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BACKGROUND MUSIC of BGM:江本祐介×三浦直之

『BGM』の音楽を担当するだけだったはずが、いつの間にか俳優としても出演することになっていたミュージシャン・江本祐介。「音楽」の作品でもあるという『BGM』の劇中歌はどのようにつくられたのか。作詞・作曲という関係でこれまでも共作を行ってきた三浦と江本のふたりが『BGM』と音楽とドライブについて語った。※一部、『BGM』の内容に触れる部分がございます。ご注意ください。(構成&写真:もてスリム)

俳優としての江本祐介

三浦:今回、今までやってきた一代記とは少し別のものをやりたくて、楽しい雰囲気のものをつくれたらいいなと思ってたから、音楽を誰かにお願いしようと思ったんだよね。音が記憶を立ち上げてそのまま空間としての背景を立ち上げる「BGM」ってイメージが出てきたんだけど、音楽を誰にお願いするか考えたときにやっぱりキャッチーでポップな作品にしたかった。その時に江本さんが浮かんできたから、江本さんに声をかけたって感じ。

江本:どのタイミングで俺を誘おうって決めてたんですか?

三浦:去年の8月にいわきで上演した『魔法』で「ライトブルー」を使わせてもらったときにはもうこの公演のことを考えていたから、江本さんにお願いしようっていうことも考えてた。『ロミオとジュリエットのこどもたち』のときに三浦康嗣さんと音楽をつくったことはあったけど、ロロとして誰かに音楽を頼むのは初めてだから、本公演よりも前にクリエイションしておきたいなというのがあって。去年の11月に『ひらひらの』で音楽をお願いしたときは、一緒につくる感じを共有しておきたいなと思ってたんだよね。

江本:あの時はだいぶそれを意識してやってましたよね。

三浦:音楽をつくってもらうことが決まって、最初は出てもらう予定じゃなかったんだけどオーディションの時に歌の審査があったから江本さんにも来てもらってたんだよね。それで合間に江本さんにも演技してもらったらそれがすごいよかったから出演してもらいたいなと。これまでロロの男性メンバーだと亀島(一徳)くんがよく歌ってたんだけど、それとは違う歌声を探していったときに江本さんが一番よかったんですよ。甘い声で。俳優として参加してくれると、常に稽古場にいるから音楽の相談ができる時間も増えるなという下心もあったんだけど(笑)。同じ空気を共有したかったからね。

江本:それはそうですよね。これまで演劇ってどういうふうにつくってるのか全然知らなかったですもん。

インストより歌モノ

江本:結局今回は10曲くらいつくってるのかな。全部歌モノだけど、普段はラップが挟まる曲が多いから全然つくり方が違うんですよ。俺としては歌モノつくる方が楽しいからいいんですけど。

三浦:『BGM』ってタイトルだし、現実の場所に根差しているから、理由なく音楽がかかるのは成立しづらいなと思って。たとえばカーステから流れてくるようなリアリティをキープしようとすると、インストよりも歌モノの方がいい。オリジナルなのにどこかに存在していたかのような曲にしたいなと思ってたから。昔はサザンオールスターズの「いとしのエリー」みたいにインパクトのある曲をよく使ってて。J-POPってすごく印象が強いからそれを利用してみたり、逆に異化作用を生めるように使ってみたりしてたんだけど、そうじゃない音楽の使い方をしてみたくて今回はオリジナルにしたんです。

江本:今回の俳優さんはみんな声がいいんですよね。最高。プロデュースしたいくらいですよ(笑)。

三浦:事前に公開していた「サマーバケーション」は初めて曲先行でつくって後から俺が歌詞をつけた曲でしたね。自分としてはそれが結構新しかった。

江本:俺が歌ったデモバージョンと俳優の人が歌ったバージョンだと全然ニュアンス違いましたよね。

三浦:ね。江本さんが歌ったときは山下達郎感あったのに。

江本:俺はSuchmos意識して歌ってましたけどね。

三浦:そうだったの!?

江本:セクシーな感じでね。ちなみにこれ、歌割りとしてはAメロがロロのメンバーでBメロは客演の3人で担当してるんですよ。サビは全員。色々割り振ってみたんですけど、最終的にそうなったっていう。

三浦:へー、面白いね。

江本:ただ、録音したときにみんな緊張しまくってて。声が震えるくらい緊張してたのが意外だった。緊張するんだ!って思って。普段演技しているときは全然緊張しないのに。歌うときの方が緊張するんだっていうのは不思議な感じでしたね。

シーンから言葉が生まれる

三浦:江本さんは演劇の稽古場ってどうですか?まあこれが普通の稽古場ではないと思うんですけど。

江本:俺、ミュージシャンなのにステージに立つのがすごい苦手だから、みんなの姿を見てると勉強になりますね。ミュージシャンの人ってステージ上の立ち振る舞いがうまいじゃないですか。俺はそれを身につけてこなかったから。それをしてるのが楽しい。

三浦:演技についてはどう?

江本:全然わからないから、「三浦さん教えてくれ!」って思いながらやってる。

三浦:ははは笑

江本:曲つくるときもそうなんですけど、仕組みがわからないと何もできないから「どうすればいいんだ!」ってなっちゃうんですよ。

三浦:演技に関してはリアクションで動いていくのがいいなとは思っていて。「いつ高」シリーズを始めた頃からそういう気持ちが強くなってるんだけど。

江本:会話が、ですか?

三浦:そう。こういうふうに言ってほしいセリフがそう言えてもらえてないときは、その人自身じゃなくて周りの環境に原因があるんだと。外部の状況を変えることで演技をつくれたらいいなと思っていて。感情とか気持ちより、こういう場になったからこういう言葉が出てくるみたいなことができたらいいなと最近は思ってる。

江本:それって機械が動くみたいな感じ?

三浦:そうそう、歯車みたいな感じで。ずっと連動して動いてくみたいな。

江本:俺がそんなに演劇観てないからっていうのもあるけど、なんか不思議ですよね。会話してるのが。つくられた会話とかわけわからんわ、と。

三浦:でも、歌ってるときはどうなんすか?何か考えてる?

江本:声の響かせ方とか考えてますかね。

三浦:それって演技と近いと思うんですよ。語尾を伸ばすとか伸ばさないとか、ちょっとした間で印象が変わるのは演技と一緒ですよね。歌ってる本人がどう思ってるかは別として、歌い方によって受け取られ方が変わるわけだから。

江本:あー、そこは唯一演じてる部分なのかも。

ドライブの「空気感」を描く

三浦5月に東北で一緒にフィールドワークをしたけど、その影響は今回結構大きい気がする。江本さんともグッと仲良くなれた気がするし。それ以前は仕事感覚が強かったから。

江本:俺は仕事する前に三浦さんと知り合ったと思ってたから、あんま意識は変わってないですけどね(笑)。でも、フィールドワークの影響は作品見てて感じます。

三浦:場所とかはあの時行ったところが出てくるんだけど、フィールドワーク自体が作品のコアな部分にどんな影響を与えたかは上手く言えないんだよね。空気感て感じかなあ。車中の空気感。

江本:オープニングのシーンは特にそんな感じしますね。

三浦:ドライブしてるときの感覚ね。空気感とか質感というのを描きたいなという思いはあって。いつもロロでやっていることと違うからすごく難しいんだけど。ドライブの外側に漂っているものを描きたいなとは思ってる。

江本:独特ですもんね、車って。個室だし。しかも、音楽が鳴ってるときもあれば外のノイズがうるさいときもある。微妙に喋りづらいっていう。

三浦:ドライブの印象として残ってるのは、沈黙が普通になるってことなんだよね。俺は普通誰かと一緒にいると間がもたないのを恐れるんだけど、ドライブだと沈黙が自然になったり居心地がよくなったりする。後ろの座席と前の座席が分断されてる感じとかも独特じゃない?

江本:あのラインを越えて盛り上がる瞬間もあれば、越えられないときもあるっていう(笑)。なんなんですかね。車の時間を共有してる感じって、行く場所だけじゃなくて休憩するタイミングも一緒っていうのが好きなんですよ。サービスエリアに寄るときとか強制的に休憩しなくちゃいけなくなるのがいいなって。

三浦:そういうことって他にないですもんね。密室空間っていうのが大きいのかなあ。だから、ドライブのときのコミュニケーションを描きたいという気持ちがすごくあるんですよ。そういう空気感みたいなものを拾っていけたらな、と。

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