フィレンツェは旧市街地での新規のAirbnbと住宅の短期賃貸を禁止
case|事例
フィレンツェは住宅不足の改善を目的に、Airbnbをはじめとする短期の住宅賃貸の規制を開始する。新たな規制によって、旧市街地の住宅に対して、Airbnbなどのプラットフォームを通じた新規の住宅の短期賃貸は禁止される。また、既存の短期賃貸住宅のオーナーに対しては、通常の賃貸借契約に切り替えれば、3年間の減税措置が受けられる優遇策もあわせて導入される。
フィレンツェ市役所は、新たに規制を強化することで市民に対してよりアフォーダブルな住宅の提供を進めたいと考えている。Airbnbの登録物件数は2016年には6,000件であったが、2023年には14,378件と倍以上に増えている。この期間に住宅価格は42%上昇しており、今年だけでも15.1%の上昇率となっている。住宅価格の高騰に併せて旧市街地周辺に住む住民の不満が高まっている。インフレが進む中、低い賃金水準と不動産不足で、住宅不足が加速しており、特に低所得者層や学生の生活が脅かされている。
フィレンツェ市長は、中央政権野党の中道左派政党に所属しており、中央政権が進めているこの分野に対する政府の対応が不十分であると考えており、フィレンツェ市独自の規制を決定した。一方で、政権与党である中道右派政党や短期賃貸事業者組合は、自由経済に反するとして反対の意を示している。
insight|知見
インバウンドも含めた観光客の来街は地域の観光産業とその周辺を潤しますしますが、限度を超えると一般市民の生活が脅かされるというジレンマを示している事例だと思います。
都市観光の醍醐味は、歴史的な市街地を見ることもさることながら、地元で愛されているカフェで佇んだり地元の飲食店で食を楽しんだりと現地の生活文化の一部を体験することにあると思います。
そういう意味では、人が住んで生活を営んでいること自体が価値のある資源になるはずなので、住民の生活を守り、過度な観光入れ込みを規制するということは妥当性があるようにも思います。現代版のコモンズの悲劇のひとつかもしれません。