『Wilmot's Warehouse』「多分大丈夫だからヨシ!」「何を見てヨシといったんですか?」【レビュー】
あなたは整理整頓が得意ですか?
今回紹介するのはイギリスのクリエイター、Dick Hogg氏とHollow Ponds氏によるPCパズルゲーム『Wilmot's Warehouse』です。
プレイヤーはある倉庫のスタッフ「ウィルモット」となり、入庫される製品を仕分けつつ、スタッフの出庫注文に答えていきます。
といっても操作は簡単で、移動はWASDキーだけ。
製品に隣接してクリックすると運ぶことができます。もう一度クリックすると手放します。
製品に近づいてクリックするだけ
初期状態では最大6個まで同時に運搬可能
ゲームの流れは、最初に入庫フェーズで大量の製品が入庫されます。
それらを時間内に自由に整頓していきます。
溢れんばかりの製品
画面左上の時間を気にしながら整理しましょう
整頓方法に決まりはなく、同じアイコンで一か所に固めたり、生き物や工具といったジャンルで固めたり、アイコンの色でまとめたりと方法はプレイヤー次第です。
一か所に同じ製品をまとめて分かりやすくしよう
一定時間が経過すると出庫フェーズが始まります。
出庫フェーズではスタッフの求めるアイコンの製品を探して運びます。
制限時間内にすべての製品を渡せばフェーズクリアです。
どれが何個ほしいのかをアイコンで表示
製品をスタッフまで持っていけば
自動で渡されるのでとても便利です
スタッフから離れても画面上部に注文が表示されるので
忘れる心配もありません
より早く製品を渡し終えたり、星アイコンを持つスタッフの注文を早めに完了させるとボーナスの星が貰えます。星は後述のアップグレードで使えるのでとても大事です。
出庫フェーズが終了すると製品群の追加が行われます。
ゲーム開始段階は数種類しかありませんが、出庫フェーズが終わるたびに4種類ずつ製品が増えていきます。
そのため、ゲームが進むほど膨大な種類の製品を扱うことになります。製品のアイコンも抽象化されたビジュアルなので、区別がしにくいのも厄介なポイントです。
何が選ばれるかは完全ランダム
製品種類の追加が終わると再び入庫フェーズが開始、同じ作業を繰り返していきます。
そして3度出庫フェーズを終わらせると1クォーターが終了し、アップグレードが行えます。
アップグレードでは移動速度アップや運搬可能数の増加などのウィルモット君の強化、フロアの柱を撤去して倉庫スペースの拡大などが行えます。
実行には前述の星が必要なので、出庫フェーズを迅速にクリアするほどアップグレードも多くできて楽になります。
アップグレードが終わるとティーブレイク。
大量の製品が入庫されるのですが、この時は制限時間なし。焦ることなくゆっくりと整理できます。
入庫された製品を動かすのはもちろん、すでに配置してある製品をより取りやすい配置に並べなおすこともできます。
ティーブレイクを終了させると再びフェーズが開始、入庫と出庫に追われる時間が始まります。
(入庫フェーズ→出庫フェーズ→製品種類追加)×3
↓
アップグレード
↓
ティーブレイク
↓
(入庫フェーズ→出庫フェーズ→製品種類追加)×3…
という構造をひたすら繰り返していくのが本作です。
説明だけ見れば簡単そうと感じる方もいるでしょう。
しかし実際に遊んでみるとなかなか歯ごたえがあります。
まず一つ目に視界の問題。入庫した製品をフロアに配置するのですが、一定距離離れてしまうと製品がシルエットになります。
上の画像では9個の紫のアンモナイトの製品がウィルモット君の隣にあります。
しかし奥二つは輪郭のみで色が不明瞭になってます。
そして下の画像で6マス離れると製品の模様が一切見えなくなりました。
このようにどの製品をどこに置いたのか、ということが非常に分かりくくなっています。
時間に追われながら急いで入庫をしたり、製品の種類が増えていくと記憶するのも一苦労です。
模様が見えなくてもある程度の配置は把握できるよう丁寧な整理が要求されます。
次に製品による移動の妨げです。
前述の通りウィリアム君は隣接した製品をくっつけて運びます。
しかしこのゲームは2D。上下という概念なんてありません。
するとどうなるか?置いてある製品と運搬中の製品がつっかえて身動きが取れないという問題が発生します。
画像では右側の黄色いコインを運んでいます。
このまま上に上がりたいのですが、鍵アイコンの製品が邪魔なせいで移動できません。
右方向にも製品が見えているので同じく動けません。結果ウィリアム君には左から回り込む大回りのルートしかないのです。
厳密には製品が置いてあっても無理やり押しのけて通ることも可能です。ただしそんなことをすれば製品の配置が崩れることとなり、後の整理で余計な時間をとることになります。何より押しのける動作は無茶苦茶遅いです。
製品を揃えるだけでなく、後の移動も考えて適切な移動スペースを確保するのも難しいポイントになっています。
最後に製品の運搬可能数。
スタッフは一度の出庫フェーズで合計10個以上の注文をしてきます。
何度も往復すれば時間がもったいないし一度の移動で済ませたい…と考えるのは当然でしょう。
しかしウィリアム君にも限界があります。最大運搬可能数が設定されており初期では6個、アップグレードで2個ずつ増やせます。
ではそれをオーバーするとどうなるか?
運ぶには運べるのですが、尋常じゃないくらいスピードが落ちます。製品押しのけ時の遅さが目にならないくらい速度がガタ落ちします(ついでにウィリアム君も無茶苦茶しんどそうです)。
実に辛そう
それゆえ運搬可能数を厳守して運ぶ必要に迫られます。出庫フェーズだと間違いなく時間切れです。
このようにアイコンが隠れる製品、移動の妨げになる製品、運べる数の限界、そしてフェーズを重ねるごとに増える製品の種類…と倉庫業務は実に大変です。これらをうまく乗り越えて倉庫マスターになっていくのが本作の魅力です。
製品の過剰積載や煩雑な配置など、現実で考えれば労災に繋がる要素がデメリットとして反映されています。
時間や注文が気になるのもわかりますが、まずはウィリアム君が働きやすくて安全な環境を作るのが大事です。
労災防止を頭に入れて遊ぶとゲームをスムーズに進められ、かつ現実の仕事でも役立てられる…かもしれませんね。
(^o^)「とりあえず運べるからヨシ!」
(#^ω^)「こんな通りにくくて製品区分も不明瞭な
グチャグチャの配置でどこがヨシなんですか?」
難しいポイントだけでなく、楽しくなる要素もあります。
なんといっても整理整頓がうまくいったときの達成感は代えがたいです。
現実でも本を巻数順に並び変える、写真を日付ごとに並び替える、文具を大きさごとにまとめる…など様々な整理整頓があります。
そしてそれらが終わった時の解放感や心地よさはとても良いものでしょう。
本作ではあの感情を何度でも味わえます。膨大な製品にもくじけず、必死に製品を自分で作ったルールに沿って配置し、移動スペースに注意しながら整列させていく。
全てが終わった時に整然と揃えられた製品を見たときにはきっと笑みがこぼれることでしょう。
ゲームシステムもプレイヤーに親切な構成となっています。
三度の入庫、出庫フェーズでは時間に追われてヒィヒィ言いながら仕事をこなします。
そのあと訪れるティーブレイクでは制限時間なし!心行くまで整理をすることができます。
この緩急がプレイヤーの負担を減らしてくれます。今はぐちゃぐちゃだけどここさえクリアできれば次はティーブレイク、そんなことも考えながら運んだりもできます。
ティーブレイクの文字通りここでゲームを中断するのも良し。
メニューを開くだけで即座にセーブされるので気軽にやめられます。
入出庫のフェーズでは全力で倉庫を駆け抜け、ティーブレイクでまったりと整理整頓や休憩に勤しめる。この対比が遊ぶ上でとても心地よくストレス軽減にもなっています。
BGMも素敵なものが多いです。
入庫時は静かで単調な雰囲気のBGMですが、それが整理整頓を考えるプレイヤーの思考を妨げずに雰囲気を作り出してくれます。
出庫フェーズではややテンポアップ。時間に追われるせわしなさをアピールしつつもリズムよく仕事をこなせます。
そしてティーブレイクでは疲れた頭を癒してくれる優しいメロディ。うっかりすれば眠ってしまいそうな温かい曲になっています。
内容はとてもシンプルで、だけど実際には歯ごたえ満点。
得られるものは労災の知識と整理整頓で味わえるあの達成感。
倉庫管理パズルゲーム『Wilmot's Warehouse』ぜひ遊んでみてください。
ちなみにゲームを進めていくと、上司のCJからありがた~いアドバイスをもらえます。なんて良い上司なんでしょう!
「背中ではなく膝を使って製品を運ぼうヨシ!」
「製品のバランスに気を付けようヨシ!」
…こんなポスター作る暇あったら倉庫に照明つけてください。
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