ダブリンのドローン及び都市エアモビリティ戦略
case | 事例
ダブリン市は同市初の「ドローン及び都市エアモビリティ戦略2024-2029」を発表した。この戦略は、ドローンの将来的な可能性を理解し、公共サービスを向上させるために市がドローン技術を活用するための変革を進めることを目的にしている。 ドローンは、都市のサービスの効率化、コスト削減、業務の合理化の助けになり、地図の作製、危険な建築物の検査、緊急対応、調査や環境モニタリングなどの都市空間の監視と管理をはじめ、市の様々なサービスに今後も活用される方向にある。
ドローンの運用を一元化し技術の導入を加速するため、市にドローン専門チームが新設され、市の執行機関各部門でのドローン活用をサポートする。このチームは、市の行政効率を最大化することを目指す以外に、民間部門において市民や地域社会に利益をもたらす新しいサービスの開発を支援することで、ドローン業界のイノベーションをサポートする役割も担う。アイルランド航空局も、公的機関がドローン戦略を策定することを非常に支持しているとし、ダブリン市のドローン戦略策定とドローン分野でのイノベーションの推進を歓迎している。
戦略の策定には民間の専門知識を持つAvtrain社やPMI Media社の支援があったが、1年以内の短期のアクション(組織や業務フローの整備、イノベーションプロジェクトの実施、産官学連携や自治体間連携など)、3年以内の中期の取り組む方向性(ドローン産業のエコシステムづくり、都市エアモビリティの実現に向けた基金や計画づくりなど)、5年までの長期活動(都市エアモビリティの商業化、国内のエアモビリティネットワーク化など)が示されている。
insight | 知見
ダブリンはドローン配送で世界で注目されているスタートアップMANNA AERO社が生まれた都市でもあることから、ダブリン市はドローン産業の重要な拠点になることを念頭にこの戦略を策定したものだと思います。
先日、ある都市の産業政策について振り返ったのですが、過去のある時点で戦略産業について目標を設定し、政策体系が構築され、野心的に取り組みが始まったのですが、時間が経ち行政内の人事異動も重なった結果、この産業政策のもとで始められた当初の事業だけが延々と続いてしまい、産業政策とは言い難い行政主導のイベントが毎年繰り返されている現状を目の当たりにしました。
産業政策を考える際、ダブリンのドローン戦略のように、短期的にはイベント的なプログラムに取り組むことかもしれませんが、中期は産業のエコシステムを作っていくこと、長期は産業の収益を上げるための社会システムを構築すること、というのが行政の役割だと改めて思いました。中長期の施策を担保していくための政策思想をきちんと引き継いでいくことが重要なのかもしれません。