをなして公園通りを下り、なにか飲みものを買おうといってコンビニに入り、まっさきに目に入った瓶を即座につかんでわたしはもうレジで会計をしている。瓶をにぎりしめて外に出たとき、ゆっくり歩いてきた面々がようやくコンビニに入ろうとしていた。 旅に出る直前のロカストの会議は、なにかを熟議するための会議というよりもちょっとした前夜祭のように浮き足立っている。浮き足立ったまま夕飯を食べていたら店が閉まり、全員入れるような次の店を探すのが面倒になって、なぜか学生みたいに

12個の直方体(河野咲子のマイクロダイアリー7月7日)

かぞえてみると12個ある。長さは4cmくらい、太さは1cm四方。全体的に青い粉をうっすらまとっている。 くすんだ白。うすももいろ。灰色。こげちゃ。黄色。土色。あお。あいいろ。くろ。茶色。あか。ふかみどり。 パステルの箱をしめ、裏返し、答え合わせをする。

食思考マラソン(27)飲酒について:ノンアルコールビール その1 |太田充胤

ご無沙汰しております(ごめんなさい)。 この4月から大幅に生活が変わり、かなり忙しく過ごしていたのですが、ようやく気持ちの余裕を取り戻しつつあります。 この連載を書いていなかった半年間、自分が日々の食事に際して何を考え、どのように食べていたか、ほとんど思い出すことができません。 日々の食思考は、振り返って書き留めなければすぐに色あせて消えてしまいます。いや、そもそも食思考らしい食思考が働いていたのかどうか、よくわかりません。言ってみれば、「そんなこと」にリソースを割く余裕の

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タクシー譚(抄)(河野咲子のマイクロダイアリー7月1日)

改札を出て、駅の階段を降りてゆくとなめらかすぎるロータリーが目に入る。深夜、ここから中心街のホテルに行くまでの電車もバスも走っていないことを知ったのは新幹線の終電に乗ったあとのことだった。 たった一台のタクシーがロータリーに泊まっていたのでそれを逃すまいと早足で近づいてゆくと、さほど近づいてもいないうちにタクシーの扉がぱかりと開いた。なおも近づいてゆきながらわたしはホテルの名前が思い出せないでいた。首尾よくひらいた扉からまずは車内にすべりこみ、間を持たせるために「ホテルに行

白さのために見分けがつかない(河野咲子のマイクロダイアリー6月30日)

直径3cm程度のまるいもの。たいていそれらは複数でひとまとまりになっている。碁石でもオセロでもないけれど、はんぶんは薄茶色をしてもうはんぶんは白い、と言ってみるとほんとうに白いものだったかにわかに自信がなくなってくる。ほんとうに白い生物などいるものかしら。

ミシン台の上のミシン針と布の出会い(伏見瞬の日記) 6/28

「ミシン台の上のミシン針と布の出会い」←これを日記のタイトルにしようと思う。普通のことしか書かないぞという誓い。 アボかどさんのLil Nas Xの記事を読んだ。 こういう、作品と作家だけでなく、作家同士の関係、ファンダムや取り巻く環境の状況も含めての紹介というのは大いなる役割を果たすと思う。 ヒップホップのホモフォビアは以前から言われ続けているけど、現状どのような形を取っているかをLil Nas Xというアイコンから導き出している。 全体の流れとしては、同性愛嫌悪の具

とうめいで迂闊な幾何学(河野咲子のマイクロダイアリー6月27日)

頂点の数をかぞえてみると13個あり、もういちどかぞえてみると12個ある。何個までの頂点であれば正n角形の角の数をひとめで見分けることができるのかよくわからない。

伏見瞬の日記 立ち止まった6/27

暑さに体がやられる。スタミナは比較的持っている方だが、暑さだけはどうにもならない。その割には、今日はやろうと思っていたことをやれた気がする。 朝の通勤路の日陰で立ち止まったのを覚えている。工事している土地の前あたりで、日陰の気温はマシだけど、見えている景色から暑さを感じていた。 ロカストの次の告知をしました。事前に告知すること、私は迷っていて、少し慎重に連絡をとっていました。とりあえず、11月には新刊でますのでお楽しみに。(今日は全部無料公開です、短いし)

生活が下手すぎる。ぼろぼろ(北出の日記)

朝、スプーンを歯の間に引っかけてしまい、無理やり抜こうとして歯と歯茎を痛めた(テコの原理的な感じ)。なんか「ミシッ…」って鳴った気もする。夜になった今も慢性的に痛い。

伏見瞬の日記 赤く染まった蓮根の輪切り 6/26

Real Soundに掲載された千葉雅也×荘子itの対談を読んだ。 細部書いてみれば文章が進む、というところでなんとなく感じていたことが明確になって元気出る。 記事として、短くまとめているところが良いと感じた。なぜだろう。 京都のお昼ご飯を漬物屋で食べた。

矩形のなかのきらきら(河野咲子のマイクロダイアリー6月26日)

角のまるい縦長の矩形、わずかな厚みがあるけれどぜんたいに流線的なフォルムをして、右上に細かなひびが網の目に入り、よく見ると中央あたりにもひとすじのひびが横切っている。