【事実上のX規制?!】国会議員の責任放棄「プロバイダ責任制限法改正案」
■はじめに
世はまさにSNS戦国時代、まるで京の二条河原の落書を彷彿とさせます。
(時の政府に対する批判や風刺の句が書かれた看板のようなもの。新政の崩壊をも予見。落書史上の傑作と評される。)
下の動画はそのラップ版です。落書の内容をわかりやすく歌っていて、当時の雰囲気が伝わってきます。
この現象は日本人の特性「縁故資本主義的ムラ社会」による影響が非常に大きいと考えています。長老には逆らえないし、かといって自分も変化を好まないけど不満はつのる…けど周りに知られるのは怖い。
そんな抑圧された心理は私にもあるような気がするし、Xなど、SNSが存在しないはるか昔からそんな庶民の諦めのようなものが渦巻いていることを感じてしまいます。
本noteではこの度国会で審議されることになった「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案」(プロバイダ責任制限法改正案:以下「本法案」)について考えてみたいと思います。対象とするものは2024年第213通常国会で法案が提出される『プロバイダ責任制限法(平成十三年法第百三十七号)改正法案』です。
プロバイダ責任制限法は特定電気通信役務提供者(プロバイダ)の責任の制限に関する内容と発信者情報開示に関して定めた法律です。
私達がSNSを利用する際はSNSサービス提供会社、インターネット接続を提供するインフラ会社の2種類が関与しています。特に本法律の対象とする「インターネット上における不特定の人々が目にすることが可能な誹謗、中傷」への対応が焦点になっています。
古くは「パソコン通信」などと言っていた時代。誹謗中傷の舞台は「掲示板」サービスでした。発信者はほとんど匿名です。発信者を訴えようにも多くの場合、発信者を特定できないため、訴えられません。そのため、2000年頃にはプロバイダ(ニフティサーブ)が責任を問われたこともありました。2002年には「掲示板管理人」(2ちゃんねる)も東京都内の動物病院から訴えられ損害賠償を命じられました。
しかし本法律の名称からして、誹謗中傷という文字が入っていません。それが本法律の存在意義を分かりにくくしている要因であると思います。法律はできたのですが、運用し年月を経るとともに新しい規制が追加されてきました。規制の趣旨が分かりにくいこともあり、まるでタコ足のように頻繁に改正されてきたのです。
こういった法律は欠陥法です。欠陥法を作ったことで足りない部分がどんどん膨らんで規制が増えていくとても悪い法律の例であると言えます。本法律は2001年成立。その後間があいて2021年、2022年と改正が行われました。その間も省令、施行規則なども改正されました。そして本年(2024年)にも改正案が出るというように近年は毎年のように規制が追加されてきています。
しかも今回の改正にあたり、法律名が変わることになりました(「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」)。場当たり的に法律が改正される、まさにこの法律に関わる議員、役人はバアタリアンとしか言いようがありません。
インターネットの誹謗中傷問題については2022年の208通常国会で議員立法として「インターネット誹謗中傷対策の推進に関する法律案」というものが上程されています(未だ成立せず)。まさに、本法律は多くの人から立法根拠が疑問視され、懸念されている状況にあります。
縁故資本主義ムラ社会としてのわが国は集落を統率する長老に既得権者がすがり、既得権の基礎を固く塗り固めることがよく行われます。バアタリアンが群がる本法律のような悪法は改正を重ねるごとにより悪法となり、収拾がつかなくなります。誹謗中傷事件が起きるごとにマスコミが騒ぎ立てることであちこちからタコ足が伸びてくるように改正されてしまいます。結局法律を作っている人も国民も身動きが取れなくなってしまう。本法律のようなものは改正などせずに廃棄してしまった方が国民はもっと自由に生きられるのではないかと思います。
本noteでは本改正法案についてタコ足的に改正が重ねられる可能性が高い悪法として反対の立場を表明します。誹謗中傷については民法、刑法の範囲において対処すべきであると考えます。
■プロバイダ責任制限法とは?
誹謗中傷事件で本法律の問題点として取り上げられるのは開示スピードに関係する部分です。そのため令和4年施行の改正で従前の発信者情報開示請求の訴訟手続等に加えて新たに創設されました。
SNS等のインターネット上の投稿によって自己の権利を害されたとする人は、一定の要件の下、SNS等を運営するコンテンツプロバイダ(CP)や発信者がSNS等に侵害情報を記録する通信を媒介したアクセスプロバイダ(AP)等に対し、発信者情報開示命令の申立て(非訟手続=裁判所が行う事務手続き)をすることができます。
この「非訟手続き」というものは裁判所内での事務手続きが発生するため、審議会や国会の質疑の中でも司法の現場の作業量など問題がないかという確認が再三なされています。
■今回の改正について
今回の改正により大きな影響を受けるのはプラットフォーム事業者です。総務省は過去の国会において誹謗中傷対策の第三者機関を設けるべきではないかという質問に及び腰でしたが、今回もその姿勢は崩さず、プロバイダー(プラットフォーマーに広がりましたが)による内部体制の構築を求めました。そして、名称を変更し「権利侵害等への対処に関する法律」であることを明確にしました。
『概要』書は以下の通りです。
当初本法律をめぐる議論を行う研究会である、プラットフォームサービスに関する研究会では「プロバイダ等における常時監視義務を規定するものでもない」とされていました。しかし本法案ではプロバイダの責任に関して、報告義務などが盛り込まれています。このような点が、一度法律(規制)が作られると追加規制があとからあとから設けられる悪い例ではないかと思います。
研究会の取りまとめにある記述の通り、プラットフォームサービス事業者に対し、対応の迅速化、透明性を求める意見をとりまとめています。しかし、事業者からは誹謗中傷に対しては、日本の文化、社会的背景を踏まえた対応が必要になること、被害者からの申し出に対して一方向的な見方では対応ができないという声もあります。また、削除や開示などについては作業量が膨大なものになり、事業者の負担が増大するでしょう。
■改正案の背景
本法案はプロバイダの責務に関する改正となりました。その理由は総務省が進める「エビデンスに基づく政策」に基づくものです。規制の事前評価書を確認すると、本法案で新設されるプロバイダーの責務が市場原理を尊重すると埒があかない。国が責任を持つ必要があるという結論となったようです。おそらく「国会対策」や「国が責務を怠ったことによる訴訟」を回避する対策の一環でもあるでしょう。しかし一見、国に責任が移ったかのように見えますが、多くの責任は「プロバイダー側」に任されることになったのです。
特に、投稿内容に関する指針はプラットフォーム事業者が国内だけではないため国が定めることが難しいとされました。
以上のように今回の改正により本法律の性格が変わってきています。当初、誹謗中傷発言を行った発信者側に責任があるのだから、としてプロバイダが訴えられる責任を回避するための方策として考えられた業界を保護する法律でした。しかし今回の改正からは発信者が発言を行う場を提供している責任として、業界に対して規制をかける法律に変わっています。今後、さらにプロバイダーなどプラットフォーム事業者に関する規制が重くなってくることが考えられます。
しかもそれが「利用者保護」という消費者目線への政策に変化していることは重要なのではないでしょうか。もっとも、当初から誹謗中傷を受けて苦しんできたのは利用者である国民です。本来法律で守られるべきは国民の権利です。今後、この法律以外でも業界を利してきたものは本法案のように国民目線へと変わって行ってほしいものです。
浜田参議院議員に質問してほしい!
減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる参議院議員NHK党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載しています。(^_^)
【質問1】
この度改正されることになったプロバイダ責任制限法ですが、改正により、プラットフォーム事業者に多くの責任を課す大改正となっています。これにより国の責任の多くが回避されることになり、民間企業が多くの対策を講ずる必要がでてきます。このような改正が行われる背景は総務省の天下り先の確保として先手を打ったという理解でよろしいでしょうか。
【質問2】
厚生労働省通知「子家発0331 第3 号」令和5年3月31日発出の『「若年被害女性等支援事業」 への妨害行為等への対応について』についてお尋ねします。当該通知は厚生労働省から全自治体の民生主管部宛に出された課長通知です。内容として
と記載されています。この通知はいわゆるColabo問題として「暇空茜」を名乗る方のSNS上での情報提供及び訴訟行為などに関連する一連の動きに対する対応を国として自治体に求めているという理解でよろしいでしょうか。
【質問3】
当該文書の主幹は厚生労働省から現在は子ども家庭庁に移っているかと思いますが、実際に「暴言、威力等による業務の妨害行為」が行われたことあったのでしょうか。具体的な数値でご報告をお願いいたします。また関連した会議が行われたということであれば、その会議名もお教えください。その会議で行われた質疑、結論などもあれば簡潔にご答弁をお願いします。
最後までお読みくださり、どうもありがとうございます。 頂いたサポートは地方自立ラボの活動費としてありがたく使わせていただきます。