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【空き家増税?!】空き家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案について解説してみた

まえがき

みなさんこんにちは。地方自立ラボです。
当ブログでお伝えしたいことは、私たちの住んでいる国は、国家としてとらえることも大切なのですが、本来は私たちの住んでいる「この町」「この地域」の集まりである、ということがもっと大事だということです。私たちが幸せに暮らすらために、国が住みよい場所になるためには、住民として住んでいる「地方」こそが住みよく豊かな町であってほしい、そんな願いを込めています。

本日は、この度国会で審議されることになった「空き家対策に関する法律の改正」について考えてみたいと思います。
(本稿で対象とするものは令和5年第211通常国会で法案が提出される『空き家等対策の推進に関する特別措置法』改正法案です)

最初は現行の空家対策促進特措法をザックリ解説したのち、今回の改正案の変更ポイントの解説をします。その後、法整備に至るまでの政策委員会の議事録等を通して、利害関係者の思惑と、国がどのような思想でこの法律を設計したかという考察と政策についての批評をしていこうと思います。

現行の空家対策推進特別措置法とは

まず大前提として、空き家を管理する義務は所有者にあります。空き家問題を考える上で、建物が老朽化して倒壊しそう、庭の草木が成長して隣家や道路まではみ出ている、滞留したゴミのせいで害獣が発生している等周辺環境を損なっている場合、所有者は速やかに改善しなければならないという義務を負っていることを踏まえておく必要があります。

空き家に対する地方自治体の権限強化

平成27年2月に施行された『空き家等対策の推進に関する特別措置法』では空き家に対し、主に次の2点を定めました。

・自治体の独断で、空き家を調査〜撤去することが可能
・固定資産税・都市計画税の住宅用地特例の解除

この法律が制定されたことにより、管理不全と思われる空き家に対して、所有者の許可がなくとも自治体よる調査が可能になりました。その結果、一定条件を満たした空き家は「特定空き家等」に指定され、段階的に行政指導・勧告・命令の措置が講じられるようになりました。

埼玉県川口市HPより抜粋

特定空き家等の住宅用地特例措置の解除

空き家が増加している背景のひとつに、更地にすると納税額が高くなってしまうという問題があり、空き家を放置する一因ともされています。そのため上図の勧告の段階で、固定資産税・都市計画税の住宅用地の特例措置の解除、つまり自治体は増税することができます。

ウェルスハックHPより抜粋

ですが全国には居住実態のない空き家が約350万戸あるとされる一方、地方自治体が特定空家等として把握したのは4万戸にとどまり、うち2万戸は解体や修繕で対応したが、特定空き家に至らないまでも、放置すれば状態の悪化が見込まれる空き家は20万戸以上あるということで、現行の空家等対策特別措置法では空き家減少効果は思ったほど出なかったのでしょう。

今回の空家等対策特別措置法改正のポイント

管理不全空き家の新設

そこで「空き家」と「特定空き家」の間に、空き家を放置する所有者にペナルティーを与えられる措置が急務とされたのです。
それが「管理不全空き家」の新設です。基準は今後指針で定める方針ですが、窓が割れていたり、雑草が繁茂したりしている空き家を想定しており、特定空き家同様、自治体が指導・勧告し、税優遇措置を解除できるようになります。
要するに今までの空家等対策特別措置法では、固定資産税等を増税できるのは倒壊するような危険な空き家(特定空き家)だけだったのを、範囲を広げて雑草が生い茂る程度の空き家でも勧告で増税できるよう、規制を強化したのです。

マネーイズムHPより抜粋

空き家活用の認定支援法人制度の創設

その他には地方自治体が独自に、空き家の活用または管理に関する所有者への相談対応や、空き家ニーズとのマッチング対応ができるNPO法人等を、空き家の活用の「支援法人」に指定できる制度の創設も盛り込まれています。
地方自治体がその支援法人と連携し、第一種低層住居専用地域など店舗の営業が禁止されている区域にある空き家でも宿泊施設やカフェ、移住者向けの住居などに転用できる規制緩和策も盛り込み、空き家を減らすとともに地域活性化につなげる狙いもあるようです。
こういった政策は、すでに官民連携で空き家を町おこしに活用している自治体を参考にしたようです。兵庫県では県内に特区を設けて規制緩和や空き家の流通促進を図る条例を施行しています。(画像から記事リンクへ飛べます)

神戸新聞NEXT記事
2021/12/2神戸新聞NEXTより

【改正の主眼点解説】空き家小委員会の議論から読み解く

空き家対策小委員会における議論

今回の法改正については国土交通省の社会資本整備審議会、住宅宅地分科会、空き家対策小委員会による議論を経て令和5年2月7日にとりまとめが発表されました。その後、パブリックコメントによる意見集約をもとに法案の作成が行われたようです。空き家小委員会における議論の方向性は国交省の官僚主導で以下のように進められました。

(1) 住宅行政の根幹は、1.優良な住宅の供給、2.リフォームによる住宅の優良化であったが、第3の柱として戸建て空き家への対策が必要。
(2) 空き家の状態が悪くなってからの対策では遅い。
(3) 空き家率10%以上の県(和歌山、徳島、愛媛、高知、鳥取、鹿児島)が増加。今後は岩手、秋田、長野、山梨、三重、島根、岡山、香川、山口、大分、宮崎が増えていく。
(4) 各市町村のマンパワーが不足しており、地方事務の容量過負荷、知識不足がある。
(5) 従来の不動産事業者は空き家の低家賃物件は扱い辛い。別途受け皿が必要。
(6) 空き家活用の増加により空き家期間が短くなり、空き家数が減少する。

空き家対策小委員会という組織

空き家対策小委員会のメンバーは、その母体となっている国土交通省、社会資本整備審議会、住宅宅地分科会の委員から選出されています。
下図の左側は空き家対策小委員会、右は住宅宅地分科会のメンバーです。

空き家対策小委員会
国土交通省HPより

委員長の中川雅之氏は、日本大学経済学部教授。建設省に入省するも退官。地方整備局や大阪大学助教授、日本大学教授、東京大学公共政策大学院教授を歴任。小委員会ができる前は住宅宅地分科会の臨時委員を務めていました。委員長代理の齊藤広子氏以下、全員が小委員会設置前の住宅宅地分科会メンバーとして、臨時委員、専門委員として参加していた人が指名されています。言ってみれば、屋上屋を架すという、省庁の従来の手法そのままに、対策という名の新たな規制作りに前向きな御用学者の集まりと言えます。仕事のための仕事を作るのに空き家対策が必要だという掛け声のもと、官主導で空き家対策に税金をつぎ込み、新たな利権構造の構築を目指すと言われても否定できないでしょう。

空き家対策小委員会の設置は疑問だらけ

住宅宅地分科会第56回(令和4年9月)の議事次第を見ますと、審議事項として「空き家対策小委員会の設置について」が決定されました。その資料(資料3)には次のように書かれています。

「平成27年の空家等対策の推進に関する特別措置法の施行により、市町村による空き家対策計画の策定や、著しく保安上危険又は衛生上有害ないわゆる特定空き家の除却等の取組みは進んできているところであるが、今後、人口・世帯数の減少や高齢化に伴う相続の増加等により、さらに空家数の増加が見込まれることから、空き家の発生抑制や空き家の利活用・適切な管理・居客に向けた取組の強化等、空き家政策のあり方を検討していく必要がある」

社会資本整備審議会住宅宅地分科会(第56回)議事次第

このような目的でその後すぐに(令和4年10月〜)空き家対策小委員会が設立されました。
国土交通省は平成20年度より、断続的に空き家対策については様々な施策を行ってきました。そして平成27年の特措法により、地方自治体サイドは業務増加で悲鳴を上げていたのが実情です。町や村などの小さな自治体は空き家が多いにも関わらず職員の数は少ないことから特措法の施行により負担が増大したことは想像に難くないでしょう。にも関わらず、改正案で規制強化をして自治体の権限を増やし、対応すべき空き家の件数を増やすことはマンパワー的に現実的な政策なのか、疑問が残ります。

ましてや上の引用で述べられている、人口・世帯数の減少、高齢化に伴う相続の増加による空き家数の増加というのは、突然判明するものではなく、科学的に統計的数値で推論が可能な現象です。ですから、平成27年に特措法が完全施行されている時点で対策を十分に検討しておくべきものが、施策としては完全に失敗しているという反省が全く抜け落ちていると感じます。

これらの「○○が見込まれることから、△△に向けた取組の強化、政策のあり方を検討していく必要がある」というのは、お役所言葉の言葉遊びであり、まずは行政の反省から、これまでの施策の方向性自体を見直すべきです。しかも会議の参加者は変わっていません。失敗した政策を立案しているメンバーは全て入れ替えるべきなのに、自分たちの失敗を棚に上げて、あたかも国民に非があるような審議結果を公開し、罰則規定を含めた規制強化を法制化するとは国民を愚弄していると言わざるを得ません。

特措法改正により社会はどのように変わるのか

利害関係者の思惑とは

空き家対策小委員会の最終とりまとめが令和5年2月に発表されました。
ここではその報告書をもとに、まずは国が空き家に対してどのようなビジョンを描こうとしているかを見ていきたいと思います。

空き家対策小委員会_最終とりまとめ(本文)より抜粋

まず、今回政策として明確に示されている地方行政事務の民間委託への推進です。パブリックコメントにおいても提示されている「NPO等民間主体の活動を促進する取組」における具体的な取組として「空き家の管理を専門的に行う事業者の育成」があります。

この「専門的に行う事業者の育成」というのは政府が行う事業でよく使われる言葉です。例えば、コロナにおける失業者に対して図られた就労対策事業が挙げられます。これは新型コロナ関連で失業した人を支援する目的で紹介予定派遣する事業です。主な目的は派遣先を紹介する事業とのことでしたが、実際には派遣業者が「研修」と称して職業訓練などを行うために補助金が割り当てられたのでした。このような「民間人材ビジネスの育成と更なる活用」という文言には、「人材」に対する施策ではなく、「民間人材ビジネス」への予算配分という図式があるわけです。

民間事業の育成自体は表向き「国が良いことやってるな」感があります。しかし、ここには「国が育成してやってる」意識しかないという指摘をしておきたいと思います。「専門的に行う事業者はオオヤケが面倒見て、資格を与えてやるからその範囲で事業をやれよ」となる未来しか想像できません。つまり、国土交通省管轄の社団法人や、息のかかったNPO法人があるから、その人たちしか恩恵にあずかれないのは目に見えています。そして結局天下りでしょ、としか言えません。

では、空き家小委員会の構成から、どのような図式になっているのか見ていきましょう。

すでに小委員会に参加している上田真一氏はNPO法人「空家空地管理センター」の代表理事ですが、北斗不動産ホールディングス(以下、北斗不動産と表記)の社長。NPO法人のホームページに記載されている理事:伊藤 雅一、理事:大須賀 敦子氏は北斗不動産の社員。北斗不動産は埼玉県所沢市にある不動産会社です。

さて、北斗不動産の関連団体であるNPO法人空家空地管理センターは、空家の「100円管理」を謳い、格安価格で空き家管理を請け負うことで顧客を囲い込み、先行者利益を得ようとしています。これでは地元の一般業者の入る余地がなくなってしまいます。

一般に空家管理を事業者に委託した場合、交通費、人件費、作業対価として、最低でも4~5000円程度の報酬がないとペイしないと考えられますが、なぜ100円なのでしょうか。実際に小委員会の議事録を読むと、委員会内での質問に対し、このように述べられています。

【○○委員】 まず質問のほうですが、 NPO法人の空家・空地管理センターの方にお伺いしたいと思います。質問の方向としては2つ、事業に関すること 、 それから利用者側からのサービスの内容についてのことです。まず事業についてですけれども、御センターは、率直にお尋ねしますが、事業収支というのはきちんと赤字ではなく運営ができておられますでしょうか。

【○○委員】御質問ありがとうございます。 空家・ 空地管理センターの○○です。事業収支としては黒字ではある のですけれども、ただ、 この事業の費用全部を賄えているかと 言うと、 かなりボランティアスタッフなどによる支援、あとは協力事業者の方たちからの支援というようなものがございまして、ここがないと正直なところ、今の人件費だとか、 いろいろな仕組みというのを支えるのは難しいというのが正直なところです。

【○○委員】 地域によっても差がある のではないかというふうに思ったのですけれども、いかがでしょうか。例えば割と都市で密集しているところでは黒字だけれども、過疎の進んでいるような地方では赤とか、 そういうこと はありますか。

【○○委員】私どもの仕組みとしては、例えば管理サービスだと現地に管理の者が向かう のですけれども、これに関しては私どもの職員ではなくて私どもの研修を受けていただいた、 団体内での資格がある のですけれども、その資格を受けていただいた方たちに外注をするという形をとっております。 ですので「100円管理サービス 」 ですと 、 もうそのまま全部お渡しするのですけれども、ただ、それは100円ですので、おっしゃるとおり地方のほうで、そういう意味でボランティアスタッフの活躍が大きいというお話なのですが、地方のほうがより人件費と見合わなくなるというところはあるかと思います。

空き家対策小委員会 第1回議事録より抜粋

委員会での事業内容の説明としては管理団体として研修を行っている。その資格があるものが現地の管理を行っている。しかもボランティアでということが紹介されています。このようなボランティアを前提としたサービスは行政の好むところですから、今後空家管理で行政の目指すところは、人々の善意に頼る、隣近所の助け合いということに収束させようということなのでしょうか。現在でも外国人サポート事業がボランティアに頼っていますよね。

ニュース記事サイトでのインタビュー記事で上田氏は次のように述べています。
「空き家の所有者の中には、将来的にも住む予定がなく、いつか解体するので最低限の管理で十分という方がたくさんいます。また、使っていない不動産にコストをかけることに抵抗を感じられる方も多い。だから思い切って、100円にしました」

また、記事の著者は「100円でサービスが成立する背景には、ボランティアの存在がある。現地で目視点検を行う巡回員は、各地の不動産会社や建設会社などがボランティアで担っているのだ」ともされています。

「100円で空き家管理」を全国へ 空き家ビジネス、事業化の行方」
上田 真一(NPO法人 空家・空地管理センター 代表理事、北斗アセットマネジメント 代表取締役)事業構想2018年10月号https://www.projectdesign.jp/201810/free-resources/005498.php 

住宅宅地分科会で以前より同氏は専門委員として参加しており、虎視眈々と省庁とのパイプをビジネスにするチャンスを狙ってきたことは間違いありません。

地方自治体の空き家対策の方向性

官僚が主張する今回の法改正の目的は、主にこれまで国土交通省が打ってきた様々な施策の齟齬を統合することと、「空き家」の定義範囲の拡大、各種法、規則との整合を高める点にあると考えられます。方向性としては空き家は個人の所有物のため、所有者の責任でなんとか処理させたいという点につきます。そして、個人で処理しきれなくなって、住民から苦情や被害があった場合に地方自治体のやれることを拡充、強化する点にあると考えます。
 
その具体的な表明が、委員会最終の「とりまとめ」にある、4.今後の空き家対策の方向性・取組でしょう。

空き家対策小委員会_最終とりまとめ(本文)より抜粋

その中から3つのポイントを制度化する必要があると提起されています。

(1) 発生抑制として
 ・所有者やその家族の意識の醸成
 ・所有者のニーズに応じ死後に空き家としない仕組みの普及
(2) 活用促進として
 ・相続人への意識啓発・働きかけや相続時の譲渡等の促進
 ・空き家状態後、早期の情報提供と、活用希望者とのマッチング
(3) 適切な管理や除却のために
 ・空き家の適切な管理は所有者の責務であるとの意識を醸成
 ・市区町村の積極的な対応を可能とする取組(対応力強化)
 ・NPOや民間団体の利用促進

このように、空き家発生前からの教育や相談事業の展開、相続手続き時の情報提供や啓発活動、及び管理方法や売買への介入、事業者支援など、お役所がいつも市民に対して行う働きかけ方がズラリと並んでおり、個人的な感想になりますが、毎度お役所のパターナリズムには辟易します。

国土交通省の空き家対策の歴史

 国土と土地の所有がある限り、その持ち主が誰なのか、という問題は歴史を紐解けばどの時代にもありました。班田収授法の時代であれば、存在しなかった「空地・空き家」。江戸時代ごろになると、かなり近代的な土地所有の概念が固まってきたと言えますが、その頃日本の国土は幕府の物。藩がなくなれば、その使用者が変わる、といった状態でした。そうは言っても藩のお取りつぶしがあれば、使用者のいなくなった屋敷・土地が荒れ放題という状態も多々あったことでしょう。それらがやがて広場となり、共有地となっていったこともあったようです。防火のために「火除け地」という空地が点在していたのが江戸時代の古地図を見ると良くわかります。

まず、国土交通省の空き家に対する考え方を理解するのに、空き家小委員会の冒頭で、議論の主眼について事務方から説明があり「住宅行政の根幹は優良な住宅の供給」と言っていたのを思い出します。国としては住宅を作るところまでは規制があるわけです。我が国では、地方自治体レベルでの私有財産への関与はかなり厳しく制限されています。ですから、もともと個人の所有物になった土地・家屋について行政がそれ以上関わるという制度がないわけです。そして、その所有物を相続という形で個人が引き継ぐという社会ですから、一度個人が私有したものはその家庭が代々引き継いでいかなければならないのです。しかし、核家族化の進行があり、高齢化が進むことでその制度が崩壊しつつあるということだと思います。

つまり、行政からしてみると空き家は個人の問題。なので、空き家管理の仕組みは作るけど、我々は強制できないから、所有者もちゃんと努力してよ。空き家は古くなると問題がこじれるから、早く空き家でなくしてよ。ということで特別措置法扱いなのだと感じました。そのため、罰則規定が厳しくなったのではないかと感じます。委員会のなかでも「適正管理のところ、これは本当に非常に私たちも日々苦労して難しいなというふうに思っているところですけれども、イメージとしてはインセンティブを渡すよりは罰則が有効だなというふうに、所有者の方とお話をしていると思います」という発言がありました(第1回議事録)。

空き家増税と規制強化に反対します

北風よりも太陽を

私個人の考えですが、個人の問題はできるだけ民間で解決することが望ましく、国や自治体にどうにかしてほしい、というのはそろそろやめたほうが良いと思うのです。行政に頼る=規制強化です。そのためには莫大な税金が使われますから近い将来、普通住宅への固定資産税の増税もあり得る話です。何でもかんでも行政に頼ることで、国民負担率のさらなる上昇につながっていくわけです。

北風と太陽の例えもあるように、規制強化と増税という北風ばかりではモノゴトはうまく運ばないのではないのでしょうか。北風を吹かせば所有者は規制と増税を恐れ、考えるのも嫌になり却って放置してしまう。既得権化した空き家相談事業者が、補助金まみれのやっつけ仕事をするのみとなり逆に空き家の流通を阻害する。そんな未来しか想像できません。
そうではなく、むしろ太陽政策を持ってきて、空き家もしくは更地にして売る時の固定資産税等を減税する。規制緩和をして民間事業者内の空き家流通が活発化すれば、結構簡単に問題が片付いてくるのではないでしょうか。

その心は・・・先ほど、NPO法人をこき下ろしましたが、NPOなんか作らずに、普通に民間企業がやったらいいじゃないか、ということです。正々堂々と会社として空家管理をして、委員会にも企業名で出たら良いではないですか。現在空き家管理を謳っている組織はNPO法人が多いです。自治体との連携や、所有者との交渉上、会社では体裁が悪いからとNPO法人を作り100円管理等の非営利を装って省庁のご機嫌を取っているのではないでしょうか?民間事業として当然あるべき利益追求を行って、その上で空き家を管理する。販売のための様々な創意工夫が行われることで、空き家の不動産としての市場価値を高めることにもつながるのですから、所有者や購入希望者にとってもWIN-WINになるのではないでしょうか。

政府は万能ではない

70年代、80年代までは前時代の文化を引き継いでやってこれました。90年代になって法律や制度が追い付かなくなったということは今から思えば当然のことだと思います。それがやっと、2000年代に入ってから少しずつ表面化し、2010年ごろになると、空き家が倒壊して被害が周辺に及ぶ、というようなことが全国的に起きてくるようになりました。東北の大震災をきっかけとして、堰を切ったようにごみ屋敷問題のような高齢者の単身住宅問題も噴出するようになりました。

平成20年度予算請求において、国土交通省は「社会資本ストック劣化の影響およびその表示手法に関する検討」への取り組みとして要求額2100万円を計上しています。その概要に「将来(概ね10年後)の経済社会の具体的な姿の提示」と方向性として示されているのですが、現在、どのような状況になっているのでしょうか。この点は改めて国土交通省に振り返ってみてもらいたいものです。

そして行政を万能のように信じている私たちも、本当に政府や自治体の考えが正しいのかをそろそろ疑ってみるべきなのです。何しろ国民負担率は50%に届こうとしているのですから、何から何まで行政におまかせでは負担が増大するばかり。結果として未来を担う子どもたちに迷惑がかかるのです。

そして何より政府には、国民にムチや罰で調教するような発想ではなく、国民市民の力を信じ、暖かい陽の光を注ぐことで自立と成長を促すという、北風から太陽の発想ヘチェンジして欲しい。
それがこの国や地方、国民の自立を取り戻す、いちばんの方法だと確信しています。


番外編:浜田参議院議員に質問してほしい!

減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる政治家女子48党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載します。(^_^)

【質問1】 空き家対策小委員会のメンバー全員が、なぜその前身である住宅宅地分科会の委員から選出されているのか。
またその選出が住宅宅地分科会の委員長に一任されているが、どのような経緯でそうなったのかを教えていただきたい。

【質問2】 自治体の管理範囲が「特定空き家等」に加えて「管理不全空き家」へと拡大すれば、地方事務の量が増大することになるが、そのコストはどのくらい増えるのかを具体的に教えていただきたい。

【質問3】 空き家を減少させるためには固定資産税の増税ではなく、逆に減税を呼びかける方が効果的ではないかと考えるが、政府の見解をお聞かせ願いたい。 

【質問4】 空き家の流通を妨げている規制には、用途地域による建築物の用途制限等があると考えられるが、その他にどういった規制が考えられるか具体的に教えていただきたい。また行政の管理範囲を増やすのではなく、民間の規制緩和をすることで空き家の流通の促進をさせた方が空き家市場において良い結果をもたらすのではないかと考えるが、政府の見解をお聞かせ願いたい。

参考:国土交通省のホームページに見る空き家対策事業の流れ
■空き家再生等推進事業(平成20年度~)
■空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(平成27年度税制改正)
■空き家対策総合支援事業(平成28年度~)
■空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)(平成28年度税制改正)
■住宅市場を活用した空き家対策モデル事業(令和3年度~)
■空き家対策の担い手強化・連携モデル事業(平成30年度~令和2年度)
■先駆的空き家対策モデル事業(平成28年度~平成29年度)
■空き家管理等基盤強化推進事業(平成25年度~平成27年度)
■空き家所有者情報提供による空き家利活用推進事業(平成29年度)
税制上の措置

最後までお読みくださり、どうもありがとうございます。 頂いたサポートは地方自立ラボの活動費としてありがたく使わせていただきます。