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2024年入学 北大ロー民法 再現答案

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1.問題文 民法

2.答案例


再現度80〜85%

[ 解答例 ]

問1 所要時間65分

第1 A DおよびCD間の法律関係

1.(1)AはDに対して、Bとの売買契約の解除による原状回復請求権に基づき、本件土地につき、建物収去土地明渡し請求をすることが考えられる。
(2)上記請求が認められるには、①本件土地につき、Aが所有権を有していること、②Dが本件土地を占有していることが必要である。
(3)まず、Dは、本件土地に本件建物を建てていることから、本件土地を占有しているといえる(②)。

2. 次に、Dは、AB売買により、Aは所有権を有していないことを反論することが考えられる。
(1)まず、本件土地の所有権は、AB売買により、原則Bに移転する(555条)し、BC売買によりCに移転する。Dは、Cとの間で本件土地の賃貸借により、建物を建てることが予定されている。そうすると、Dは本件土地の上に、正当に建物を建てる権利があると思える。
(2)ここで、Aは、本件土地の売買契約の解除により、Dは建物を建てる権利を有していない旨の反論が考えられる。
(3)民法545条但書の「第三者」には、解除の原因となった法律行為を基礎として新たな法律上の権利を有することに至った第三者をいうと解する。本件では、BからCへと本件土地の所有権が移転し、Dへと移転している。そして、その後に、AB売買が解除されている。また、AB売買につき、解除原因についての善意は不要である。
(4)次に、545条の趣旨は、解除者に帰責性無くして解除されると解するから、登記をいつの時点でしたかで第三者として保護をするかどうかを決する。まず、Cは、本件土地につき登記を有していないため、Aから解除に基づく原状回復請求による、所有権の主張を対抗されてしまう。そうすると、Cは、Aに所有権を対抗することができず、Aが所有権を有することになる。
(5)よって、上記の結果から、Dは、Aが本件土地につき所有権を有していないことを反論することはできないといえる。

3.そこで、Dは、Aが所有権を有していても、解除前の第三者(545条但書)として、建物を建てる権利があることを主張する。
(1)まず、CD間の賃貸借により、Dは、建物を建てる権限を有する。そうすると、Dが解除前の第三者に当たるなら、Aが建物収去土地明渡し請求権を行使することはできないと解する。
(2)本件では、Dは、解除前に本件土地上に本件建物を建てて登記までしているから、Aが所有権に基づき、Dの建物を建築する権利を害することはできない(545条但書)。したがって、Dは、Aに本件建物を正当に建てることができる権利を主張できる。

4.よって、AはDに対して、Bとの売買契約の解除をしたことを理由に原状回復請求権に基いて本件土地につき建物収去土地明渡し請求をすることは認められない。

第2.AからCへの不当利得返還請求
(1)AはCに対して、令和4年9月1日以降につき、Dに転貸した場合における転貸料を不当利得として返還請求をすることが考えられる。そのためには、Aが所有権を有していることがいる。これには、本件売買契約解除後は、上記の通り、Aが本件土地の所有権を有する。そして、上記の日から仮に転貸料を得たならば、「利益を受け」たといえ、Aは、転貸料という「損失」を及ぼしている。本件土地は、Aの財産であるから「他人の財産」といえる。また、Cは、本件土地の所有権を有さず、「法律上の原因ない」といえる。
(2)よって、Aは、令和4年9月1日以降について、Cが利益を有する限度で、転貸料を返還請求することができる。

問2 所要時間20〜25分

①CE間及びDE間
1.Dは、Eに対して、土留めの工事(以下、本件工事)のために支出した費用(以下、本件費用)を請求することが考えられる(608条1項)。
2.Dは既に本件土地の上に本件建物を建てており、登記までしているから、賃借権の対抗要件を備えている(605条の2第1項)。そして、AE間売買により、本件土地が譲渡されたため、Aの賃貸人たる地位が移転すると考えられる。では、Aは、賃貸人として扱うことができるのか。
(1)これについては、売買契約の解除も一種の法的犠牲とみなすことができる。また、土地の賃借人に予想しえない不利益を被らせないようにする必要があるから、売買契約が解除された際に土地の転借人がいた場合、土地の元々の売主が新賃貸人として扱うべきであると解する。
(2)Cが本件土地の転貸人であったことから、Aは、新たな土地の賃貸人として扱うべきといえる。
(3)したがって、Aは、賃貸人として扱うことができる。
3.上記より、Eに、賃貸人としての地位が移転する。(605条の2第1項)。
4.したがって、本間工事の原因につきDが責めに帰する事由がない限り、Eは、Dからの本件費用を拒むことはできない。

②CE間及びDE間
1.民法605条の2第3項では、「賃貸物である不動産について所有権・・・対抗できない」とある。AE間で所有権の登記がなされている場合には、Eは、賃借人であるDに、Aが有していた地位を主張して、賃貸人としての権利行使をすることが可能になる。
2.本問でいえば、Dが賃借人としての義務に違反した場合には、代金請求、程度によって賃貸借契約の解除も可能となる。 

以上.

※確かここら辺で大体90分くらいは経っていて、商法を解くのにあと30分しかない状態でしたので、すぐに商法に移りました。


3.感想


 会場で本問を解いてる時は、頭の中では、旧司法試験の民法みたいな形式だと思い、構成にすこし悩みました。問1に時間かけすぎて焦りましたが、試験時間は当然ないので周りの受験生もちゃんとした答案をかけた人はそう多くはないだろうと開き直り、事案を分析しつつ、緊張の中できる限り基礎知識(条文)の抽出と三段論法を崩さないで書くことを意識しました。

 北大ローの民法は過去問を見ても、教科書事例よりは捻りが効いた問題が多いのかなと感じていました。本番も教科書事例みたいなのは出にくいです。 かといって誰もできないような難問は出ないはずです。また、過去問見る限り、後期は物権のマイナー分野や債権各論のマイナー分野からも出ていたので要注意です。当日は白紙にならないように、答案に条文を示すためにも、条文はある程度見ておくことをオススメします。
 あとは、当日は、事案を丁寧に分析して、最低限の問題の事実を条文や規範に沿って書き、時間制限に気を付ければ合格ラインにはのると思います。

 最後に、普段やってる問題集等にのってるA〜Bランクあたりの問題を説明できるくらいやっておくと現場思考っぽい問題が出ても本番はそこまで怖くないかと思います。




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