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【公務員はなぜやらないの?】岸田総理の肝入り政策「日本型職務給」とは

こんにちは。地方自立ラボ(@LocaLabo)です。

「日本人の平均賃金は30年間横ばい」という話は「日本オワコン」の理由として耳にタコができるほど聞くようになりました。今年の5月には広島でG7サミットが開かれますが、日本の平均賃金は、G7の中でもイタリアに抜かれ、とうとう最下位になってしまいました。岸田総理、ヒヤヒヤものです。

OECD「Average wage」より作成

日本の平均賃金が低い理由としては正社員の終身雇用が大きいとされています。
終身雇用を前提とした賃金体系においては、仕事の成果よりも勤続年数や役職が給与額を決定します。また退職金も定年まで勤めてやっとドカンと貰えますね。そのため現役時代の給与は抑えられており、途中で辞めると生涯賃金が低くなるリスクがあるということにもなってしまいます。結果として長く勤める方にインセンティブが働きます。

低成長時代に入り利益も全く上がらない中、成果も上げずに高給で居座る中高年、いわゆる「働かないオジサン」が増えれば人材の出口が便秘のようにつまる。入れ替わりのない映画館とも例えられますね。そして経営者側が人件費総額を増やさないよう、若手の賃金を抑え、非正規雇用を増やして帳尻を合わせる。企業内に人材の流れが起きづらいため、当然企業間の流動化も起きない。すると雇用市場内では適切な賃金が決定されにくくなります。それが賃金が上がらない理由の大きな要因とされています。

そんなわけで「同一労働、同一賃金」に加えて、最近では「賃上げ」や「雇用の流動化」が頻繁に取り上げられるようになりました。岸田総理は、次のように発言しています。

" 従来の年功賃金から職務に応じてスキルが適正に評価され、賃上げに反映される日本型の職務給への移行は企業の成長のためにも急務だと指摘。6月までに導入方法を類型化し、モデルを示すと語った。"

「日本型の職務給」とやらを6月までに示すらしい…。ナニそれ?
まず「職務給」とは何かを検索してみました。

職務給とは
職務給とは、業務の内容に応じて給与が決まる制度のことです。年次や役職は関係ないため、成果主義に近い仕組みともいえます。採用した従業員の能力にあわせて仕事を決めるのではなく、仕事に見合った能力を持った従業員を採用する「ジョブ型雇用」とも関係の深い制度です。
また、最近の日本で注目されている「同一労働同一賃金」、非正規労働者と正規労働者でも同じ仕事をしているなら同じ給与を払うべきという考え方も、職務給と重なる部分があります。

スマカン 職務給とは?より抜粋

要するに職務給とは「年功序列の課長給」的なものではなく、具体的な仕事内容に対して報酬を与える、仕事の成果で給料を決めようと言うこと。
職務給とは逆の、職能給との違いにも触れていたので抜粋しました。

職務給と職能給の違い
よく職務給と比較される言葉に「職能給」というものがあります。職能給とは、従業員の能力に応じて給与を決める制度です。職務給は年功給とほとんど同じ意味で使われることがあります。
職務給では業務の難易度や専門性が評価基準として重視される一方、職能給は従業員の経歴やスキルを重視します。ジョブ型雇用や成果主義に近い職務給に対して、職能給は新卒一括採用・終身雇用・年功序列の仕組みと相性がよく、日本企業では長らく職能給が採用されてきました。しかし、職能給の課題が徐々に明らかになり、近年では職務給のメリットが注目されてきています。

学歴や年功序列型の賃金体系ではなく、成果主義や同一賃金同一労働の賃金体系にシフトするということでしょうか。では岸田総理の掲げる日本型とは何なのか。

日本型職務給とは?
給与体系全体を一気に「職能給」から「職務給」に切り替えることは現実的ではない。その場合、中高年の従業員を中心に給与水準の低下への強い懸念から、反対意見が高まるだろう。年功序列制度の下、自身は若い時には能力、成果と比べて低めの給与水準を受け入れていたにも関わらず、中高年になってからは能力、成果に見合った給与水準に引き下げられるのは不当だ、との反対意見が出やすい。
年金制度改革と同じように、給与改革についても、世代間の不公平感が高まりやすいのである。それが大きな混乱をもたらす可能性に配慮すれば、「職務給」への切り替えは、希望者を中心に段階的に進めていくことが現実的だろう。

NRI 日本型職務給は構造的賃上げを後押しするか より抜粋

日本型職務給」の具体的な内容はまだ政府から発表されてないため、憶測の域は出ないようですが、いきなり欧米型の職務給に変えると働かないオジサンから反発が出るから年功序列と組み合わせて行こうね、という感じでしょうか。しかし問題は働きに見合わない賃金を貰うオジサンたちが高速道路の出口で渋滞してる事にあるので、希望者を中心に職務給に、ではあまり進みそうにない気がしますが…。

しかし政府が民間企業に「年功序列を見直せ!雇用の流動化だ!賃金上げろ!」と押し付けるのはどうなのでしょうか?それって社会主義では?と思うのですが。
こんなニュースがありました。

今年度の国家公務員の給与について、人事院は、ことし8月、コロナ禍で落ち込んだ民間企業の給与水準が回復していることを踏まえ、月給を平均で0.23%、ボーナスを0.1か月分、それぞれ引き上げるよう勧告しました。

あれ??年功賃金はダメだ!とか言ってる政府が…なんか変ですよね。一律ベースアップって年功序列のような…?国家公務員の給料って一体どうなってるんでしょう?ちょっと調べてみました。

まずこちらは国家公務員の給与表です。横軸の級が役職で、縦の号俸が勤続年数なので、典型的な年功序列ですね…。

国家公務員の給与(令和2年版)|内閣官房内閣人事局

下の表は「令和5年度一般会計予算」の中の、各政府機関の職員基本給だけを抽出したものです。前年度との比較を見てください。下がってるのは内閣官房と国税庁だけで、全部上がってます。ベースアップの効果でしょう。

しかし「民間企業の給料が上がったから公務員も上げまーす♪」は無責任ではないでしょうか?それでは政府の仕事の成果が全く出ていなくても、理由をつけて公務員の給料は上げられるわけです。民間に押し付けようとしている職務給型給与制度への移行はどこへ行ったのでしょう?それに公務員の給与を払ってるのは、誰でしょうか?
政府はこの30年間日本を衰退させ続けて全く成果を出してないのに、公務員の給与を上げ続けることそのものが、悪しき日本型雇用の典型ではないでしょうか?

というわけで、雇い主(国民)からの質問、というか提案です。
(国会議員衆参合わせて700名あまりいる中で、唯一と言っていい、政府の税金の無駄遣いに関して鋭い質問をしてくださる浜田聡議員にぜひ質問していただきたいです!)

民間企業の給与体系に干渉する前に、最初に国家公務員に「雇用の流動化の促進」「同一賃金同一労働」「職務給」を導入し、悪しき日本型雇用からの脱却を先導して、日本型職務給の見本を見せてはいかがでしょうか?と言うことです。

国家公務員の給料は、国家経営への投資です。私たち国民が暮らしやすく平和な生活を享受できる国を作ってくれるために、私たち国民は官僚に対して投資をしているのです。しかも選挙で選ぶのではなく、国家公務員試験という行財政における高度な能力を有しているか否かの判断基準で採用されている人たちなのです。その人たちこそ、我が国の仕事を適切に遂行できる人として能力を認められた人たちです。

その人たちが国を繁栄させるのは義務としての職務ではないでしょうか。私たち国民は官僚というとても能力の高い人材を雇用しています。その官僚たちの仕事を監視し、適正な国家運営をするように導くのは国会議員です。予算を決定する際に、国家公務員の国家への貢献という視点での審議を深めて欲しいと思います。そのために、まずは官僚から日本型職務給制度への移行を進めてはいかがでしょうか。

これで官僚の中でも雇用の流動化、賃金アップが実現すれば、安心して民間企業も追随できますね。

最後に、令和5年度一般会計予算から各省庁の退職手当一覧も載せておきます。まずは官僚から退職金を定年時に配るのではなく、先に退職手当も基本給に含めて増額すればいいのです。退職金制度の廃止により雇用の流動化が期待できます。年齢や学歴などは一切関係なく、仕事での成果に基づき昇給や昇進、減給や降格といった処遇を決定します。でも、規制をたくさん作って国民をコントロールする仕組みを増やしたり、税金をたくさん取ってきたから優秀な官僚だという評価だけはやめてくださいね。

こうすれば若い公務員の方の給料も上がり、過酷な仕事を何十年も我慢してやる必要もなくなります。若いうちに適正な評価でお給料がもらえれば、天下りも減るんじゃないでしょうか。良いことづくめではないかと思いますが、いかがでしょうか?


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