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批評観光誌『LOCUST』の有料マガジンです。 毎月、LOCUST編集部を中心とした執筆人が、コラム・エッセイ・マンガ・小説などを寄稿します。 豪華ゲストによる寄稿、著名人へのイ… もっと読む
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#コンテンツガイド

LOCUSTコンテンツガイド(書籍6) 〜 中谷宇吉郎『雪』 〜 谷 美里

 季節は初夏だというのに、雪についての本を紹介しようとしている。季節はずれの感が否めないが、読書というのはそもそもそういうものであって、棒アイスをかじりながら雪国にも行けば、毛布にくるまって蝉の声を聞きもする。たまたまいまの時期に、雪について書かれたいい本に出会ってしまっただけのことである。冬まで待ってから紹介する手もあったが、感動を忘れぬうちに書いておきたかった。

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LOCUSTコンテンツガイド(書籍4)〜圧倒的に短い小説について〜 谷 美里

 いま書店に行くと、平台ひとつを丸々占領する〈5分後に意外な結末〉シリーズの特設コーナーをしばしば見かける。小中学生に大人気のショートショートアンソロジーで、シリーズ累計発行部数は300万部を超える。各エピソードは5分程で読める長さで、必ず意外なオチのあることが売りだ。現在多くの小中学校で行われている毎朝10分の「朝の読書」の時間に読むのに最適で、「『朝の読書』で読まれた本」ランキング(2018年度トーハン調べ)でも、上位にランクインしている。

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LOCUSTコンテンツガイド(映像5) セリーヌ・シアマ『燃ゆる女の肖像』 イトウモ

 なぜ、エロイーズはマリアンヌのほうを見返さなかったのか。  18世紀、歴史の闇に埋もれたらしい女流画家マリアンヌは、高貴な令嬢エローイズの肖像画を依頼を受ける。モデルと、雇い主であるその母らが暮らす屋敷へ向かう途中、小舟から波間へ転んだ画材を救うべく、自身も海へと身を投げ出すマリアンヌ。ずぶ濡れで屋敷にたどり着くと、暖炉の火に裸体の輪郭を晒して素肌を温める。着替えの終わった彼女は、女中のソフィからエロイーズの姉が絵のモデルをつとめるのに疲れて、崖から身を投げたことを聞かされ

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LOCUST コンテンツガイド (書籍3) 〜 「耳の時代」 に読むべき 『昔話の語法』 〜 谷 美里

 『昔話の語法』というタイトルを見て、興味なし、と思った人は多いだろう。しかしこれは、タイトルから想像されるような話題に関心のある人を満足させるだけの本ではない。いまの時代、多くの人にとって無関心ではいられないような話題を提供する本なのである。「いまの時代」というのは、「目の時代」から「耳の時代」へ移行しつつある時代、という意味だ。「耳の時代」を「音声の時代」と言い換えてもよい。

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LOCUST コンテンツガイド(音声3) Adrianne Lenker『Songs』 『Instruments』 伏見 瞬

知ってる人には釈迦に説法だが、The Big Thiefが昨年立て続けに発表した二作のアルバム『U.F.O.F』『Two Hands』は大いに評価されたし、個人的にも最高だった。2015年にニューヨーク、ブルックリンで結成されたこの4人組は、2000年代後半のブルックリンのインディーシーンの盛り上がりが収束した後の無風の状況において、例外的な成功を収めた(ただ、外からの盛り上がりを欠いているとはいえ、当時のシーンにいたミュージシャンたちは今も優れた作品を残し続けている)。

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LOCUSTコンテンツガイド(映像2)『シチリアーノ  裏切りの美学』 イトウモ

かつて、パレルモを本拠地としたイタリアン・ギャング「コーサ・ノストラ」。1980年代から勃興した新興ギャングと、麻薬の流通ルートをめぐる抗争の激化によってギャングのみならず抗争相手の一族郎党、毎年100人規模の大虐殺が行われた。ギャング映画といっても、コッポラのような古き良き優雅な神器の世界の話ではない。深作欣二の「仁義なき」無秩序な殺し合いの狂乱世界でもない。このマルコ・ベロッキオの新作映画は、そのあとの物語。抗争で息子を奪われ政府に同胞の密告を決意した実在のギャング、トン

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コンテンツガイド 風景2 〜風景の日本 第2回「喫茶 フラミンゴ」

池袋駅西口、東京芸術劇場の傍にタイトーのゲームセンターがあって、そのビルの地下2階に「喫茶 フラミンゴ」がある。広い店内の真ん中には水槽があり、熱帯魚たちが悠々と泳いでいる。 店内はいつもちょうどいい人の混み具合で、近くにある立教大学の学生やサラリーマンの集団もいれば、怪しい人びとも多い。今も私はフラミンゴにいるのだが、右隣では法華経について初老の男性が3人で延々と語り、左ではカメラを持った男女が国道沿いのラブホについて話し、目の前では怪しいマルチ商法の勧誘が行われている。

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LOCUST コンテンツガイド(音声2) Homecomings『Whale Living』(2018)  伏見瞬

今や音楽レビューと言えば誰かの最新作の最新レビューであり、一瞬話題になって「大傑作!」などという言葉が無償で費やされてからすぐに通り過ぎていくことが繰り返される。そのような環境が、さも当然のような顔をして幅を利かせている。 かと思えば、超安価ライブラリと化したリスニング状況の到来によって、星の数ほど存在する録音芸術音源が毎日のように掘り起こされ、深ーくてチーープな聴取体験が「音楽」を特権視する生物群の日々に埋め込まれている、と言った事象もまた、幅を利かせまくっている。

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LOCUSTコンテンツガイド (書籍2) 『銀河の片隅で科学夜話』 谷 美里

理論物理学者が語る、現代科学の様々な分野の成果と、それをめぐる人間の物語。天空編、原子編、数理社会編、倫理編、生命編の5編から成る、全22話。

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LOCUSTコンテンツガイド(映像2)『ブルータル・ジャスティス』 イトウモ

その映画はひっそりと公開されている。ミニシアター系ではない。中間映画。アクションやセックスに満ちて、娯楽映画のはずだがアニメやコミックのようにファミリー向きではない。『ブルータル・ジャスティス』は本街のシネコンや地方のイオンモールで、TV-CMもパンフレット販売もなく本編とは似て非なる勧善懲悪風の予告編が流れ、誰にも目につかない場所でひっそりと楽しまれる。

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LOCUSTコンテンツガイド(美術2) ー「購入した作品」評(星川あさこ「壁」) 伏見 瞬

先日、相模原のパープルームギャラリーで開催された、星川あさこ個展『ファンタジー・ホスピタル』に伺った。  「星川あさこ」はアーティスト然とした自意識を感じさせない存在だ。今回の展示も、外側に自己を誇示するというより(自己顕示が必ずしも悪い心性だとは思わないが)、ユーモアと病とかわいらしさと息苦しさが渾然と同居する内側へ、訪れた人を自然に誘うものだった。ファンタジー・ホスピタルという言葉が、その世界の在り方を巧みに捉えている。どの作品にも自分の感受体を刺激するものがあったし、

コンテンツガイド 風景1 〜風景の日本 第1回「富士そば 三光町店」

歌舞伎町とゴールデン街の雑踏の奥にひっそりとたたずむのは、江戸以来の新宿の総鎮守、花園神社だ。猥雑な熱気と境内の静謐な雰囲気が混じり合うこの不思議な区画は「新宿5丁目」という。街の猥雑さとは裏腹に、とても静かで、システマティックな名前だ。でも、その町名はまだ若い。東京の町名は幾度の市区改正を経てさまざまに変化し、「新宿5丁目」という町名が名付けられたのも、その変動を受けてのことだった。かつてこの辺りは「三光町」といった。花園神社の別名「三光院稲荷」が由来だという。1920年に

LOCUSTコンテンツガイド(映像1)〜見てない映画の映画批評1 イトウモ

コンテンツガイドで映画批評を書く。となると、きっとこれは「みんな」に面白い映画を紹介するコーナーかなにかになるのだろう。みんな。って誰? きっとそれは映画に興味のある人もない人も、映画をよく見る人も見ない人も、映画が好きな人も嫌いな人も映画ってなに?って人もみんな含めた「みんな」になる。ただ、もうすでにそんな映画批評の文章は溢れている。今更書くことなどなにがあるだろうか。

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LOCUSTコンテンツガイド(書籍1)〜 『クマにあったらどうするか アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』 谷 美里

本書は、アイヌ最後のクマ撃ち猟師であった姉崎等さん(1923-2013)の語りを文字に起こしたものである。

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