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─孤独の自己犠牲と自己嫌悪─ エイティシックス 感想

独善利己

虐げられし者の倫理

満ち足りた者からの慈悲はエイティシックスの倫理観や信念には受け入れられないというジレンマに苛まされ続ける物語だった。

誰かの犠牲の上に立ちながら銃後でのうのうと生きて、最前線での無数の死に無自覚でいることを許せないエイティシックスたちの正義もわかる。わかるけれど、その信念に完全に共感できるのは同じエイティシックスたちにしかいないのだと思う。

シンたちに死んで欲しくない、置いていかれるくらいなら自分も一緒に…という、シンたちのそれと同じだけど噛み合わないフレデリカの思いもフレデリカ自身にしか理解できないのであろう。

だから自分は死んでも構わない、だけど他人には死んで欲しくないという各人の思いに共感できるのはその本人しかいない。その考えの下では自分と他者の間に境界線が引かれ、その片岸で自分だけがただ一人孤独であるのだ。

生きて良い理由

だけど、モルフォの許に送り届けようと戦う仲間たちや「忘れないで」の言葉を追いかけてきたレーナがシンを独りにしておかない。

いつも自分だけが生き残り罪悪感と孤独感を抱くばかりだったシンの人生に、彼女が初めて「誇っていい」と意味を与えてくれた。シンの生き方に生かされたというレーナがくれたきっかけを頼りに、戦場しか知らない仲間に新しい世界を見せるため、そして自らの確固たる生きる意味を見つけるためにシンは新たな人生を歩み出す。

それにずっと遠く異なる場所に在りながらも僅かに心だけで繋がっていた6人がようやく対面できたシーンには、色んな想いが募って言葉にできずに代わりにただひたすら涙が溢れてきた。孤独な自己犠牲と自己嫌悪の詰まったトンネルからシンがようやく抜け出してたどり着いた景色はどこまでも晴れやかで清々しくあった。

結局、シンの頑なな信念を変えたのはシン自身に動機付けられたレーナの信念だったけれど、そもそもあなたが言ったことなのだからあなたも受け入れなさいと言いたげな押し付けがましさもある説得は微笑ましくて憎めない彼女の性格を感じる。だけど、シンみたいなある意味で潔癖な性格がいつの間にか煮詰まりすぎて、自己破滅を辿っているような人は世の中に少なくない気がする。それに何より自分自身にもその気がありそうだなと省みることとなった。

そんなことは隣に置いといて、最後の対面のシーンはもう本当に泣いて泣いてしまって、たぶん今までで一番アニメを見ていて泣いた場面になったと思う。数多の作品よりも自分の胸に突き刺さるようなものが積み重ねられていた場面だった。

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