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想像とは違う?プロカメラマンの生態

カメラマンといっても一括りにはできないほど多くのカテゴリーに別れますが、皆さんの想像とは異なることが多数あるのでは?と感じています。

今回はかつて私が仕事として携わっていた『広告業界のカメラマン』を題材にして皆さんが想像するプロカメラマン像との相違点を書いてみたいと思います。

■ カメラは必ず三脚に取り付ける。

モデル撮影といえば、カメラマンが手持ちでカッコよくパシャパシャとノリノリで撮影するイメージを持つかたも多いと思います。

広告や雑誌などの撮影の場合ですが、人物の位置に合わせてカメラが移動するというよりも、モデルの立ち位置とカメラ位置をきちんと決めてライティングなりを組んでいくのがセオリーのためカメラは三脚に付けておくことが多いです。

モデルの立ち位置やカメラ位置その他の決定権を持つのはカメラマンだけではありません。カメラを三脚に固定しておけばアングルも固定されたままの状態で、アングルの決定権のあるデザイナーや編集者とコミュニケーションが取れその後の微調整も容易になるためです。

さらに流通やEコマースなどアパレル系の撮影ではモデルを差し替えて繰り返し撮影を行うため三脚に固定したほうが効率よく撮影ができるという側面もあります。

ついでに広告写真業に限っていうとカメラにストラップ(肩紐)を付けて使っている人も少ないと思います。

■ 自然光を避けたがる。

『スタジオ撮影』というと自然光たっぷりのハウススタジオでの撮影を連想するかたが多いと思いますが、実際は自然光はおろか、窓など一切ない1-3面Rのホリゾントのスタジオを使うことが圧倒的に多いです。

基本的にはゼロから光を作っていく作業を行うため、外光は一切遮断できる状態のスタジオが好まれるのです。

シビアな時にはミックス光になる要素(蛍光灯や非常灯など)はすべて切ったり塞いだり交換したりすることもあります。


家の中の雰囲気を撮る場合であっても、ハウススタジオを使わずに『建て込み』(セット)を組んだり、キッチンスタジオ(撮影用)などを使った上で室内風景を再現したりしています。

広告にしてもファッションにしてもハウススタジオを使う機会はほんとうに少なく、年に1-2回使うか使わない程度。扱いとしては『自然光ハウススタジオ=屋外のロケ撮影の一種』といったイメージです。ホリゾントのスタジオよりも置いている機材が少ないので、持ち込む機材の量もロケ撮影並みになりますね。

そんなハウススタジオでの撮影の場合にも、光を和らげるための紗幕や光を遮る黒幕や目張り用の黒テープなどは必須。自然光への警戒心は本当に強いのです。

■ モデルとの会話はほとんど無い。

モデルやタレントを撮影する際にはカメラマンが率いる撮影チームやヘアメイクチームがいちばんにスタジオに入ります。

撮影チームがある程度セッティングを済ませた頃にモデルやタレントがスタジオ入りします。

到着すると直ぐにメイクルームに入ってしまうため、次に顔を合わせるのは本番に入るタイミングになり、それまでは会話をする時間は全くありません。

ですのでカメラマンとモデル・タレントとの撮影前のコミュニケーションの機会は少なく、代わりに会話をしているのは毎回ヘアメイクさん達ということになりますね。

多少仲良くなるとすればロケ撮影で移動や待ちが長くなったりレギュラー仕事で何度か顔を合わせる仲になったときくらいでしょうか。

極端な場合だとカメラマンは最後まで自分の名前すら伝えずに終わることもあります。

グラビア撮影やタレント専門のカメラマンの場合はもう少しコミュニケーションを取る時間を持っているのかも知れませんね。

■ 民生用の機材やソフトに疎い。

プロの機材と一般の量販店やamazon等で販売されているような機材とは用途や性質が大きく異なります。

また、業界内で定番とされている機材やその購入取引先はある程度決まっていのでそれ以外の機材に触れる機会がなくなります。

このため、一般的に販売されているカメラ機材や用品に疎くなります。

例えばストロボに関してはジェネレーターを十数台使ったりHMIなどの大掛かりなライティングを組むことが出来てもそれ以外の機材に付いては全く分からない(クリップオンなどのストロボが使えない)三脚などは定番以外はメーカー名さえ分からないなど。自分の周りにある機材以外にはどんどん疎くなっていきます。

レンズなどに関しては純正以外のメーカーのものを敢えて使う必要もメリットもないので、他メーカーのレンズ性能などに興味を持たない人も多いのではないかと思います。

■ モデルを過剰に褒めたりしない。

こちらも広告系に限った内容かも知れませんが、シャッターを切っている際にモデルやタレントの気分をのせるために「いいね!いいね!」「かわいいね!」などと過剰に褒めるような言葉を発することもなく、テンポを良くする程度の落ち着いた掛け声に止める感じです。

もちろん盛り上げなければならないような場面があれば普段よりテンション高めに撮影することもありますが、それよりもディレクターやデザイナーが求めるイメージを的確にモデルに伝えたり、商品や服装を見せることのほうが重要な場合が多いのです。

逆にお姉さんのセクシーさや可愛さを撮影する機会が全くないのでモデルを過剰に褒める必要がないのかも知れません。

因みにモデルやタレントは目上の男性や大御所に当たることもありますし、外国人の場合もありますので、常識的な落ち着いた接しかたや外国語での会話やコミュニケーションも必要とされます。

英語の褒め言葉のフレーズは何パターンか覚えておくと現場で恥を欠かずカッコよく撮影ができます!

■ 素人との撮影が苦手。

上に書いたことと通じることですが、過剰に相手を褒めて無理やりに気持ちをのせてあげることが少ないので、素人さんを撮影するのが苦手だったりします。

具体的には、会社案内やお店紹介、芸術家や社長インタビューなど一般の皆さんを撮るケースですね。

普段は撮る側も撮られる側もスタッフも含めて全員がプロで固められた撮影がいかにスムーズであるかを痛感する瞬間です。

※普段から一般の皆さんを撮り慣れている広告系カメラマンもいるので全員が苦手にしているというわけではありません。

因みに俳優さんや芸術家のかたの中にも写真嫌いの人はけっこう居たりしますし『写真なんて1枚撮れば充分だろ』という感覚のかたもいるのでそういったかたを撮影するときにはストレスやプレッシャーを感じます。

■ 休日はカメラを持たない。

広告系の場合はクライアントである企業が休日となる土日祝日がだいたいの休みにあたります。仕事以外でカメラを持たないひとが殆どで、極端にいえばプライベートの自分のカメラ本体を所有していないのではとも思われます。

休日にカメラを持つということは、プロ野球でいえば休日も草野球をするようなもの、寿司屋でいえば家でも寿司を握っているようなものですから自分も絶対持ちたくありませんでした。

休日にカメラを持たないことは勿論なのですが、普段の撮影に関しても一刻も早く終わらせて帰ろう!という気持ちがスムーズな撮影仕事の原動力になっているのも事実です(笑)

写真から離れる時間やその他のたのしみも必要だと思いますね。

■ 写真が好きなのではなくフォトグラファーという仕事が好き。

広告撮影の業界にいて感じたのは、仕事はキツくても皆んなが充実した感じでストレスなくやっていたこと。カメラマン・フォトグラファーとして、職人としての作業や仕事が好きなんだろうなと感じました。

反対に、いま私がいるポートレートの世界を見ていると写真集を作ってみたり、賞を狙ってみたり、写真展を開いてみたりと、写真が好きだったり写真への愛が溢れているように感じます。

広告カメラマンには意外にも写真に対する情熱が少ない人が多いのかもしれません。

■ 番外編。意外にチャラくない。

一応はマスコミエンタメ系のいちぶに入るのかも知れませんが、世の中が思っているほどチャラい世界ではありません。むしろ平日は忙しく、さらには撮影が終わる時間も読めないのでてチャラチャラする予定すら立てることができない感じで、周りの友人たちが羨ましく思える感じでした。

結局は同じ業界内で知り合ったり出かけたりする感じになるのですが、たまに一般のOLさんやクライアントの営業さんの話しを聞いていると遊びのレベルが業界とは桁違いで圧倒されましたね…。

それでもこの仕事が好きだったので長く続いていたのだと思います。

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