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ふきぬける水色

味のない炭酸水を飲み、電車のホームであと26分をどう過ごすか、思いを巡らせる。単線、二両編成の電車はいつまでたってもやってこない。

向かいのホームの後ろは草むらが広がり、その後ろには小学校の校庭が見える。こっち側のホームは大通りに面していて歩道橋とパンやとでっかいラーメン屋のチェーン店がある。コンクリートがぼろぼろのホームの長さは70メートルくらいしかない。

水色の空から風が吹き下ろして、線路の上を駆け抜けていく。私の制服のスカートを揺らし、足にざらついて乾いた紺色の生地が触れる。

わざわざ、電車でこんな何もない駅に通ってまで、補習にこなくても勉強のしようがあった気がするけど、無駄に安らげる時間を過ごした夏はなんとなくいい思い出になる気がする。

向かいのホームには、唯一話せるようになった、別の学校の女の子がいた。水色のポロシャツに灰色のスカート。こっちを見て、少し笑った。

もう帰るん

うん、そっちも?

うん、宮脇書店に寄ってから帰る

そっか。気をつけてな。また、こっち来ること、ある?

んー。ないかも。たぶん私近所の高校いくし

そうやな。わざわざこんな田んぼの中の高校ねらってこんよな

何高校があるんかすら、知らんわー

そっちの高校の方がええよ。うちの高校偏差値低いし

あっ来るわ電車、元気でな

うん、元気でなー!

本何買うん?

えーとなマンガ

あの子はやってきた電車に隠れた。わたしは電車の中から、窓の外のあの子に手を振った。遠くなる。

もう会えないなきっと、という確信を抱きながら、お互いに当たり前のようにさよならをした。

バイバーイ

バイバーイ

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