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はじめてのポイントアプリでしょげないでよベイベーな話 /エッセイ

私には行きつけのドラッグストアがある。
サツドラだ。
かつてはサッポロドラッグストアーという名だった、札幌を拠点とするお店だ。(今調べてみたら東京にも出店しているようだ)

なぜ行きつけなのかというと、簡単な話だ。近いから。私の両脚には生まれつき、歩数制限機能がついており、なるべく歩かないような体になっている。一方で、ダラダラ無制限機能まで搭載しているもんだからなおさら歩かないってことになっちゃう。

サツドラで買い物をするたびに、いつも店員さんから「アプリはございませんか」と訊かれる。
しかし、私にアプリはございません。アプリはございませんのよ。ポイントカードならございますのよ。

このポイントアプリというものがかなりお得らしい。クーポンのことや割引のことなどを、店員さんは丁寧に教えてくださる。

なので、私は必ずいつも新鮮なリアクションで「えっ! そうなんですか! 絶対ダウンロードします!」などと調子のいいことを言う自分の姿を想像しながら実際は小声で「……ほぉ」とだけ言っている。

店員さんに声をかけられたときには、本当にダウンロードしようと思っている。しかし、お会計を終え、店を出たころにはもう忘れている。

で、また買い物にいったときに同じことを言われて思い出すのだ。

いつか絶対にダウンロードするつもりでいたのだが、ついにその時がおとずれた。

それは、家でのんびりしていたときでも、スマホをいじっていたときでもなかった。
やはり、サツドラに来店したときだった。

そのとき、私は何気なくお菓子売り場をうろついていた。トイレットペーパーはどこかな、などと言いながら。でも見つけられなかった。だってお菓子売り場だから。

そこで私の目に、あるポップが飛び込んできた。といっても、商品紹介が書かれているポップの紙がみずから私の目の中に飛び込んできたわけではない。そんなことをわざわざ書かなくてもわかるか。飛び込んだのは私のほうだ。眼鏡をかけていたから眼球直撃だけはまぬがれた。

【アプリをお持ちの方は20円引き!】
ちょうど私が買いたいと思っていた柿の種のポップにそう書かれていた。

柿の種が20円引き……!!
これはアプリを入れるしかない!

私は買い物カゴなんかそっちのけでスマートフォンを取り出した。そしておもむろにTwitterを開き……ではなかった。アプリだ、アプリ。サツドラアプリ。

スマートフォンの中にサツドラアプリを搭載し、意気揚々とレジへ向かった。

しかし、この日は店員さんからいつもの「アプリはございますか」との質問はなかった。なぜなら、初めてのポイントアプリでど緊張中の私は警察手帳を見せる刑事さながらに最初からスマホの画面をつきだしていたから。

画面に表示されたバーコードを読み込んでもらう。昔、バーコードバトラーなんてゲームがありましたよね、などと思いながら。

これで無事に初めてのポイントアプリが終了したと胸をなでおろしたところ、店員さんがさらなるお得情報を教えてくれた。
「使えるクーポンがありますよ」
店員さんの指示通りにクーポン画面に切り替える。「これとこれと、それも使えますね」なんだか次々にお得になっていく。

その日は偶然、洗剤やらお薬(合法の)やらたくさん買いだめしたタイミングだったので、お会計が8800円にもなってしまっていた。ところが、ポイントアプリの魔法を使った結果、あれよあれよという間になんと最終的には800円引きになった。

柿の種20円引きのためにダウンロードしたポイントアプリのおかげで、800円も得してしまった。
ポイントアプリすごい。
800円引きって、別に柿の種を40個も買ったわけではないからね。

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