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旧友
当時病んでいた私は、死ぬことを選んだくせに直後に電話をかけた人がいる。
彼女のおかげで私は発見され、後遺症もなく今も生きている。
その人に10数年ぶりに会った。
私の青春時代、楽しいことももちろんあった
でもほとんどがモノクロで破れていて霞んでいる。
その中で一番近くにいた友人だった。
昔、同窓会に顔を出す度に寝込んでしまう私を見た母が「無理に顔を出す必要はない」と言ってくれた。
それから集まりには行かなくなり疎遠になった。
会う人みんなが輝いていて、私には何もなかった。それに打ちのめされていた。
劣等感というものは恐ろしい。
何度も何度も絶望した。
それから10年以上経ち、私も変わった。
今なら自然な笑顔で会えるだろうか、そんな希望を胸に待ち合わせ場所へ。
「変わらないね」
開口一番そう言った彼女。元々思ったことが口からぽんと出るタイプの素直な人。深い意味はないはずだ。
そう?と笑いながら聞き返す。
彼女にも出会いと別れ、仕事、家族のことで色んなことが起こっていたはずのこの10数年。
彼女らしさ、というのもまた変わっていなかった。
とても安心して、癒されてきた自分を振り返り感謝した。
そして今、なんかしんどい。
なんだ。
心の部屋のすみに黒いものが結構ほわほわ浮かんでいる。
「その頃の友達に会うと、自分も当時に戻っちゃうもんよ」と呟いた母。まさにそれだ。
とは言え、母の言葉は良い意味なのだろうと思う。ノリが戻る的な。
悪い意味で戻ってしまったような気がして笑う。
なんかな、なんか
「自分だけ崖の下に落っこちてしまいまして、這い上がる元気もなく数年の間ひっそり暮らしてました。」
みたいな気分。
自尊心が吐息とともに出ていってるような錯覚
ああ、空気清浄機
まっさらな空気にしないでくれ
産後以来禍々しい心とは疎遠にあったはずなのに、他者との関わりで出てきちゃったちっさい心の脆さ弱さくどさ。
「変わらないね」という言葉がどんな意味を持っていたのかへの疑問も
こうして変なことを考え込んでしまう自分も、
蓋を開けずに閉まっていたかった。
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