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『クローゼット ZERO』〜その5〜

[➃怜と純子]
*麻生家
純子   板付き
―明転―
純子、書斎のデスクで電話している
純子:理事長、今更そんなこと言われても困るわ。もう各所動き出してるの。あなたは余計なこと考えないで、自分の仕事だけしてなさい。いいわね。(電話きる)・・・まったく。
ノックの音
純子:どうぞ。
怜、入ってくる  昼間と違い、真面目な格好
怜:失礼します。
純子:遅かったわね。あなたもいつまでも遊んでばかりいないで、もうそろそろ将来のこと真剣に考えなさい、もう高3なんだから。
怜:すみません。
純子:あの白鳥って子とも、いい加減に縁を切らないといけないわよ。
怜:美樹生ですか?
純子:あそこのお宅、今はまだ大丈夫みたいだけど、そのうちジリ貧になるわ。
怜:はあ・・そうですね。頃合を見て・・・。
純子:まあいいわ。で、どうだったの?うまくまとめられた?
怜:少し手こずってますが、大丈夫です。なにせバカばっかりなんで。
純子:そう、ならいいけど。(窓から景色を見て)本当、なんにもない街。いいわね?私の代でこの街を変えたいの。ニューヨークに留学してた時に見た景色をこの街で再現してみせるわ。ダンスで町興し、いいと思わない?
怜:いいと思います。
純子:あなたができなければ、あのままダンサーの道に進むのもありだったんだけどねぇ。あの男との結婚が私の人生の唯一の汚点だわ。理事長も今さら尻込みして頼りにならないし、本当、男っていざという時ダメねぇ。
怜:・・・。
純子:(怜の頬を撫でて)怜、あなたは大丈夫よね?私の期待を裏切らないでちょうだい。
怜:わかってます、母さん。
莉奈、入ってくる
莉奈:お母さん、ご飯の準備できたよ!あれ?お兄ちゃん帰ってきてたんだ。ご飯できたよ。
怜:ああ。
純子:莉奈、見ててね。この街を、私の力でブロードウェイみたいにしてあげるからね。そして、その後私は国会にうって出るのよ!
莉奈:すごーい!お兄ちゃん、楽しみだね!
怜:ああ。
3人、ダンス
―暗転―


 
[➄ダンスの練習]
*海老原駅南口
凌、晃一、慎治、ジョー、元気   板付き
―明転―
ジョーを中心に、ダンスの練習をしている
ジョー:違う違う、そうじゃないね!もっとパッション入れて、こうよ!
凌:こ、こうか?(ぎこちない)
ジョー:全然ダメね!凌ちゃんパッションこもってないね!ダンスはパッションよ!
凌:なんなんだよ、パッションって!俺、ダンスなんてやったことないんだからもっとわかりやすく教えろよ!
ジョー:凌ちゃんケンカの時はパッション入ってるね!ケンカの時みたいな気持ちでやってよ。ケンカの時なに考えてるの?
凌:そりゃぶっ殺してやる!って気持ちだよ。こうやってな!(慎治殴る)
慎治:なんで!?
凌:わ、わりー。
晃一:これはまずいぞ・・・ってか本当にやるんだな、ダンス・・・。
元気、黙々と一人で踊っている
晃一:おい、元気。一人で踊ってないで、みんなに教えてくれよ。
元気:・・・こう。(すごい技)
晃一:そんなのいきなりできるわけねーだろ!!どうやってやるか教えてくれよ。
元気:・・・こう。(すごい技)
晃一:だから、「こう。」じゃねーんだよ!やっぱり元気は人に教えるのに向いてないな・・・。
ジョー:パッションよ、パッション!
凌:おら!(慎治に当たる)
慎治:いてっ!!
晃一:ジョーも頼りにならねーし・・・。
慎治:てかよ、ダンスやるんだったら、まずは曲決めなきゃいけねーんじゃねーの?
晃一:曲か・・・確かにな。
凌:曲ならもう決まってるぞ。
晃一:えっ?マジかよ。何の曲?
凌:これだよ。(IPODで曲を流す)
曲:長渕剛の乾杯
晃一:ウソだろ!?
凌:いいだろ、俺が一番好きな歌だよ。
晃一:ダンスに向いてなさすぎるだろ!ダメだよ!
凌:なんだよ、トンボの方が良かったか?
晃一:そういう問題じゃない。
ジョー:じゃあ、これは?マンボーマンボーみんなのマンボーー!(漫画喫茶マンボーの、街中でよく流れている曲です。変えてもらっても全然構いません!)
晃一:ダメに決まってんだろ!
ジョー:日本に来てものすごい衝撃をうけた曲なのに・・・。
晃一:知らねーよ!
慎治:じゃあ・・・
晃一:ダメだ!
慎治:まだ言ってないのに・・・。
晃一:曲は宿題だ。真剣に考えてこいよ。
凌:宿題かよ、聞いただけで嫌な気分になるぜ。
ジョー:晃一、急に厳しくなったね。
慎治:まだ言ってなかったのに・・・。
元気:・・・。(踊る)
晃一:やっぱり、ちゃんと教えてくれる人がいないとできるわけねーよな・・・ってか、本当にダンスやんのかよ。

―暗転―

*海老原駅北口
美樹生、怜、恵介、守、修兵   板付き
―明転―
こちらは、怜を中心に比較的まともに練習
恵介は、ゴリゴリのダンサーの服(MCハマー的な)
そんな中、守は見てるだけ
怜:よし、いったん休憩にしよう。
修兵:そういえば、結局クズ高のやつら、大会参加するらしいですね。
恵介:そうなのかよ?なんだよ、あんなにいきがってたのに、なにがあったんだ?
怜:結局あいつらも、廃校にはビビってるんだろ。
美樹生:情けねー。俺はケンカでやりやっても良かったけどな。
恵介:でもよ、やってみたらダンスって思ってたより楽しいな。これでもっと女にもてちゃうな~。な?美樹生。
美樹生:俺は別にそういうのはいいから。
恵介:俺はかっこいいと思うぞ。
守:そういえば、怜さんの妹もダンス出来る人好きなんですよね?
美樹生:!?
怜:ああ、あいつも昔からダンスやってるし、それでウメジュンとかいうアイドルのことも好きなんだろ。
美樹生:・・・よっし、怜、練習やるか?
怜:?今休憩にしたばっかりだろ。
美樹生:そうか?まあでも、クズ高の奴らなんかに負けるわけにはいかないからな。
恵介:大丈夫だよ!あんなバカな奴らにダンスなんかできねーって。余裕だぜ、YO-YO。
怜:いや、わかんねーぞ。
恵介:は?
怜:あいつら、頭は空っぽだが、ケンカばっかりやってるだけあって基礎体力はあるからな。いい指導者がいれば・・・。
恵介:マジかよー?ま、でも指導できる奴なんてもっといねーだろ。
怜:確かにな。
恵介:余裕余裕!RAKU-SYOU!あっ、修兵、お前足引っ張んじゃねーぞ。
修兵:僕なりに頑張ってるんですけどね・・・。
恵介:なんだよ、辛気臭せーなー。ほら、YO-YO!
守:修兵さん、体重が右足に偏り気味なんで、ちょっと意識して左に傾けてみたらどうでしょう?
修兵:?
恵介:おー、守、言うねー。
修兵:(ちょっとムッとして)守、口で言うのは簡単だけどよ、お前できるのかよ?
守:あ、はい。(やろうとする)
美樹生:おい、お前ら、あんまり守いじめんなよ。
恵介:別にいじめてるわけじゃねーよ。
修兵:そ、そうですよ。
美樹生:守は守なりに、役に立とうとしてくれてんだろうが。な?守。(頭を撫でる)
守:はい・・・すみません、生意気なこと言っちゃって。・・・今日は僕、帰りますね。
美樹生:おう、気をつけてな。
恵介:気をつけろYO!
美樹生:お前ラップ下手すぎじゃないか?
修兵:たしかに。
一同:(笑う)
守:失礼します。みなさん、頑張ってください!(ガッツポーズ)
     守、ハケ
恵介:おー、じゃーなー。
美樹生:守!もう一回今のやってくれ!!!
―暗転―



つづく

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