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再発

——誰かを本気で好きになったことある?
呆れるみたいに放たれた言葉は、どういうわけか僕の心臓に真っ直ぐ突き刺さってきた。未だ抜けるつもりはないらしくって、最近は心臓ごと抉り取られそうな気さえする。
「あるよ」
だけどその時僕はまだまだ素人で、全然何も分かってなかった。だからそう返せたんだ。
「みんなを本気で好きになってる。本気だから猛アタックしてんの」
訴えるとか演説とか、そういう気分で言葉を紡いだ。なんであんな必死だったのか今なら簡単に答えを出せるけど、本当に分からなかったんだ。
「……そっか」
その時見た表情は、僕には今でも難しい。呆れたような怒ったような泣きそうみたいな複雑な。
僕は本気を知らない。女好きとかナンパが代名詞になるほどの僕だから、本気を知らない。いや、知らなかった。
気づくのがあんまりにも遅すぎて、ほんと、自分でもバカらしくなるよ。
『君に本気なんだ。とっくの昔から君に本気だった。自分でも、気づかないほど昔っから』
今なら言える。今ならそう返せる。言いたい、伝えたい、だけどそれが無理なんだもんな。失ってから初めてってやつ。過去の自分をブン殴りてえよ。早く目覚ませ、目の前見ろってさ。あーあマジで、救えねえバッドエンドだ。

















もう二度と会えないと思ってた。



でも僕の心臓は、もう一度爆音で鼓動を打ち鳴らし始める。髪型も表情も声だって変わってたけど、僕を撃ち抜いたその真っ直ぐな眼を忘れたりはしない。

君と離れてから僕は誠実になったよ。でもきっとまた浮気者に戻るんだよ。
ナンパは僕の、最低な照れ隠しだから。

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