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『クローゼット ZERO』〜その7〜

[➇純子と怜]
*麻生家
純子、怜   板付き
―明転―
純子:どういうことなの?
怜:なにか問題ありますか?
純子:あるに決まってるでしょ!なんで九頭竜高校と合同練習することになってるのよ?
怜:それは・・・色々ありまして。でも、問題ありません。
純子:・・・あのね、怜、あなたは負けることはゆるされないのよ。万が一あなたが負けるようなことがあったら、今まで鳳凰学園につぎ込んできた寄付金が無駄になってしまうのよ?
怜:わかってます。母さん、僕を信用してください、母さんをガッカリさせるようなことにはしませんから。失礼します。
怜、ハケ
純子:・・・あの子は頼りにならないみたいね。(電話をかける)
―暗転―


 
[➈陰謀]
*海老原駅南口
恵介、ジョー   板付き
―明転―
恵介とジョー、二人で練習
ジョー、恵介と同じ服を着ている
凌、晃一、慎治、元気、来る
凌:なんだお前ら、早いな。
ジョー:負けるわけにはいかないからね。
晃一:ってか、ジョー、その服どうしたんだよ?
ジョー:イカしてるでしょ?
恵介:わかる奴にはわかるんだな、このセンス。
晃一:いや、ダサいだろ。
     修兵、守、来る
守:おはよーございます!
晃一:おー、先生!ダンスのレッスン頼むぜ。
守:はい、よろしくお願いします!
     元気、守の前に行き、挑発的な態度
守:えっ?
元気:負けない。
凌:元気、どうしたんだよ?
修兵:なんだこいつ・・・。
ジョー:元気ちゃんがこんなに感情むき出しなの珍しいね。
恵介:これでむき出しなのか?
元気:・・・負けない。
晃一:いや、元気、お前もダンス十分うまいけどさ、さすがに先生には勝てないだろ。
守:元気さんもすごい上手だと思いますよ。
元気:かわいさなら負けない。勝負しろ。どっちの方がかわいいダンスできるか勝負。
晃一:いやいやいや、無理無理!
凌:元気にこんな一面があったなんてな。
ジョー:意外すぎるね。
慎治:元気、あきらめろ。
元気:勝負しろ。
晃一:わかったよ、そこまでいうならやってみろよ。どっちがかわいいかだな。・・・じゃあ、元気、ちょっとやってみろよ。どっちがかわいい笑顔か勝負だ。
元気:わかった。
晃一:よし、じゃあいくぞ。3・2・1、はい。
元気:(ダンスして決め、ぎこちない笑顔)
晃一:ぎこちな!なんだよそれ、笑ってんのか?怒ってんのか?はたまた泣いてんのか?こんな複雑な表情俺初めて見たぞ!
恵介:なんか見てると不安になってくる顔だな。
晃一:もういいよ。じゃあ、次は先生の番な。やるまでもないと思うけど・・・。じゃあ先生、お願いします!
守:で、できるかな・・・いきます!(ダンスして決め、超絶素敵な笑顔)
一同:か、かわいいーーー!!!!
     一同(元気と修兵以外)、悶える
晃一:これこれ、こういうのね!なにこの笑顔!まぶしすぎるぜ!先生、もういい!これ以上見てたらまぶしさでみんなの目がつぶれちまう!
     守、笑顔やめる
晃一:ハアハア、危ないとこだったぜ・・・。な、元気、わかっただろ?かわいさに関しては、お前と先生じゃ天と地だ。
元気:・・・・かわいい。(守に抱きつく)
晃一:おい!!
元気:トット!!
凌:どうしちまったんだよ。
慎治:感情が不安定すぎるな。
元気:トットー!!
晃一:おい、元気、その、トットってなんだよ?
元気:昔・・飼ってた・・・亀。
晃一:亀?
元気:友達・・毎日いっぱい・・・おしゃべりしてた。
恵介:亀と?
慎治:いっぱいおしゃべり?元気が?
晃一:そのトットがなんなんだよ?
元気:家の前で・・・散歩・・・車・・ぺしゃんこ・・・。
晃一:え?
元気:俺の・・せいで・・トット・・死んだ・・俺がトット殺した・・しゃべり相手・・・いない。・・・しゃべりたくない・・・
晃一:元気・・・だからお前・・・
元気:(守に抱きつく)トットーーー!!!ごめーん!
守:うわっ。
晃一:元気!先生はトットじゃないから。
元気:わかってる。
晃一:え?
元気:こいつ・・・かわいい・・・ちょっとトット・・思い出した・・・でもこいつ、トットじゃない。
晃一:意外と冷静だったのね。
元気:わかってる。・・・でも・・・こいつ、家で飼いたい。
恵介:おい、こいつが一番あぶねーじゃねーか!!
晃一:元気、とりあえず落ち着け。先生はペットじゃねーんだ。(元気を引き剥がす)
元気:わかってる・・・ただの冗談。
晃一:なんで急に冷静になるんだよ。お前の冗談わかりにくすぎるよ。ブランクありすぎだろ。
元気:・・・。
晃一:おい、元気。
元気:・・・。
晃一:急にもとに戻った!なんなんだよ。・・・わりーな、先生。
守:大丈夫です。なんかみなさん、思ってたより愉快な人たちなんですね。クズ高って、もっと悪魔みたいな人の集まりだと思ってました。
凌:悪魔は言い過ぎだろ。
ジョー:いや、ケンカの時の凌ちゃんは悪魔そのものね。
慎治:たしかにな、こんな顔してるからな。(凌の顔真似、バカにしてる感じ)
凌:そんな顔してねーだろ!(殴る)
慎治:いてっ!ケンカ禁止じゃねーのかよ・・・。
守:おもしろいなぁ。
修兵:守、あんまり馴れ合うなよ、どうせ短い付き合いなんだからよ。
守:修兵さん・・・。
修兵:こんな遊んでるヒマあったら、ちょっとでも練習した方がいいんじゃないのか?
凌:なんだよ、水差しやがって。心配しなくても、お前らのことはきっちりぶっ潰してやるよ。ダンスでな。
修兵:まあ、無駄な努力だとは思うけどね。
慎治:なんだよ、やってみねーとわかんねーだろ。
修兵:なにも知らない奴は能天気でいいよな。
一同:??
晃一:・・・どういうことだ?
修兵:本当は黙ってようと思ってたけど、かわいそうだから教えといてあげるよ。この勝負、俺たちホー学が勝つ。それはもう決まってるんだ。出来レースってこと。
一同:!!!!!!
凌:なんだよそれ!(恵介と守に)お前らも知ってたのか!?
恵介:し、知らねーよ!今初めて聞いたよ。
守:僕もです・・・。
恵介:修兵、それホントなのかよ?
修兵:はい、今日職員室を盗聴してたら、理事長と校長がそう話してましたから。
晃一:盗聴?
修兵:(ポケットからスマホ取り出し)こういうどこにでもある携帯も、僕の手にかかれば簡単に盗聴器になっちゃうの。ちょこっといじって周波数さえうまく合わせれば電話の会話を盗み聞きするなんて簡単なんだよ。まあ、君らにこんなこと言っても・・・
凌:うるせー!!!
修兵:!!
凌:そんな御託はどうでもいいんだよ。その、出来レースだっていうの、本当なんだな?
修兵:だから言っただろ、理事長と校長が・・・
凌:ふざけやがって!!(行こうとする)
晃一:おい、(凌を止める)どこ行くんだよ?
凌:決まってんだろ、殴り込んでやるんだよ!
晃一:なに言ってんだよ!落ち着け!
凌:落ち着いてられるわけねーだろ!(行こうとする)
クズ高メンバー、凌を取り押さえる
     恵介、守はショックを受けてる
修兵:殴り込んだところで自分たちの首をしめるだけだけどな。
凌:テメー!!(修兵に掴みかかる)
修兵:ヒッ!
晃一:やめろって!
    もみ合いになる
    美樹生、怜、来る
美樹生:おい、なにしてんだよ?やっぱりケンカでケリつける気か?
怜:これだからバカは困る。昨日の話、もう忘れたみたいだな。
凌:なんだとコラ!!!(修兵から手を離し、怜の方に向かう)
晃一:凌!(止める)
修兵:怜さん、こいつら、現実受け入れられないみたいなんで教えてやってくださいよ。
怜:?なんの話だ?
守:今回の勝負が出来レースで、僕らが勝つことが決まってるって、修兵さんが・・・
美樹生:はあ?なんだよそれ!
怜:!
修兵:すいません、せっかく怜さんがうまいこと話進めてたのに、喋っちゃいました。
一同:!!??
恵介:怜が話を?
凌:テメーもグルってことか?おい!
怜:・・・・。(考え込んでいる)
凌:なんとか言えコラ!
修兵:怜さんが、市長の指示で動いてんですよね?
怜:・・・クソ。
美樹生:怜が?
恵介:マジかよ・・・
     ホー学、戸惑い
凌:テメー!!(怜に殴りかかろうとする)
     美樹生、凌の腕を掴む
美樹生:おい、ここで手出したら、俺も止まらねーぞ。
凌:あ?テメーんとこのが俺らはめてたんだろうが!
美樹生:まだ怜の言い分を聞いてない。それからでもいいだろ。
凌:ちっ。(腕を振りほどく)
美樹生:怜、どうなんだよ?
怜:・・・・。
守:怜さん・・・。
怜:・・・バカになに言っても無駄だろ。
     怜、走り去る
恵介:おい、怜!!
凌:逃げやがった。やっぱりあいつグルだったんじゃねーか!
晃一:クソが・・・。
凌:おい、このケジメ、どうつけてくれんだよ?
美樹生:・・・修兵、今の話、怜に確認とったのか?
修兵:え?
美樹生:確認とったのかって聞いてんだ。
修兵:えっと・・
美樹生:どうなんだ!!!!
修兵:と、とってないです。
美樹生:お前、怜がこんなことする奴だと思うのか?
修兵:・・・。
凌:おい、無視してんじゃねーよ。
美樹生:うるせー!!・・・修兵、怜は俺たちの仲間だろ。よく考えろ。
     美樹生、行く
恵介:お、おい、美樹生!
     恵介、美樹生のあとを追う
守:・・・(クズ高メンバーに)すみません。
     守、あとを追う
修兵:・・・・。
凌:あーあ、なんか冷めちまったな。なんなんだよ、これ。
晃一:これだから大人は信用できねーんだよ。
ジョー:僕達ただのピエロだったね。
元気・・・。
凌:行くぞ。
     凌、ハケ
     晃一、ジョー、元気、凌に続く
     慎治、修兵の近く通って立ち止まる。
慎治:ん?なんだこれ?
     慎治、ポケットから写真だす
慎治:やべーやべー、また癖でやっちった。これ、お前のか?(写真見せる)
修兵:!?いつに間に?
慎治:(写真見て)なんだよ、野郎ばっか集まって記念撮影か?
修兵:勝手に見んなよ!(奪い取ろうとする)
慎治:(かわして)いいだろ、減るもんでもねーし。それにしても、お前なんでこんな隅っこにいんだよ?もっとみんなのとこ寄ればいいじゃねーか。
修兵:・・・うるせーな。
慎治:ま、気持ちはわかるけどな。
修兵:?
慎治:お前、どう見てもケンカ強そうには見えねーもんな。だからこんなもん持ち歩いてるんだろ?(ポケットから修兵の武器取り出す)
修兵:いつの間に!?
慎治:俺もなんだよ。
修兵:は?
慎治:俺もケンカはからっきしでさ。みんなに引け目感じてたよ。いつか仲間から外されんじゃねーかっていつも隅っこでビクビクしてた。凌のことなんて、おっかなくてろくに目ぇ見て話せなかったからな。ご機嫌取ろうと、なんかかっぱらってみんなに貢ごうとしたり。
修兵:え・・・。
慎治:でもよ、そんなのなんの意味もなかったわ。逆に凌の野郎にぶっ飛ばされたよ。なめんじゃねー!ってな。そん時、おっかなかったけど、初めて凌の目まともに見たんだよ。そしたらよ・・・クックック。
修兵:なんだよ?
慎治:クックック。あいつの目元にでっけー目クソついてんだよ!最高だろ?ハーッハッハッハ!(爆笑)
修兵:・・・悪いんだけど、なにが面白いのか全然わかんねーや。
慎治:バカお前、自分ぶっ飛ばした奴の・・クック・・目元に・・クック・・め、め、目クソだぞ!ダメだ!ウケるー!(爆笑)
修兵:なんなんだよ・・・。
慎治:ハー、そん時も爆笑しちゃって凌にもう一発ぶん殴られたけど、もう怖くはなかったな。なんてったって・・・め、目クソブハーーー!!!(爆笑)
修兵:あ、あんた結局なにが言いたいんだよ?
慎治:え?言いたいこと?そんなの知らねーよ!とにかく、あんな鬼のようにつえー奴にも目クソは平等ってことだな。
修兵:意味わかんねーよ。
慎治:意味なんてわかんなくていいんだよ。それよりよ、麻生の野郎はマジで俺らをはめたのか?
修兵:それは・・・もうよくわかんねーや。それに、もう俺のことなんて許してくれねーだろうし。
慎治:そういうもんか?謝ればいいじゃん。
修兵:美樹生さんの怒りよう見ただろ?そういうもんだよ。
慎治:そっか。・・・おい、想像してみろよ。お前んとこの大将に、目クソついてるとこ。でっけーのな。
修兵:は?なに言ってんだよ
慎治:いいから想像してみ?
修兵:なんなんだよ・・・美樹生さんの・・・(想像してみる)・・・クッ・・・アーッハッハッハ!(爆笑)
慎治:だろ?
修兵:(笑いながら)美樹生さん・・・あんな・・・クールな・・・顔に・・・め、目クソ!ブワッハッハッハー!やべー!止まらねー!(笑い続ける)
慎治:・・・。
修兵:ヒーッヒッヒッヒー!め、目クソー!あれ?よく見たら・・・は、は、鼻毛―!!グハー!!!な、なんで鼻毛まで出てんだよー!おもしろすぎ、すぎるー!・・・ハッハッハ・・・(笑いすぎて過呼吸)く、苦しー!
慎治:おい!笑いすぎだ!なんだお前!なに勝手にその先まで想像してんだよ!
修兵:・・・フー。(落ち着く)あー、久々にこんな笑った。
慎治:いつもビクビクしてるからだろ。
修兵:・・・次会った時、目ぇ見て謝るよ。怜さんにも・・・
慎治:ああ、そうしろ。
修兵:・・・・れ、怜さんにも目クソー!!ブハー!!!(爆笑)
慎治:もういいよ!
―暗転―



つづく

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