ラジオ「LL教室の試験に出ないJ-POP講座」(5/16土25:00~O.A)

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▼今週の1曲
M-1 betcover!!「NOBORU」

森野:去年、ラジオ番組の1コーナーを担当した時に、パーソナリティーの能町みね子さんがかけてて気になってたbetcover!!という、まだ19歳くらいのひとりユニット。ソカバンっぽいというか、尾崎豊っぽくて最近にない感じの熱さなんですよ。
ハシノ:たしかに尾崎っぽいですね!腹じゃなくて喉で歌ってる感じ。
森野:中村一義とよく比べられる、ともあったかな?
矢野:いわゆる東京インディー(死語ですが)っぽいオシャレな感じと思いきや、シャウトするのが良いですね。
ハシノ:良くも悪くも今どきっぽい洗練さがない、シティポップ度が低いというか。
森野:そうそう、だから引っかかったんだけど。インタビュー読むと、中村佳穂や長谷川白紙みたいなタイプではないと自分で言ってるんだよね。パソコン使えないって(笑)。ライブ観に行きたいな〜。
ハシノ:ライブはバンド編成なんすか?
森野:どうなんだろ?映像を見ると、バンドでやってるね。1999年、生まれは多摩地区だって。
ハシノ:99年生まれにとっては中村一義って生まれる前の音楽ってことになるのか。なんかすごい。
森野:サビのところ、尾崎豊の「十七歳の地図」の「バカ騒ぎしてる街角の俺達の〜」ってところにそっくり!
矢野:本当だ! 尾崎では「十七歳の地図」が一番好きです。
ハシノ:ローファイな音像だからインディーかと思ってましたが、調べてみたらエイベックス(cutting edge)なんですね。


▼今週のテーマ「レゲエ」
M-2 小泉今日子「kyon kyonはフツー」6:42

森野:これ80年代後半ぐらい?
ハシノ:89年ですね。『KOIZUMI IN THE HOUSE』っていう、近田春夫プロデュースでハウスとかの当時クラブ・ミュージックを大々的に取り入れたアルバムです。その中からこの曲はこの時代っぽいレゲエ。
矢野:ラヴァーズ的な。イギリス経由な感じがしますね。キャロル・トンプソンとかを思い出します。
ハシノ:まさにそんな感じ。
森野:レゲエといえばチェッカーズの名曲「Room」も同じ時代だね。
矢野:チェッカーズは2トーン感もありますよね。パンクからレゲエの流れ。キョンキョンのほうは裏方がポスト・パンクを意識していますね。
ハシノ:キョンキョンは実際に屋敷豪太とか絡んでるしね。UKだよね。
矢野:サリーっていう80年代のアイドルバンドいましたよね。あれもロックンロールと2トーンのイメージがありました。
森野:当時流行ってたと思うな、THE BOOMとかだって含まれるよね。
ハシノ:モッズのシーンからの流れもありますよね、スカパラも最初モッズのイベントでライブしてたっていうし。

M-3 中島美嘉「接吻」6:02

森野:あれ、こんなんだったっけ?
ハシノ:この曲っていろんなリミックスがありますけど、原曲の時点でだいぶレゲエなんですよね。
矢野:リミックスは原曲とだいぶ違いますよね。デニス・ボーヴェルのダブ・ミックスが超渋いのですが、渋すぎるのでやめました。
森野:ドラマの主題歌だったっけ?
矢野:主題歌にはなっていないんじゃにですかね。『RELAXIN’ with JAPANESE LOVERS』ってコンピに入っていました。
森野:タイアップとか何もないんだっけ。この曲がきっかけで売れたの?
矢野:この曲は2003年なんですけど、中島美嘉自体は2002年にはすでに売れてましたね。
森野:もともと売れてて、カバーも売れたってこと? 歌ってたのは覚えてるけど全然記憶がないな…。
ハシノ:もともと普通の売れ線J-POPの人だという認識だった中島美嘉が、いきなりすごいかっこいいカバーやってびっくりしたって印象でした。
矢野:そうそう。女優とかもやっていたメジャーな人がいきなりデニス・ボーヴェルとか言い出したからみんな驚いた。
ハシノ:『RELAXIN’ with LOVERS』はもともとジャマイカのラヴァーズロックのコンピのシリーズで、スピンオフとして日本の曲のが出たんですよね。郷ひろみの「林檎殺人事件」のズブズブのリミックスが入ってたりする。
森野:この曲も屋敷豪太なんだね〜。

M-4 トマトス「くりかえすよ」

矢野:トマトスは「ロック・ユア・ベイビー」がやたら小バコ系のクラブでかかっていました。
森野:名曲だよね。MUTE BEATとかじゃがたらとかそういう人脈の人で。ボーカルの松竹谷さんが実家の近くのちっちゃいバーで歌ってたの。あとピアニカ前田とかね。
矢野:レゲエやダブあたりのそういうコミュニティありますよね。
森野:80年代から90年代にかけて大きかったと思うんだよね。THE ROOSTERSの井上富雄が、スカパラの冷牟田とやてったバンドがブルートニックだったり、90年代になって小沢健二やオリジナルラブのベースを弾いてたり。あと、こだま和文はフィッシュマンズとか、朝本浩文がTHE BOOMとかUAとか。
矢野:スカパラの渋谷系につながるラインと、じゃがたら〜渋さにつながるラインとか。あのへんもそんなに語られてない
森野:当時、兄がバンドやってたんだけど、活動してた印象では、渋谷系よりそっちだよね。おしゃれな人はレゲエ聴いてるようなイメージ。
ハシノ:パンクからレゲエを繋いだキーパーソンとして、S-KENさんの周辺はいろいろありますよね。
森野:芸能界に近づいた人とそうじゃない人の分岐点だったと思う。夜のヒットスタジオがR&Nっていうロックが出る番組を深夜にやってたりね。89年から90年頃。
ハシノ:ですね。89年は分岐点だったと思う。
森野:ボ・ガンボスとか音楽性深いよね。でも芸能に寄ってかなかった印象。
ハシノ:当時そのあたりはみんないっしょくたにバンドブームとしてくくられてましたけど、ボ・ガンボス、ニューエストモデル、じゃがたらは本物で他はガキっぽいみたいな価値観のロックおじさんいましたね。
森野:クラブカルチャーもそうだけど、芸能界にからめとられたくないっていう感じはあったのかな。
ハシノ:絶対それあったと思います。いまほどインディーズが確立されてなかったから、油断したらすぐ取り込まれそうになってたと思う。大槻ケンヂが語る当時のエピソードとか読んでると。YOSHIKIが独力でレコード売って大儲けしたみたいなインディーズ大儲け幻想ありますけど、ごく一部以外は食う手段とかなかったと思う。
森野:食うっていうよりはただ音楽が好きっていうことだったのかな。音楽をお金に換えていく情報も持たないままってのもあるだろうし。
矢野:89年といえば大貫憲章さんのロンドンナイトもありますね。ロックやパンクやハードコアがクラブカルチャーと結びついてきます。
森野:スカパラはキョンキョンとかのバックに出てきてうまく芸能と繋がった感じがしたな。ヒップホップでいうとドラゴンアッシュがそういう存在だったみたいな話があるでしょ、アイコンになるみたいな。

M-5 上田正樹「渚でジャバ」4:46

森野:これはいいね〜!
ハシノ:84年のアルバムで、リズム隊は本場ジャマイカからあのスライ&ロビーを呼んでいて、あと作曲は加藤和彦。80年代の上田正樹はすごくいいです。
矢野:良いですね! 他の曲もこんな感じなんですか?
ハシノ:レゲエとAORが半々かな。この時期の上田正樹のアルバムはだいたいそうです。
森野:なんてバンドやってたんだっけ?
ハシノ:サウス・トゥ・サウスですね、当時はブルースとかラグタイムみたいな音楽やってましたけど、80年代にAOR化しています。しかしAOR化した70年代シンガソングライターって他にもたくさんいるけど、こんなにレゲエ成分が多いのは上田正樹ぐらいで、特異な存在です。
矢野:ブルースのあとにレゲエ。土着的な感じが響くのでしょうかね。
森野:大阪感があるよね、音は洗練されてるんだけど土着的なソウル。やっぱりブルースが入ってるからなのかな
ハシノ:それUKっていうよりはジャマイカの土着なレゲエの志向ってことなんですかね。民衆の目線っていうか。
森野:より本物を求めてジャマイカにっていう流れはあるよね。


M-6 斉藤和義「歩いて帰ろう(Jungle Hip Hop Mix)」(5:16)

矢野:1996年のリミックスアルバムの曲です。ダンスホールレゲエの定番フレーズとか入ったヘンな曲。
森野:これは誰がやってるの?
矢野:いや、よくわからないです。
森野:本人名義…?
矢野:本人名義のリミックスアルバムです。いちおうH-jungle with Tと同時期ではあります。
ハシノ:このビートって手弾きしてるのかな?なんかそんなふうに聴こえる。
矢野:これは定番のビートパターンですね。コールド・カットがラキムの「Paid In Full」のリミックスで使って有名になりました。宇多田ヒカルの曲でも使われている。
ハシノ:よくあるブートレグの雑なリミックスで、原曲が揺れてるから打ち込みできなくてビートが変になるやつあるけど、それっぽさを感じた。でも公式なんだよね。変なの。
森野:あ、アマゾンで1円だ!
ハシノ:バブル期にあった、ユーミンとかヤマタツとかを外人が歌う変なCDみたいな匂いもする
森野:ふざけてんのかな…他の曲もリミックスの名前が全然ヒネリがなくておかしいよ。
矢野:本当ですね。パロディ的なノリもあったのか。音ゲーみたいに職人的な人がジャンル名にあてて、それっぽく仕上げた感じかもしれませんね。ノヴェルティ感が強い。
森野:CDが発売されたときの説明コメント見ると「斉藤和義が踊れるものになったことだけは確か」とか書いてあるよ。
ハシノ:それ公式のコメントですか?
森野:いろんなとこに書いてあるからそうなんじゃないかな? おふざけなのかな、まあやりそうな気もする。
ハシノ:まあ当時はマキシシングルの3曲目とかによくわからないリミックスとかよく入ってたよね
矢野:意味のないハウスミックスとかありましたよね!


M-7 MUTE BEAT「Down Train」


森野:これも8分くらいあって結構長い曲なんだけど、大好きな曲で。
矢野:いいですねー。
森野:土曜の昼間にやってる「傑作ワイド劇場」再放送のエンディングテーマだったんだよね。兄から聞いて知ったばかりの頃、テレビから流れてきてビックリしてね。中1くらいだったんだけど、おお!売れてる曲なんだ!と思うじゃん、でも、別に売れてる曲ではないアルバム曲。エンディングっぽい悲しげな感じでしょ。
ハシノ:トランペットの哀愁の部分とか
森野:最後、崖のところで犯人が独白して突き落とそうとしたら、そこに刑事がけつけて捕まってさ。で、そこから崖から遠のく俯瞰の映像が流れるところでエンドロールが流れるの(笑)
矢野:ジャマイカと歌謡曲って相性良いですよね。スカタライツの「リンゴ追分」とかありますし。ムード歌謡のサックスの感じにも通ずる、むせび泣く哀愁のホーンの歌謡曲感。サム・テイラー的なラテンラウンジにも共通するノリ。
森野:トランペットとエコーが合うよね。しかもリズムがタイトだとトランペットが映えるんだよね、ベースがなまっちゃうとラリった感じになるから。
ハシノ:そのへんがドライ&ヘビーとは違うんでしょうね。目指してるところが。
森野:今回、レゲエが入った曲って感じじゃなかったよね。ロックバンドが自作自演でレゲエもやっちゃう!ってのは入らない選曲だった。わりと本物志向。でも、上田正樹はよかったね〜。

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