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成績が良くても退学させられる


高校生の時、いわゆる予備校に通っていた。といっても大学は推薦での進学と決まっており、受験はしない。学校の成績も特に問題ないが、なんとなく、遊ぶより勉強しといた方が安心というような、保険のようなものだった。そして、それは自分の意思ではなく親の意思だった。予備校というより補習塾という位置付け。

数学と英語。入学テストの結果で振り分けられたコースは、数学: 早慶上智、英語: 東大・京大 を目指すクラスだった。もともと英語教育が進んだ私立校に通っていたため、多分普通の公立カリキュラムの数倍の速さで英語スキルが上がっていたんだと思う。数学は好きじゃなかった。

予備校の英語クラスは、数年前に高校で学んでいた内容だった。嫌味ではなく、難しいと思う内容ではなかった。ある時、間違った理解が生徒に身に付いてしまったら困ると思い、講師のミスを指摘し、その先生のプライドをひどく傷つけてしまったことがあった。「英語は絶対の自信があったのに...」と京大卒の彼はしょげてしまった。とはいえこちらも全く悪気はない。でもごめんなさい。ただ、受験に向かって必死な生徒もいる中でどうしても正さないといけないと思ったから。

予備校は学校帰りのため、授業前にいつもコンビニでお弁当を買って行って、開講前に友達と食べていた。お気に入りはセブンイレブンのカルビ焼肉弁当だった。授業中は一切私語を挟むことはしないが、授業開始までの時間は友達とおしゃべりしながら夕食を頬張っていた。

ある時、その予備校の事務員から、友達と私は告げられた。

「大学受験をしないなら、受講を辞めていただきたい。クラスの覇気が下がるから。」

例の英語講師からの要望とのことだった。ビックリした。でも何も反論することはなかった。だって私自身も塾に来る目的をもともと持っていなかったから。

迷惑をかけてしまっていたなら申し訳ないけれど、正直、退学できて良かった。お金も時間も他のことに使った方が良かった。英語クラスにいたのは他一名だったから、東大を目指していた彼が外野の声を気にせず勉強に存分に打ち込めたらそれがいい。そうあるべきだ。

大学合格のための予備校という立ち位置を見失わない先生の姿勢にハッとした。先生とはその時以降お別れの挨拶もできないまま予備校を辞めたけれど、覚えています。先生から教わったことは、目的を見失わないこと。シカのモアさん。

No more than〜(〜しか)を見ると、いつも思い出す。

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