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塗膜調査あるある1.1 特記仕様書は歩掛表あるいは計算書の内容と合致するか確認すべし!

特記仕様書の内容を整理しよう

前回の続き。

例題はある県の特記仕様書を用います。分かりやすく前回記事と比較できるように一部抜粋しています。

まず、特記仕様書の整理。 文章中に出てくる順番通りに述べます。                         ①PCB含有量試験を行う                         ②鉛溶出試験を行う                          ③有害物質(PCB・鉛)判定を行う                    ④有害物質の判定は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」及び「労働安全 衛生法」による  

これだけでも「???」ですが、実はこれでも詳しく記述している方です。

含有量試験とは

端的にいえば、直接的に人体へ取り込まれたとき(吸引・誤飲等)、健康被害を引き起こすであろう濃度(基準値)を超過するかしないかを判定するための試験方法です。

溶出試験とは

産業廃棄物は最終的に処分場に埋め立てられます。処分場は当然風雨に晒されるわけですが、その際、有害物質が水に溶けて(溶出)処分場外へ出ていくことになります。すなわち、有害物質が溶けた水を誤って飲んだ時に健康被害を引き起こすであろう濃度(基準値)を超過するかしないかを判定するための試験方法です。これは、人体に影響のない水を排出するために、処分場への搬入前に実施する試験なのです。

有害物質の判定方法

①廃棄物の処理及び清掃に関する法律・・・・通称 廃掃法・廃棄物処理法   

 前回記事中の廃棄物判定(特別管理産業廃棄物か否か)に適用される法律です。廃棄物の処理に関する法律ですから、溶出試験に対応します。

②労働安全衛生法・・・通称 安衛法

 前回記事中の有害物質作業員暴露防止判定に適用される法律です。有害物質を含んだ粉じん等を現場作業員が直接摂取した場合を想定していますので、含有量試験に対応します。

塗膜中の有害物質

塗料業界は一定の年代に製造された塗料中に高濃度の「鉛・クロム・PCB」混入が認められる、と明言しています。だからこそ、塗膜調査は必須とされています。本来、塗膜分析は上記の3項目を実施すべきですが、塗膜調査結果データが蓄積して有害物質含有量の傾向が見えてきたことにより、発注者側が分析項目を取捨選択する場合があります。しかし、例外はつきものですから、1回は3項目実施を発注者側へ提案することにしています。

歩掛表あるいは計算書の内容を確認しよう

例題の仕様書は分析項目を絞っているので、私から見たらホンマかいな?と思います。また、仕様書中では含有量試験→溶出試験という流れで記述されているのに、有害物質判定の記述は溶出試験→含有量試験という、文脈的に逆になっているのが気になるところです。ここでは、発注者が業務金額を積算する経緯が分かる歩掛表か計算書で塗膜調査の詳細を見てみることにします。

歩掛表の内容を整理しよう 

例題仕様書に対応する歩掛表の内容をまとめると下記の通りです(必要部分を抜粋)

①塗膜調査(PCB) 規格 廃掃法・安衛法                ②塗膜調査(鉛)    規格 廃掃法・安衛法

皆さん。①②を見て、ん?と思われませんか?

そうです。仕様書において、PCBは含有量試験、鉛は溶出試験となっていますが、歩掛表での規格はPCBおよび鉛とも廃掃法・安衛法の両方を記述しています。すなわち、2つの分析項目はいずれも溶出試験と含有量試験をやりなさい、と読み取れるのです。 

質問状を作成しよう

さて、特記仕様書と歩掛表の記述、どちらが本当でしょうか?

答えは「分かりません」(泣)。

発注者の意図が不明なので、この場合は発注者にお伺いをたてることが必要です。質問状を作成して発注者に提出し、回答をもらいましょう。場合によっては、業務金額の減額や増額の手続きをしなければなりません。

まとめ

ご覧になっていただいたように、発注者が作成したものだからといって矛盾がないわけではありません。きちんと協議して実施しないと時には納品後の会計検査で問題となる可能性があります。そんなことになれば発注者も受注者も損しますよね?

前述したように、例題の仕様書はまだ良い方で、酷いものになると「塗膜を採取分析してその結果をまとめよ」しか記述していない仕様書もあります。

従って、皆さんは容易に想像できると思います。

協議に手間取って業務着手ができずに頭を抱えてしまう技術者を・・・


次回はちょっとした豆知識を披露します。