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ミュージカル 「スリル・ミー」

あけましておめでとうございます。
今年もちょいちょい更新できたらいいな。

東京芸術劇場シアターウエストにて、スリル・ミーを観劇してきました。

実際にアメリカで1924年に起こった殺人事件(レオポルドとロープ事件)を基にしたミュージカルで、オフ・ブロードウェイでは2005年に上演されています。
日本版も今までに何度も上演されており、私は今回が初めての観劇です。

「絶対に予習せずに行った方がいい!!」とのアドバイスにより前情報はチラシの内容くらいで臨んだ今回の舞台。
なかなか衝撃的な作品でした…こんなにぞくぞくしたのは久しぶり!

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話はとある収監者(「私」)の仮釈放審議委員会の場面から始まります。
34年前に「彼」と2人で起こした事件について、実際には何があったのか?回想しながら当時の様子を語っていく…という内容です。

殺人事件を基にしていることもあり、かなり重たい雰囲気です。さらにホームページによると「過激な表現が含まれているため、中学生以下の方のご観劇はご遠慮ください」とのこと。
実際なかなかきわどいシーンがちらほら。

この舞台の大きな特徴の一つは、出演者が「私」、「彼」、そしてピアノ奏者の3人だけであること。(他の楽器もなし!)
この話は、2人がなぜ犯行に及んだか?〜その後逮捕され裁判に向かうまでが描かれますが、サスペンスのように犯罪自体がメインではなくむしろ2人の関係性に焦点を当てた内容でした。
実際、脚本・作詞作曲のステファン・ドルギノフの戯曲の前書きによると「unusual love story」(異常なラブストーリー、とでも言うのでしょうか)と表現されていてなるほど…と納得しました。
たしかにある意味ラブストーリーでした。

「私」と「彼」は幼馴染であり、恋人同士であり、共犯者。さらに、「私」はどんなにぞんざいに扱われても、「彼」の側にいたいがために「彼」の異常な犯罪についていく…というかなり歪んだ関係性。
それぞれの父親、「彼」の弟、被害者の少年など2人に関わる人間は何人かおり、作中で言及されているにも関わらず一切出てこないんですね。
これによって、周りの人間に関わらずこれは2人の世界の話であり、その関係性がどう動いていくのか…について丁寧に表現されているし観ている方も自然と没入してしまいました。

結末は控えますが、2人の鬼気迫る演技と感情に呼応するかのようなピアノ、目が離せない展開などなど…100分間私は微動だにできませんでした。(気がついたら首が痛かった。)
男2人がラブシーン演じるわけなので、それで微動だにできなかったのもあるかも。笑

劇場の小ささも効果的でした。以前A Class Actを見たときと同じキャパ270人の会場なのでまあ近い近い。
派手なダンスやアクションはなく、歌ってはいますが会話劇に近いため、より2人のやりとりが引き立ちじっくりと楽しめる気がします。
(とはいえ、銀河劇場など今までの公演は観ていないので比較できませんが…)

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ダブルキャストのため、私が観劇した回は松下洸平さん(「私」)、柿澤勇人さん(「彼」)のペアでした。
ちょうど去年、メリー・ポピンズでひょうきんなバート役をやっていた柿澤さんがこんなに怖いキャラに豹変するとは…。恐ろしい。

このスリル・ミーという舞台、それぞれのペア毎の演技の違いも魅力だそうで、観るペアによって結構印象が違うとか。
かなりの人気チケットで一枚取るのがやっとでしたが、次回公演(やるよね?)ではもっと別のペアとも比べてみたいですね。

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ちなみに今回、開演数分前の客席の静けさと緊張感が凄かったです…。誰一人何も喋らない、物音一つ立てない!(それとも小劇場だといつもこんな雰囲気なのでしょうか?)
出演者だけでなく観る側も全員ガチ本気。やはりそれだけ観客を本気にさせる力がある…のかも。

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