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北インドレストラン料理運用マニュアル 初級編

 こんにちは!色々あって新年のご挨拶もできずじまいでしたが、本年もいろいろと暴露していきます!(爆) 

 私が良く受ける質問の一つに、「なぜインド料理屋さんはあんなにたくさんメニューがあるのか?」というものがあります。確かに、お店によって多い少ない多少差はあれど、街中のカレー屋さんの中には相当な種類のカレーをメニューに載せているお店も少なくないですよね。これはもちろん日本のインドカレー屋さんの特徴、というわけでもなくインドでもレストランに行くと、同じようにたくさんのカレーがメニューに載ったお店をたくさん見つけることができます。ではこんなにたくさん種類のカレーを、お客さんの注文に合わせてどのようにして作っているのかというと、もちろんそのためのやり方があります。インド料理レストランは慈善事業ではなく商売ですので、そこにはどのようにして他店と差別化して、顧客満足度を高め、利益も金と出すかということが吟味されています。ここではその方法論の一つを解説していきますね!

インドレストラン料理の方程式

 実は北インドを中心としたレストラン料理で提供されているカレー料理の多くは、下の図式に当てはめて考えることができます。北インドレストラン料理、インドレストラン料理、インド宮廷料理…名称はいくつかありますが、北インドのレストラン料理の系統は最終的にはすごく簡単にまとめることができますので、この記事ではどのような書かれ方をしていても、”ムガル帝国時代の宮廷料理に端を発する、現代の北インドのレストラン料理全般”のこと、とします。そしてその中のカレーっぽい料理について解説していきます。

 では改めて。下記の図式によって、インドレストラン料理店のカレーっぽい料理のほとんどを理解することができます。

<グレイビーその① + グレイビーその② + メイン食材 + 副食材 + 調味料>

 もちろん全てのインド料理レストランが同じロジックを用いているわけではないので、これは数あるオペレーションの一つでしかないということと、上記は図式なので、全てがこれにきっちりと当てはまるわけでもないという前提はあります。例外はありますし、この図式をもっと簡略化することも、またその逆で複雑にすることも可能です。また、個人個人のシェフが編み出した独自方程式もあります。
 しかしどのお店でも、限定的な席数で一定以上のお客さんを相手にたくさんカレーを提供しようと思えば、物理的には根本部分は大体同じ発想にならざるを得ないはずなので、この図式を習得できればどこのレストランのカレー料理でも理解できるようにはなると思います。30種類以上のカレーがメニューに載っているなんていうのはざらな世界ですが、30種類のカレーを一つずつ個別に仕込んでいるわけではないんですね。ただ、この図式はフルスペックのようなノリのものなので、習得して使いこなすための難易度が非常に高いで、本格的ではなく、本格と呼べるレストランが採用するものですね。
 もちろん全てのシェフがその領域なわけではないのと、別にそこまでこだわらなくてもインドカレー屋さんはできますし、お客さん目線で考えても全てのお店が本格レストランである必要もないので、そこまでのクオリティを求めない場合のために、略式オペレーションも存在しています。それが以下の図式です。

<食材ごとの専用グレイビー + グレイビーに対応するメイン食材 + 副食材 + 調味料>

 この略式オペレーションでは肉を使ったカレー用、炒め用、野菜用、海鮮用と数種類の専用グレイビーを用意し、それに対応する食材を合わせることでカレーを作ります。フルスペックの場合は組み合わせによってほぼ無限大のメニューが生み出せるのに対し、略式オペレーションは特定のメニューを生み出すための方程式を予めいくつか用意しておくことになるので、発想の出発点が実は根本から違います。
 フルスペックの図式では何が一番難しいかというと、グレイビーや食材の組み合わせや配合次第で無限の料理が生み出せるその自由度、ではなく、実は無限の中から30なら30、50なら50のメニューを選定し、レシピを固定し、それを実戦でスピーディにミスなくこなし、お客さんからの評価を獲得することにあります。なんでも作れますが、それはなんでもありというわけではありません。その点、略式オペレーションではメニューの数が比較するとかなり少なくなってしまいますが、例えば先に10個のメニューを決めてしまえばそのためのレシピを10個書き起こせばよく、後はそれに従って調理をこなすだけで済むので、運用に至るまでの道のりもフルスペック版に比べるとかなり省エネルギーです。ただ、メニューを新しく増やそうとすると、そのための専用グレイビーが新しく必要になることが多いので、運用のための難易度は低いですが、お店やシェフの成長に合わせた柔軟なメニュー展開が難しいという欠点があります。

 ではここからフルスペック版でそれぞれの要素について見ていきましょう!

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