爆音でかかり続けるよヒット曲#12『何度でもされるべきビートルズ再評価』(ハシノイチロウ)

LL教室のハシノです。
2020年でビートルズ解散からなんと50周年だそうで、『アビイ・ロード』のリマスターなど関連企画が盛り上がってきてますね。
そういえばビートルズの再評価って定期的に何度かされてきてるんだけど、個人的には、1995年。ジョン・レノンの未発表曲を残りのメンバーが完成させた新曲「フリー・アズ・ア・バード」がリリースされたときの世界的な盛り上がりが印象に残っている。そのあと『アンソロジー』の1~3が順次リリースされることになって。
 
当時、わたくし大学生で、自分でバンドを組んで曲を作ってということをやり始めた頃。ビートルズのことはふつうに過去のいろんな洋楽ロックのバンドのひとつとして、認識していた程度で、ベストアルバム(俗に言う赤盤と青盤)はカセットにダビングして持ってるっていうぐらいだった。
 
世の中的にも、この時期の再評価のタイミングで、ビートルズをちゃんと知ったっていう人は実は多いのではないか。いや、存在としてはみんな認識していたんだけど、どちらかというとマリリンモンローとかと同じような、過去のポップアイコンとしてぼんやり捉えていたって感じ。
それが、新曲やアンソロジーをきっかけにいろんなところで特集が組まれて、あらためてミュージシャンとしてちゃんと知った人が多かった。

そう。この時期までのビートルズといえば、何となく愛と平和みたいなメッセージを訴えてたイメージだったりとか、もしくはモノクロ映像の中でキャーキャー言われてるマッシュルームカットのアイドルのイメージが中心で、音楽そのものに対する注目は薄かったような。
それがここで初めて作曲とか録音とか、いろんな面において実験をやりまくった尖ったロックバンドっていう認識が広まったんじゃなかったか。
 
個人的には自分で音楽をつくり始めた頃だったので、ビートルズがどれだけ革命的なことをやってのけたのか?っていう話に特に興味をそそられたもんだった。たとえば、それまではアルバムといえばシングルの寄せ集めという認識で、また、「普段ライブで演奏してる曲をレコードに録音する」っていうのが当たり前だった時代に、アルバムにコンセプトをもたせたり、ライブで演奏する前提ではないアレンジでレコーディングしたりっていうのはみんなビートルズが始めたこと。
 
日本においても、メンバーが作詞作曲して自分で歌うっていうスタイルが新鮮で、影響されてグループサウンズの大ブームが巻き起こり、そこから音楽業界の構造がガラッと変わっていったりもしている。
 
とにかくビートルズがやったことの影響は大きくて、だからこそ「もしもビートルズのことを知ってるのが自分だけっていう世界だったら」という「イエスタデイ」みたいな映画の企画が成り立つんだし、真心ブラザーズは「拝啓、ジョン・レノン」で「ビートルズを聴かないことで何か新しいものを探そうとした」と歌ったわけで。
 
機材とか音楽ビジネスとかいろんな環境が過渡期だった時代に、たった数年間のうちにひとつのバンドがめちゃめちゃたくさんの影響を後世に及ぼしてる。本当に特別な存在なんですよ。
 
昔から野心的な若いミュージシャンの多くは、何か新しいことをやろうとして、「もう全部ビートルズに先にやられてるじゃん!」って、一度ちゃんと打ちのめされるっていう経験をしてきた。
その絶望を味わった上でさらに試行錯誤するから、結果としてロック音楽は豊かな広がりを見せてきたと言っても過言ではない。
これからもそうあってほしいので、若いミュージシャンには常にビートルズをがっつり通ってほしい。
つまり、ビートルズに触れるきっかけは多ければ多いほどいい。
解散50周年の再評価は大いに結構だと思います。


一方、周期的な盛り上がりとは別のところで、常にビートルズのことを考え続けているディープな人たちがいることも重要。たとえば、ラジオ日本で2004年からビートルズと、メンバーのソロ曲だけをかけ続けている「ビートルズ10」っていう番組がある。たまにゲストが出たり企画をやったりもするみたいだけど、基本的にリスナーからの投票に基づいたベスト10を毎週発表し続けるっていう番組。
50年前に解散したバンドのことで毎週毎週ここまで盛り上がれるっていう事実。やはりビートルズは別格だなと思わせられますね。
 
そして、今度この番組でずっとパーソナリティを務めている「謎の音楽家」カンケさんを招いてトークイベントをやります。「LL教室の試験に出ない90年代J-POP 1997年編」と題して、荻窪のベルベットサンというお店でやります。
 
1995年の再評価ブーム以降の、日本のミュージシャンへのビートルズの影響とか、いろいろ深くお聞きしたいと思っています。ぜひお越しください!
 
http://www.velvetsun.jp/new-events/2019/11/10
(このイベントは終了しています)

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