あの日見た空き地の名前を僕達はまだ知らない

どちらかと言うと俺はあまり裕福な方ではなく、そんな中でも両親は不自由なく育ててくれたことにとても感謝している。でも友達の家は一軒家で自分の部屋があり、大量のムシキングのカードを持っていたり、遊戯王カードもゲームも沢山持っていた。俺は全然持ってなかったので友達の家に言っては横でゲームしているのを見ているというのをよくやっていた。風呂が追い焚きされるなんてのもびっくりした記憶がある。こちとら黒いビニールテープでぐるぐる巻きにした1.5リットルのペットに水を入れて温めて、それを風呂に入れて水道とガス代を節約したり、夏にはクーラーがないのでパンツ一丁で1畳ないスペースのベランダで過ごしていたりなどと、結構様々な工夫を凝らして暮らしてきた。

前述の通り遊びもなんとかしてかき集めた。本屋やゲーム屋の無料で遊べる15分制限のゲームキューブにはかなり世話になった。PS2でグランドバトルを交代でプレイできる本屋もあったっけ。風呂掃除をすると1日10円の小遣いをもらえたので毎日続けて150円を握りしめ、ハローマックへ向かい遊戯王カードのパックを買うもすべて金持ちのクラスメートにレア抜きされており、ノーマルしか残っていないこともしばしばあった。カードの交換をしたりもするがタダで貰ったカードが多かったので全く相手にされなかった。そんな中で俺は自転車で街中のゴミ捨て場を探し始めた。以外にもキレイな雑誌が捨てられてて、その中に袋とじのレアカードがそのまま捨てられていたりしていた。流石に雑誌を何回も買う財力や説得もない友だちに対してゴミから集めたレアカードでデッキを組んだりしていた。様々な経験からか、現在も貧乏暮らしをしているがそんなに苦にならない。むしろ制限からどれだけ感を貯めるか考えるのが楽しいくらいだ。大人になって生命保険やローンとか家賃とかで苦しんではいるものの。ルールがある方が楽しいのかもしれない。

とにかく工夫と努力でなんとかするしかなかった小学校。なんでこんなにめげずに食らいつこうとしていたのか。バカにされないようにしていたのもあると思うが、こち亀を読んでいたからかもしれない。こち亀の小学校の時の話とかたくましく、なんでも楽しそうに見えたからだろう。両さんがポケットに様々な七つ道具を入れていたように俺もポケットにいろいろ突っ込んでいた。こち亀の漫画から工夫することとかを学んだのだろう。

そんなある日。秘密基地を作ってみようと思い始める。最初は学校内の遊具のある場所に生えている木をよじ登ってギリギリ座れるだろうというくぼみのスペースを基地と仮定してそこで本を読んだりしていた。とにかく自分の部屋がなかった俺は子供部屋に憧れていたのだ。子供部屋のイメージがトイ・ストーリーのアンディの部屋のイメージしかなかったので中学三年のときにまさかの家が建つことになり自室をもらえると思った俺は中3にも関わらず、アンディの部屋のように壁紙を青空にしてくれと言い結構怒られたことを覚えている。まぁ子ども部屋というのは俺にとって映画の中のような存在だったのだ。そんなことになるとは知らない小学生の俺は木のくぼみでは満足できなくなっていた。とにかく基地にしなければならない。もっと部屋らしくしてやろうと街中を探し回った。するとかなり大きな空き地に出会う。草木も高く生い茂っており、中にはいれば子供くらいはわからない。さらに意外と町中、俺の家からすぐ行ける利便さ。隣は公園でその公園のゴミ捨て場はキレイな倉庫になっており、そこに大量のエロ本がおいてあることも俺は知っておりここしかないと思った。スーパーからダンボールやらほかゴミ捨て場から持ってきた紐やらで簡素ながらも雨風ぎりぎりしのげる小屋ができた。感動した。一人親方をやってのけたのだ。俺はすぐに大量のエロ本を搬入し、楽園のような場所を作り上げた。もう倉庫の中で誰かが開けるのをビクビクせず堂々とエロ本が読める!俺は街中のエロ本を探してここに搬入することを決めた。俺の人つなぎの大秘宝は乳房だったのだ。俺は街中のエロ本があるであろう場所を探索し、目星を行い、クリティカルで見れないのにビデオを見つけたりなどととにかく見つけては搬入しまくった。働きアリ真っ青である。

数日たち、エロの楽園に行こうと基地を向かうとエロ本が誰かに荒らされているではないか。誰だ。俺の宝を荒らしたやつは!と思い、基地の中を覗くと知らないおっさんが寝ていた。

弱肉強食の世界である。鍵をしてないし。おっさんにとっては最高の場所が見つかっただろう。俺は悲しみに暮れた。やはり大人は汚い。いつだって損をするのは子供なんだ。俺は泣きながら倉庫のエロ本を読んだ。逆戻りだった。

そこからまた数カ月後。その空き地はショベルカーが入り、地ならしされた。もちろん俺の基地もなくなっていた。それからもう15年以上経ち、今この町に戻って生活をしているが、不思議なものであの空き地は空き地のまま残っている。近くの公園もそのまま時が止まったように残っている。ある日空き地を覗いてみるとダンボールらしきものが立体にいびつに組まれていた。そこにはおっさんなのか俺みたいな子供がいるのか。それとも時が止まったままなら、俺がいるのかもしれない。覗くことはないけども。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?