シアトルは地域主導型の都市林業とその職業訓練を進める
case | 事例
米連邦農務省森林局は、樹木の公平性と健全な樹冠を推進するシアトル市のリーダーシップを評価し、猛暑と気候変動への対応、自然へのアクセスの改善、若者のグリーン・キャリアの支援のために、市民の生活・学習・憩い空間での樹木の植樹・維持に1,290万ドル(約20億円)を提供する。今年初頭にシアトル市は2021年の「キャノピー・カバー・アセスメント(樹冠被覆評価)」を発表し、人種的・経済的不平等が現れている地域は、より恵まれた地域よりも樹冠が27%少ないことを明らかにした。今回の予算は、これらの地域での植樹と樹木の手入れに重点を置くことで、樹冠の不公平に対処する機会にもなる。
プロジェクトは2つに分かれており、1つは地域主導型の都市林業と職業訓練に1,200万ドル(約18億円)が充てられる。緑化や教育関連のNPOや組織と連携した上で、コミュニティ計画、植樹、優先地区全体の管理人制度、グリーンエコノミーのスキルを身につける訓練と雇用の促進、公園・公営住宅・公立学校周辺の森林空間の復元に投資する。もう1つはデルリッジ自然林公園に90万ドル(約1.3億点)投じ、地元コミュニティと調整し教育やボランティアの機会を提供しながら、市有区画と未改良道路や歩道を整備し、外来種の除去、地域にとって文化的意義のある在来の針葉樹と下層植物を植える。
地域コミュニティの参加のもと、猛暑や空気の質の悪さ、健康格差に苦しむ地域の樹冠を改善し、学校や住宅の近くに自然へのアクセスを拡大することを目的としたこれらのプロジェクトは、シアトル市が負担を強いられているコミュニティに経済的・生態学的なメリットを具体的に提供する機会となる。
insight | 知見
福岡市の「一人一花」事業に参考になると思って記事を読みましたが、シアトルのケースでは政策導入の視点(格差解消)と定量的な根拠(地域の樹冠差)が明確にされていることで納得感があると感じました。「一人一花」の場合は、まちの魅力向上や市民の豊かさを高めることを目的にしていますが、なぜ花なのか、どのような課題をどの程度解決するのかの根拠提示が重要と思います。
植林・植樹のプロジェクトは世界中で数多ありますが、政府の予算、企業や市民の好意やボランティアに頼り続けるものではなく、地域コミュニティの協業、植林・植樹を通した教育、グリーン・エコノミーに関わる職業訓練を仕組みとして作っていくことが持続可能な取り組みにしていく上で重要です。「一人一花」も地域や人を育てることをよりフォーカスしていいのではないかと感じました。