見出し画像

亡き人との再会

光の前世療法「亡き人との再会」の一症例です。

娘との再会
 これは十五年前に娘さんを事故で亡くされた、お父さんのお話です。
 先生はいつものように、「娘との関係がわかる過去世へ」と誘導しました。
 彼の意識の中にイメージが湧いてきました。
「大きな白い石がひとつあります。キューブで、小さな家のような感じです」
 先生は尋ねました。
「触ると、どんな感じですか?」
「ごつごつしてるけど、手に馴染む感じです」
「では、その石の中に入ります。そこはどんな感じですか?」
「お風呂のような感じです」
「大きさはどうですか?」
「大きいです。薄紫の広がりがあって、ゼリーの中に浮いてるみたいです」
「居心地はどうですか?」
「馴染んでいます。良い所です」
 先生は彼に心の中でお願いするように言いました。
「娘に会わせてください」
 彼は答えました。
「まわりのゼリーが揺れるだけです。・・・ぶどうの種のようなものがひとつ、出たり入ったりしてい
ます」
 彼はゼリーの空間に向かって尋ねました。
「この種は何を意味しているのですか?」
 種が白く平たくなって、上へと昇って行きました。上を見上げると、白っぽい空に星がたくさん見え
ました。彼はその星空に向かって娘の名前を呼びました。すると、ひとつの星が迫ってきました。先生
は彼にその星の中に入るように導きました。
「星の中はどんな感じですか?」
「まわりは暗くて、中央にピンク色の炎が見えます」
「その炎に向かって、娘さんを呼び出してください」
「炎の中で顔が見え隠れしています」
「娘さんはどんな顔をしていますか?」
「笑っています。二十歳くらいです。でも、娘ではないみたい・・・」
「あなたは誰ですか? と聞いてください」
「あなたの娘です、と言っているみたいです」
「あなたが私の娘なの?」
「前の娘だよ」
 先生は尋ねました。
「どういうことですか?」
 彼は泣きだしながら、「前の娘でもいいです・・・」と言いました。
 先生は炎の顔に向かって、「お父さんの前に出て来てください」と頼みました。
「目の前にいます。私よりも背が高い女の人です。笑っています」
「その娘さんにゆっくりと近づいて、手を握ってください。どんな感じですか?」
「自分の手と溶け合っています。気持ちいいです」
 彼に娘さんをしっかりと抱きしめながら、心の中でお話してもらいました。長い沈黙と涙が続きます。
やがて彼は答えました。
「何を聞いても笑っています」
「私のもとに生まれる前の娘は、あなただったのですか?」
「うなずいてます」
「今の娘はどうして早く死んでしまったのですか?」
「よくわかりませんが、自分で考えてみて欲しい、って言っています」
「今回、なぜ私をお父さんに選んだのですか?」
「好きだからです」
「どうしてお父さんは娘を忘れられないのかなぁ?」
「そこに意味があるから考えてね」
「どうして今の娘の姿で出てきてくれないの?」
 そう聞くと、その女の人は上へと昇っていきました。上に明るい筒が見えます。彼もその筒の中を昇っていきました。
 彼は緑色に輝くバスの中にいました。広いゆったりとしたスペースでソファーがあります。坊主頭の
男の人が出てきました。ロボットのような硬い表情をしています。
「あなたは誰ですか?」
 彼はマスターの召使いです。そしてバスがどこかへ着きました。
 グレーの目をしたマスターが大きなイスに座っています。彼を落ち着いた表情で見下ろしています。
彼はマスターに尋ねました。
「今回の人生で、娘との関係は何ですか?」
 マスターが答えました。
「思いやり」
 彼は召使いにお願いしました。
「もう少しわかりやすく教えてください」
「思いやりを見せなさい、使いなさい」
「もう少し具体的に教えてください」
「娘に感じるように、自分のまわりの人に思いやりを見せなさい、使いなさい」
 彼はマスターに尋ねました。
「今の私には思いやりが足りませんか?」
「足りません」
 彼はマスターに聞きました。
「私の今回の人生の目的は何ですか?」
「力」
 彼は召使いに聞きました。
「それはどういうことですか?」
 召使いが答えました。
「力を使いなさい。見せなさい」
「それはどういうことですか? 具体的に教えてください」
「経験を人に与えなさい。知ってることを人に教えなさい」
 彼はマスターにお願いしました。
「娘と会えませんか? どうしていますか?」
 しかし彼はがっかりして言いました。
「・・・だめみたいです」 
 先生はマスターに尋ねました。
「なぜ会えないのですか?」
 マスターが答えました。
「お前がまだ、やるべきことをやってないからだ」
「何をやればいいのですか?」
 マスターが答えました。
「体験を分かち与えなさい」
 先生はマスターにお願いしました。
「ちょっとだけでもいいですから会わせてください。お願いします」
 すると彼は泣きだしました。
「目の前で遊んでいます。四歳です。友だちと一緒に遊んでいます」
「呼びかけてみて」
「そばに来ました」
「何て言ってますか?」
「今、遊んでるのって」
「お父さん、会いにきたんだよ」
 娘が父に答えました。
「ずっと楽しくしてるよって。他の子供も顔を出してきました」
 彼は娘に尋ねました。
「辛くない・・・?」
「辛いことなんかないよ」
「早く死んじゃったけれど、あれで良かったの? お父さんはずっと悲しいのだけど・・・」
 すると突然、彼が楽しそうに言いました。
「私も子供になって一緒に遊んでいます」
 彼は子供に戻って娘たちと一緒に遊んでいました。しばらくしてから彼は言いました。
「ここでは楽しいことが出来そうだけど、ここにはいられないような気がします」
 先生は娘に聞きました。
「短い人生だったけど、あれは予定通りだったの?」
「大したことないよ」
「どうしてお父さんのもとに生まれてきたの?」
「僕と約束したって言ってます」
「何の約束?」
「・・・いつも一緒だけど、たまには違う人にも思いやりを与えようね。でも最初だけは少し一緒にい
るからねって約束しました」
 彼は娘に尋ねました。
「また、僕と一緒に生きてくれますか?」
 娘は、はっきりした声で答えました。
「もちろんだよ」
「いつ会えるかなぁ?」
「そう思った時だよ」
「お父さんのことを見守ってくれてる?」
 娘はしっかりうなずいています。
「お父さんを待っていてくれますか?」
「みんなで待ってるよ」
「お父さんはこれからどうやって生きていったらいいのかなぁ? どうして欲しい?」
「直感を大切にしてね。思ったことをやりきることだよ」
 彼はマスターに尋ねました。
「私の今回の人生は順調ですか?」
「順調だって」
 先生はマスターに、今回の人生の目的をクリアーできた、未来の彼の姿を見せくれるように頼みまし
た。
「子供たちに囲まれています。穏やかに笑っています」
「未来のあなたから今のあなたに、何かアドバイスをもらってください」
「今、あなたに起こっていることは全て必要なことです。真正面から取り組みなさい。ごまかさないこ
とです」
「まわりの子供たちの中に、娘さんは生まれ変わっていますか?」
「います。おさげの女の子になっています」
「その子に聞いてください。あなた、生まれ変わってきたの?」
「そうだよ」
「どうしてこんな形で、お父さんの所へ来たの?」
 彼はうれしそうに答えました。
「恥ずかしそうに笑ってるだけです」
 彼はマスターにお願いしました。
「最後に何か一言、アドバイスをください」
 マスターが答えました。
「やりかけてることをすぐに片付けなさい」
「娘さんを子供たちのもとへ返してください。そして娘さんからも、何か一言アドバイスをもらってく
ださい」
「お父さん、がんばってね」
「マスターと子供たちに、娘さんをよろしくねってお願いします」
「みんな一斉に、うんって言っています」
 
 この症例は、過去生なしでいきなり不思議なところへ降り立った症例です。前世の娘が出てきたり、マスターの召使いが出てきたりと奇想天外ですが、お父さんの強い想いがマスターのところへと導いてくれたのでしょう。

 このお父さんの宿題「私はどうして死んだ娘を忘れられないのか?」「そこに意味があるから考えてね」が、「娘に感じるように自分のまわりの人に思いやりを見せなさい、使いなさい」へと展開していきます。そして、「今、あなたに起こっていることは全て必要なことです。真正面から取り組みなさい。ごまかさないことです」と結論づけられます。

 子供を亡くすということはとても悲しいことです。その日以来、子供への深い愛情を泣きながら再認識する日々が続きます。
心が固く閉じてしまいます。
心の中が闇になります。
まわりに目が届かなくなります。
これは子供だけではなく、愛する肉親を失った方に共通する心の反応です。

肉親を失うこと、そこに意味があるから考えなければならないのです。
人生は非情なものです。過酷なものです。
しかし、今、起こっていることは全て必要なことなのです。そしてその深い悲しみの中から、まわりの人々への思いやりの大切さ、に気づくのです。
固く閉じた心が大きく開き始めるのです。
あなたの心の光がまわりの人たちを照らします。
あなたが掘った悲しみの油井が深ければ深いほど、あなたの灯火は明るく遠くまで届き、たくさんの人たちの幸せを照らし出すのです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?