見出し画像

『クローゼット ZERO』〜その10〜

[⑭怜、怒る]
*麻生家
     純子、怜   板付き
怜:どういうことですか!?
―明転―
     怜、純子に詰め寄る
怜:なんであんなことしたんですか!?
純子:なにをそんなに怒ってんのよ?
怜:どうしても、僕らの邪魔をしたいんですか?バイクではねようとするなんて・・・。
純子:バイク?だから、なんの話かわからないって言ってるでしょ。もういい?私忙しいのよ。
怜:昔の母さんはこんなことしなかった・・・。
純子:昔の話なんてやめてよ、私は前に進んでるの。あなたもいい加減大人になりなさい。
怜:目的のためには手段を選ばない大人にですか?
純子:それが子供だって言ってるのよ。はっきり言ってあげるわ。九頭竜高校は、この街にとって害虫なのよ。害虫は駆除しないといけないでしょ。
怜:・・・。
純子:わかったならもう行って。言ったでしょ?忙しいのよ。
怜:もういい・・・。
純子:なに?
     怜、髪をかきあげ、ネクタイもゆるめ、いつもの格好に
怜:もうたくさんだ・・・あんたの計画・・・ぶっ潰す!
純子:なに言ってるのよ。いったいあなたになにができるって・・・
     怜、胸ポケットから書類を取り出し、ブチまける
純子:これは?
怜:あんたが今までしてきた不正の数々だ。俺の仲間が集めた。
純子・・・・(書類を見る)
怜:これ以上、俺たちの邪魔をするな。
     怜、出て行く
純子:困った子ね・・・。(書類を見て)こんなやり方で集めた証拠なんて、なんの役にも立たないのに。・・・それにしても(微笑む)あの子の口から仲間なんて言葉が出てくるなんてね。
     純子、電話を取り出しかける
純子:理事長、余計なことしてくれたわね。バイクではねようとするなんて、もしものことがあったらどうするつもりなの?言い訳はいいです。あなたの後任はもう見つけてありますから。それじゃ、さようなら。(電話切る)・・・楽しみだわ。
―暗転―


 
[⑮約束]
*海老原駅駅前
―明転―
     凌、出てくる。足元見ながらステップの確認をしている
     莉奈、反対側から出てくる、凌に気付く
莉奈:あっ!
凌:ん?(莉奈に気付き)うわわわわ!!(どこかに隠れようとするが、そんな場所はない)
莉奈:九頭竜高校の、比留間さんですよね?
凌:えっ?どうしておれ・・僕の名前を・・・
莉奈:この街じゃ有名人じゃないですか。・・・あんまり良くない意味でですけど。
凌:!!!(ガーン)
莉奈:あ、でも今はダンス頑張ってるんですよね?
凌:そそそ、そうなんです!ケンカはもうやめました!
莉奈:うふふ、偉いですね。
凌:!!!(ハッピー!)
莉奈:兄も褒めてました。あいつはなかなか筋がいいって。
凌:お、お兄様が!?・・・(小声)あいつ、いいとこあんじゃねーか。
莉奈:来週ですよね?ダンスの大会。
凌:そ、そうです。来週です。
莉奈:私も観に行くんで楽しみです!
凌:えっ!!!!
莉奈:それじゃあ、頑張ってくださいね!
     莉奈、行こうとする
凌:あ、あの!
莉奈:はい?
凌:あ、来週の大会で、俺たちが勝ったら・・・
莉奈:?
凌:俺と・・・
NA:(美樹生)お互い全力でやろうじゃねーか。
凌:ぐ・・・。
NA:そして、勝った方が莉奈ちゃんを手に入れる!比留間、勝負だ!
莉奈:?どうしたんですか?
凌:い、いや・・・気をつけて帰ってくださいね。
莉奈:はい、ありがとうございます!それじゃあ、さようなら!
     莉奈、行こうとする
凌:あ、あの!
莉奈:はい?
凌:・・・俺たちが勝ったら・・・
莉奈:?
凌:俺と・・・
NA:比留間、抜けがけすんじゃねーぞ。
凌:はっ!な、なんでもないです。
莉奈:?そうですか、それじゃあ。
    莉奈、行こうとする
凌:あの!
莉奈:はい?
凌:やっぱり、俺と・・・
NA:比留間・・・
凌:やっぱいいです・・・。
莉奈:はあ。じゃあ。
     莉奈、行こうとする
凌:あの!
NA:しつけーぞ!!!
凌:はっ!すまん!
莉奈:?大丈夫ですか?
凌:!!!だ、大丈夫です!ダンス、頑張ります!
莉奈:ふふふ、比留間さんて、おもしろい人なんですね。
凌:え?
莉奈:本当に頑張ってくださいね!応援してますから!
凌:は、はい!!!
     莉奈、ハケ
凌:・・・やってやるぜ!うおー!!!!
―暗転―
 
[⑯大会に向けて]
     守、元気、板付き
―明転―
     二人、ダンスバトル
守:元気さん、本当に上手ですよね。僕が教えられることなんにもないですよ。
元気:・・・(ドーナツを取り出し、渡す)トット。
守:あ、ありがとうございます。
     恵介、ジョー、来る
     ダンス練習しながら
ジョー:恵ちゃん、その服もイカしてるね!
恵介:だろ?お前のもなかなかいいじゃん。
ジョー:だよね!?恵ちゃんならわかってくれると思ったよ!
     修兵、ビンをたくさん持って通り過ぎる
―暗転―

     美樹生、凌   板付き

―明転―
美樹生:なんだよ、話って。告白でもする気か?
凌:・・・俺のこと、1発ぶん殴ってくれ。
美樹生:は?なんだよ、それ。
凌:けじめだよ、けじめ。
美樹生:なんのけじめだよ?
凌:いいからやってくれ!このままじゃ俺は自分を許せねーんだよ。
美樹生:よくわかんねーな。ケンカはやめなんじゃねーのかよ?
凌:これはケンカじゃねー。
美樹生:じゃあなんだよ?
凌:うるせーな!ゴチャゴチャ言わずにやりゃあいいんだよ!頼む!
美樹生:てめー、それが人に頼む態度かよ!上等だ、やってやるよ!気絶してもしらねーぞ。
凌:よし、こい!(歯を食いしばる)
美樹生:おらー!(ボディ殴る)
凌:グホッ・・!!・・・なんで、腹なんだよ(崩れ落ちる)
美樹生:え?
凌:普通・・顔だろ・・・(気絶)
美樹生:・・・なんかまずかったのか?
     晃一、来る
晃一:(倒れてる凌に気付き)うわっ!おい、凌!どうしたんだよ!?
美樹生:いや・・・
晃一:テメーがやったのか!?
美樹生:そうなんだけど・・・
晃一:テメー!!(美樹生に掴みかかる)
美樹生:待て待て!落ち着けよ!こいつに頼まれたんだよ!
晃一:あ?なんだよそれ?
凌:俺だってわかんねーよ!いきなり殴れってこいつがよ。
晃一:(手を離す)そうか。
美樹生:え?信用すんのか?言ってて自分で嘘くさいって思ったくらいだぞ。
晃一:まあ、こいつだったら言いかねないからな。なんか理由があんだろ。
美樹生:なあ、こいつなんなんだよ?わけわかんねーこと急に言い出すしよ。
晃一:なにって、ただのバカだろ?それ以上でもそれ以下でもねーよ。あ、ケンカがバカ強いバカか。
美樹生:なんだそれ。こんな奴、一緒にいたら大変だろ。お前が1番苦労しそうだけどな。
晃一:まあ、大変っちゃあ大変だな。ただ、俺はこいつの線路になるって決めたから。
美樹生:線路?
晃一:こいつはさ、ガキの頃からバカでよ、バカがバカ強い親に格闘技なんて仕込まれたもんだから手ぇつけられなくてな。
美樹生:親に格闘技・・・。
晃一:俺なんかはよ、ガキのころはそりゃあ情けなくてな、こいつにいじめられてピーピー泣いてばっかだったよ。
美樹生:意外だな。
晃一:こいつのこと大っ嫌いだったもんなぁ。冗談じゃなく、本当の悪魔だと思ってたからな。
美樹生:そうか。
晃一:でもよ、ある日、こいつと歩いてる時に、俺の弟が上級生にいじめられてるの見かけたんだよ。俺はビビっちまってなにもできなかったんだけどよ、こいつ、すげー勢いでその上級生に飛びかかってボッコボコにしちまったんだ。相手5コ上だぜ?
美樹生:そりゃすげーな。
晃一:その時も悪魔だって思ったけどよ、それ以上に自分が情けなくってよ。兄貴のくせになにもできなかった自分がさ。気づいたら血まみれのコイツに泣いて頼んでたよ。ケンカ教えてくれって。悪魔との契約だな。
美樹生:なるほど。
晃一:そんで、こいつとちゃんと付き合っていってわかったんだよ。こいつは悪魔なんかじゃなくて、ただの暴走機関車なんだって。こうと思い込んだらそっちしか見えない暴走機関車。汽車ってよ、線路がないとまっすぐしか走れないだろ。だから、俺はこいつの線路になろうって決めたんだ。俺にはそれくらいがちょうどいいしな。楽しく線路やらせてもらってるよ。
美樹生:・・・。
晃一:まあ、この汽車、ブレーキもぶっ壊れてやがるから大変だけどな。
美樹生:・・・・。
晃一:やべー!なんか一人で語っちまった。はずっ!
美樹生:・・・(肩を震わせている)
晃一:おいテメー!なに笑ってんだよ!忘れろ!今すぐ忘れてくれ!
美樹生:(号泣)うおーーー!!!いい話じゃねーか!
晃一:泣いてた!
美樹生:感動したぜ!お前らの友情!最高だよ!!感動した!
晃一:あ、ああ。サンキューな。
美樹生:俺らも負けてらんねーよ!俺と怜の話も聞いてくれよ。
晃一:い、いや、また今度ゆっくり聞かせてもらうよ。(行こうとする)
美樹生:(ついて行く)そんなこと言わねーでよ。聞いてくれよ。あ、こいつ、このままでいいのか?
晃一:ああ、大丈夫だろ、そのまま寝かせてて。なんせバカだからな。じゃあな!(ハケ)
美樹生:おい、聞いてくれって!怜の野郎、昔はおもらしばっか・・・(追いかける)
     取り残される凌
凌:(寝たまま)・・・・・もう起きてるっつーの。・・・あの野郎、人のことバカバカ言いやがって・・・グスッ。(感動してる)
―暗転―



つづく

もし良ければサポートお願いします。今後の生きていく糧にさせていただきます。