ポートランド、パール地区の歩行者専用ゾーンを検討中
case | 事例
米オレゴン州ポートランドのパール地区は、ポートランド都心北部にある、かつて荒廃していた倉庫街を90年代以降官民連携による都市開発や公共交通(路面電車)の延伸等で魅力的なエリアに変わった都市開発の成功例と言われている地区である。現在もショッピング、飲食やエンターテイメントサービスの集積が進んで活気ある地区であるが、ポートランド市は、パール地区に歩行者専用のゾーンの設置を検討している。検討しているゾーンは、地区の中心を走る目抜き通り沿いの数ブロックにまたがる範囲で、ゾーン全体をを車が通行しない歩行者天国に変えようとしている。その目的は、歩きやすさを向上させ、歩行者にとってより安全な環境を作り出し、より活気のある居心地の良い公共空間を作ることとされている。
高級ブティック、アートギャラリー、人気レストランが集まるパール地区は、近年歩行者の往来が激しい一方で、自動車交通がしばしば歩行者の混雑や安全上の懸念を生み出してきた。検討されている歩行者専用ゾーンは、通過交通を排除し、歩行者の移動を優先することで、こうした問題に対処する。歩行者専用ゾーンに対して、パール地区の企業は、歩行者の往来が増えることでより活気が高まることを歓迎する声がある一方で、駐車場がなくなり、配達やアクセスに影響が出る可能性を懸念する声も出ている。市は現在、住民、企業、関係者からの意見を集めるため、市民参加プロセスを実施している。このプロセスには、オンライン調査、コミュニティ・ミーティング、ワーキンググループが含まれ、制度設計のあり方、駐車場に関する解決策、潜在的な経済的影響などについて議論する。
承認されれば歩行者天国は段階的に実施されることが想定されており、最初の段階では、NWデイビス・ストリートの一部を通行止めとする。その後、段階的に歩行者専用ゾーンを拡張し、ストリートファニチャー、パブリックアート、植栽の増加などのアメニティを導入する。パール地区の歩行者専用ゾーンの設置は歩行を促進し、活気に満ちた住みやすい地域を育てるというポートランドの公約に沿うものである。提案は数ヶ月以内に採択される見込みである。
insight | 知見
都心の飲食やアパレルなど路面店が集まる歩いて楽しいスケールの繁華街は、人通りが多い一方で、自動車の通行が歩行者にとって危険だったり歩きにくさにつながったりします。このような通りを歩行者天国にできない理由は、だいたい記事にあるような、そのエリアの駐車場の経営の圧迫になったり、地区の配送などの物流に影響を与えることに対する反発があるからだと思います。
なのでポートランドのように住民・企業・関係者を巻き込んだ市民参加のプロセスを通して、歩行者専用ゾーンにすることに対する懸念をなくしたり補償したりする良い知恵を見つけることが必要なのだと理解しています。行政が市民参加のプロセスを避けて、エリア外でパークアンドライドやフリンジパーキングのような施策を導入しても、結局はそのエリアの課題解決にはつながらないのだと思います。