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「一周まわって」という表現をよく聞くが、どこのコースを一周するかで全然意味合いが変わってしまう可能性について

お酒をたしなむ大人は格好いい。
そう感じる原因にはいくつかの可能性が考えられる。以下に列挙してみよう。
1私がお酒を飲まないため、飲酒という行為に憧れがある。
 ゆえに、お酒をたしなむ大人は格好いい。
2私が大酒呑みで、自分自身のことを格好いいと思っている。この文章も酩酊状態で書いていうぃっく。ひっく。飲み過ぎてしゃっくりがとまならないっく。
 ゆえに、お酒をたしなむ大人は格好うぃっく。うっぷ。おろおろおろおろ。
3実は私はまだエレメンタリースクールに通う子供なので、大人という人種それ自体に憧れがある。お酒を飲む姿にも、煙草を吸う姿にも、気に入らない上司の頬を万札で引っぱたく姿にも憧れがある。
 ゆえに、カネこそがこの世の全てだと思う子供ができあがる。

な、な、な、なんと上記の中に正解がありますぅ!! と書いたところで誰も驚かないでしょうからここはすっといきますが、1なわけです。
私はお酒を飲まない。

まったく体が受けつけないかというと、そういうわけでもなくはないのかもしれなくはなくないのかもしれなくもない。ん? なんだ?

若い頃(この場合の若いは幼稚園でみんなが楽しそうにお遊戯をしているのをホールの隅っこで斜に構えて『あんな踊り、やってらんねえよ』と思っていた時代のことではない)には、ちょろちょろ飲んだりもしていた。
味に不満はないし、酒場の空気も嫌いではない。

よく飲んだお酒はバーボンだ。ジム・ビームやアーリータイムズと今ここに書いただけでも、当時を思い出し、指先が震えだす始末。あれ。私はアル中だったのか?

バーボンにアル中といえば、わかる人にはわかってもらえると思うが、鬼才ローレンス・ブロックが生み出した探偵マット・スカダーに私は傾倒している。
バーボンを飲み始めたのも、マットが飲んでいたからだ。

夜な夜なグラスに氷とバーボンをそそぎ、ちびちびと舐めるように。またあるときは、日中からコーヒーにバーボンを垂らしたりなんかして悦に入ったりもする。

しかし、私はある問題に気がついた。
お酒を飲むと、気分が滅入る。

アルコールを摂取したときに起こる人体への反応、気分の変化は人それぞれいろいろなパターンがあるだろう。
すぐに顔が赤くなってしまう人もいれば、すぐに顔が赤く血に染まってしまう人もいる?
気分が高揚し、饒舌になる人もいれば、涙もろくなったり愚痴っぽくなったりする人もいる。脱ぎたがる人までいる。逆に着たがる人というのはあまり見たことない。酔えば酔うほど厚着になっていく人、手上げて。

酔ったときの反応というのは、それこそ人の数ほど存在すると言っても過言ではない。

私の場合は、飲めば飲むほど何もかもが嫌になり、ひと言も話さなくなり、人を刺すような鋭い視線をするようになり、最終的には人を刺すようになる。あのとき、顔を赤く血で染めていたあの人は私にやられたのだろうか。

そういうわけで、私はお酒を飲まなくなった。
だから今でも、上手にお酒を楽しんでいる人はとても格好よく見えるのです。

ちなみに、お酒を飲まなくなってから、コーヒーを飲む機会が増えた。砂糖ぬき、ミルクぬき、もちろんバーボンぬきで。
実はこれもマットに憧れているだけ。彼は禁酒してからいつもコーヒーを飲むようになった。

ですが、最近思うのは、結局、一周まわって、一番おいしい飲み物はイチゴオレということ。

どのコースを一周まわったらそこにたどり着くのだ。

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