【突撃!隣のプロンプト!】株式会社レトリバ 鷺坂文野さんに聞く、ChatGPT活用チャットボット「YOSHINAボット」
本記事は、AI人材リモートアシスタント「ロコアシ」による企画記事です。
テキスト分析AIツール「YOSHINA」を運営する「株式会社レトリバ」の「鷺坂文野」様にお話を伺います。
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テキスト分析AIツールの「YOSHINA」が主力事業の株式会社レトリバ
「株式会社レトリバ」の鷺坂文野です。当社は2016年に設立され、8期目を迎えています。当社は、株式会社Preferred Infrastructureという企業からスピンアウトした形で設立されました。
この企業からは、もう1社、株式会社Preferred Networksというスピンオフ企業も存在しており、日本一のユニコーン企業として認定されています。
Preferred NetworksはIoTの技術を主に継承し、当社は日本語の自然言語処理を継承して設立されました。技術的には、自然言語処理をコアコンピタンスとし、機械学習や深層学習を組み合わせて様々な事業を展開しています。
主力製品としては、テキスト分析AIツールの「YOSHINA」があり、これに加えてChatGPTを活用した新型の生成AIチャットボット「YOSHINAボット」も11月から販売開始しています。
研究部門を持っているところも、当社の強みです。
主力事業YOSHINAの他にも社内文書検索やバイオの領域、遺伝子の検索などのソリューションも提供しています。研究機関からの研究受託も行っており、今年からは生成AIも全部署を横断して取り組んでいます。
私はYOSHINAのプロダクトオーナーを務めております。コールセンター業界出身で、エクセルのVBAを用いた自動化や呼量予測、センター予算、発注業務などを担当する中で、AI導入プロジェクトに参画していたのが、業務におけるAIとの最初の接点です。
その後、クレジットカード会社でテキストマイニングツールの運用やVOC分析・SNS分析・NPS調査などの「何をデータとして使って、どう改善活動していくのか」というプロジェクトの再構築の取り組みを担当いたしました。
改善施策を進める中で、手ごたえを感じながらも、大手企業ならではの課題に直面しました。これをきっかけに、メーカー側から課題解決にアプローチしていけるのではないかと興味を持って、コールセンター時代のAI導入プロジェクトで接点があったこともきっかけで、レトリバへ2018年に入社いたしました。
特に印象的だったのは、ChatGPTの応対の精度
——ChatGPTのファーストインプレッションを教えてください。
ChatGPTに対するファーストインプレッションは「正直、やばいものが出てきたな」でした。インターネットそのものが登場したときのインパクトと同じくらいの影響が出るのではないかと感じました。
特に印象的だったのは、ChatGPTの応対の精度です。人のように会話ができる機能は、一部の領域に特化したチャットボットでは実現されていましたが、汎用的な知識を持って対応できるものは存在していませんでした。
多くの既存の技術やサービスを脅かす存在として感じられました。
企業DXの弊害を解消するためチャットボット「YOSHINAボット」の開発に着手
——「YOSHINA ボット」誕生までの経緯を教えてください。
企業のDXが進む一方で、顧客の声が聞こえなくなってしまう懸念を解消するため、生成AIチャットボット「YOSHINAボット」の開発に取り組むこととなりました。
当社がテキスト分析AIツール「YOSHINA」を提供する背景には、コールセンターが主要な問い合わせ対応手段であった時代から、ウェブやチャットなど対応チャネルが増え、企業が取得すべきテキスト情報が増加していったことがあります。
対応チャネルが増えるにつれて、企業にはデータが溢れ、活用が難しくなる課題が生じました。
YOSHINAは、多様な声を集めて分析し、各チャネルの傾向や、どのような問い合わせや拡販導線を設けるべきかを分析することができます。
一方で、対応チャネルが増えた分、対応リソースを用意するのが難しくなる課題も、データ取得より前に解消せねばなりません。人件費の問題や、チャットボット導入による効率化の期待から、チャットボットの導入数は急速に伸びました。
しかし、チャットボットは、簡単に応対ができるという触れ込みながら、本当にちゃんと応対させる品質を実現しようと思ったら、非常に労力がかかります。
また、これまでのチャットボットはシナリオベースでの対応が主流でした。特定の質問に対する回答速度や品質は優れていますが、消費者のアウトプットは減るため、チャットボットでは消費者の声からインサイトを得るのが難しくなりました。
例えば「再配達の受付が何件なのか」はチャットボットでも集計できますが、再配達になる理由を把握し、再配達しなくて済むような仕組みを考える時、どのような課題を消費者が抱えているのか判断するデータが少ないのです。
少ないデータから分析する難易度の高さはYOSHINAとしても課題で、特に要約技術の面での限界を感じていました。
そんな中、ChatGPTの技術が登場し、要約技術の課題が大きく解消されました。これにより、人のような応対と、企業のメンテナンス工数を減らした運用、そして顧客の声をしっかりと捉えることが可能となりました。
用意されたシナリオから単純に回答するのではなく、お客様が求める回答を的確に提供する「YOSHINAボット」
——「YOSHINAボット」について、詳しく聞かせてください。
「YOSHINAボット」の強みの一つは、用意されたシナリオから単純に回答するのではなく、お客様が求める回答を的確に提供する点です。
YOSHINAボットは、質問が来た際に、内部のナレッジ集から関連する情報を検索します。そして、ChatGPTを使用して回答文を生成します。この際、質問が企業に関連するものかどうか関連度を判定し、関連しない質問には「わかりません」と回答するようにしています。
ChatGPTは一般的な情報には強いですが、企業固有の情報には弱いため、このような仕組みを取り入れています。企業固有の情報をナレッジ集に登録することで、より正確な回答を提供することができます。
また、導入スピードの速さも強みです。
YOSHINAボットは、ドキュメントやサービスサイトの情報を直接取り込むことができるため、旧来のチャットボットのように、初めから緻密なQAやシナリオを組み立てる必要はありません。これにより、プロジェクトの開始が迅速になります。
私たちは、まずは始めてみることと、その後のチューニングや改善を、機械の力や専門家の知見を活用して効率的・効果的に進めることを推奨しています。
もう一つの強みは、メンテナンスと運用面でのサポートです。
解答の精度を検証する際、特定の業界や業務に関する質問の回答が不足しているか、ChatGPTの力を使ってチェックし、自動で出力することができます。
前さばきや調整はYOSHINAボットが代替し、導入企業は、業務特有の視点やお客様の感情、社内の課題などを考慮して、回答を磨き上げる役割に集中していただけます。
当社のウェブサイトには「よしなちゃん」という同様のbotが設置されています。お客様がチャットボットを試したい場合、ウェブサイトで直接試すことができるようになっています。
今後、チャット画面に回答の信頼度スコアを表示する機能や、間違えてほしくない質問時には生成AIを利用しない機能などを追加予定です。これにより、ユーザーにとっての回答の信頼性を向上していきます。
「YOSHINAボット」で特に重視しているポイントは、精度。
——「YOSHINAボット」のプロダクト開発において、鷺坂さんが特に重視されているポイントは何ですか?
特に重視しているポイントは精度です。チャットボットは多くの消費者に使っていただく製品となるため、間違った回答を出すと企業としての信頼が損なわれる可能性があります。そのため、精度は非常に重要です。
しかし、AIが100%の精度を持つことは難しいという現実もあります。企業が求める精度とAIの能力とのバランスを取ることは難しい課題ですが、企業が求める精度を満たせない場合、その製品は使用されない可能性が高まります。
この点を考慮し、真摯に取り組むことがチャットボットの普及にも繋がると考えています。現時点での精度は85%程度ですが、より正しい回答を提示できるよう、リリース後も精度向上の研究を継続しています。
プラン名の検討など新しいアイディアや案を出す際、積極的に生成AIを活用
——YOSHINAボット以外に、生成AIを業務で活用されていますか?どのように活用されていますか?
社内のエンジニアさん達と比べると、私はあまり活用していない方だと思います。例えば、最新の情報や詳細な企業情報に関しては、GPTの弱点となる部分があるため、その点での活用は少ないです。
しかし、プラン名の検討など新しいアイディアや案を出す作業では、積極的に生成AIを活用します。
精緻な正確さに関してはまだ課題が残る
——生成AI活用における課題や難しさを感じるところがあれば、教えてください。
人間の感覚の多くは吸収できていると感じますが、精緻な正確さに関してはまだ課題が残っています。
また、人間同士が会話する時も、背景情報が異なると、同じような話をしているように思えても、実際には意見が合っていないことがありますが、このような状況は、生成AIでも同様に発生します。生成AIに与える情報や前提情報が非常に重要で、工夫が求められると考えます。
例えるなら「中途採用した営業マン」と同じようなスキルを持っているChatGPT
——生成AIを活用して驚いたことや、思わぬ成果が出た事例はありますか?
基本的な能力が高いことです。ChatGPTの最新のバージョンを例に取ると、「中途採用した営業マン」と同じようなスキルを持っていると感じます。
中途採用した営業マンは、営業の基本的なノウハウは持っていますが、社内手続きのルール、慣例などの詳細な企業固有の知識を学ぶ必要があります。
ChatGPTは、多くの職種・業種の「基本的なノウハウ」を吸収しているので、適切に組み合わせることで、非常に高い効果を発揮することができると考えています。
社員が入社する時と同様に、適切なオンボーディングをChatGPTに与えることで、それぞれの企業に合わせたAIとして機能することができる点は、非常に驚異的です。
専門家のアドバイスを受けながら、生成AIを始めてみよう
——この記事を読んでいる方に生成AIをお勧めしていただけますか?
とにかく、始めてみましょう!
ニュースや人からの情報は偏りがあることが多いですが、実際に自分で体験することで、その真価を知ることができます。
一つだけ注意点として、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。ChatGPT活用は、ChatGPTへの質問の仕方や、ChatGPTに与える情報の工夫が有用性を高めます。やみくもに試して、一度の失敗で諦めるのではなくて、専門家の知見を取り入れながら、どのように活用するかを考えることが大切です。
私たちの会社でも、多くのお客様から様々な相談を受けています。例えば、OpenAIのUIを触った経験がある方や、ChatGPTについて詳しくない方など、様々な背景を持つ方々からの相談を受けています。
初めての方は、まずは基本的な知識から学んでいただくことが多いです。一方、ある程度の知識を持っている方向けには、業務の最適化などのコンサルティングを行うこともあります。
特に難しいと言われている「日本語」の処理を下支えできる技術を製品提供していきたい
——「YOSHINAボット」ならびに御社の生成AI関連事業の将来展望について、聞かせてください。
生成AIの市場は急速に拡大しており、今後市場が安定していくと予測しています。生成AI事業においてはチャットボットが大きな市場として浮上してきました。
生成AI事業には、その他にも、コーディング用のソフトウェアや翻訳など、多岐にわたる市場が存在します。
当社の次なる具体的な進出先市場はまだ決定していませんが、日本語の対応や解釈といった部分に焦点を当て、特に難しいと言われている「日本語」の処理を下支えできる技術を、製品提供できるような未来を描きたいと思います。
AIによる生成型チャットボット無償デモキャンペーン
お話を聞いた方
YOSHINA事業部 部長 兼 YOSHINA プロダクトオーナー 鷺坂文野様
(聞き手:ロコアシ事業部長 あさい 撮影:広報 おかけいじゅん)