ゼロ廃棄物都市:シンガポールとサンフランシスコの取り組み
case | 事例
廃棄物を単なる廃棄物問題としてではなく資源として捉えることで、都市の廃棄物管理を変革することを目的としたゼロ・ウェイストのアプローチがある。 このアプローチは、資源と廃棄物との関係を再構築し、廃棄物を再利用する循環型システムを推進することで廃棄物の発生を抑制する。また、持続可能な都市環境を支えるために、製品設計、製造、消費者行動、都市インフラに関する考え方を変えることを求めている。このゼロ・ウェイストの原則を都市のデザインに取り入れ、廃棄物管理を都市計画に統合する革新的な取り組みを進めているシンガポールとサンフランシスコの事例を紹介する。
シンガポールでは、真空技術を利用して建物のゴミを集中回収場所まで運ぶ空気圧式廃棄物輸送システム(PWCS)が住宅開発庁のいくつかの住宅地で導入されている。このシステムにより、交通渋滞や大気汚染が緩和され、衛生状態が改善されている。同システムを導入している住宅団地では、住民が共用空間にあるゴミ投入口にゴミを捨て、地下の集中回収場所まで輸送され、廃棄物のリサイクルまたは廃棄がその後進むことになる。この方法により、ゴミ収集が効率化され、住民がゴミの排出についてより意識するようになっている。
サンフランシスコ市は、2030年までに埋め立てと焼却による廃棄物をゼロにすることを目指している。市は、新しい建物にはリサイクル品、堆肥化可能なもの、埋め立てゴミの3種類の廃棄物用のスペースを設けることを義務付けている。また、公共空間には、ゴミを圧縮し、満杯になるとアラートを発して収集ルートの最適化を図るスマートなゴミ箱が設置されている。更に、サンフランシスコ市は、廃棄物分別の取り組みを促進するために、市内全域で一貫した3色のゴミ箱システムを使用し、住民が適切な分別方法を理解できるよう教育プログラムにも投資している。
insight | 知見
日本では高性能な焼却炉が普及した90年代かその前後以降、あまり廃棄物処理の大きなイノベーションが起きていないように思います。自治体それぞれで分別の種類・仕方の違いはあるものの、燃やすゴミと、分別して資源にするゴミとに区別した形式に違いはないと思います。
栄養として循環可能な生ゴミを焼却していることが本当に持続可能なのか、人手不足の中でのゴミ収集の曜日や場所はどのように最適化すべきなのか、埋立ごみの用地を確保しなくていい廃棄物処理システムを後世のために考えておかなくていいのか、など持続可能な世の中にしていく観点から、海外の都市のやり方を見ながら日本の仕組みに問題意識を持つことは重要だと思います。