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オースティンは気候変動と住宅不足への対応のため駐車場の附置義務を撤廃

case|事例

テキサス州のオースティン市議会は、新規の開発に課されていた駐車場附置義務の最低整備台数の要件の撤廃を8:2で可決した。これによりオースティン市は駐車場附置義務を撤廃した全米で最大の都市となった。今回の駐車場附置義務の撤廃の対象には、単身住宅、集合住宅、オフィス、ショッピングモールが含まれており、ほぼすべての用途で駐車場附置義務が今後課されなくなる。開発時の駐車場整備が禁止されるわけではなく、新規開発の開発事業者に駐車場を整備するかどうかが委ねられる

駐車場附置義務の撤廃に至った背景には、住宅価格の高騰に伴うアフォーダブル住宅の不足や気候変動の深刻化などの問題がある。附置義務が課されることで建設コストが引き上げられ、結果として住宅価格の高騰の一因となることや潤沢に確保された駐車場がさらなる自動車依存を招くことなどが特に強く指摘されていた。また、特に平面駐車場での確保は希少な土地資源を使い果たし、低層部でのビジネスや賑わい創出の妨げになっている。さらに、駐車場は整備する一方で、公共交通の運行維持やウォーカブルな環境創出に莫大な公的資金を投入しており、公共政策としての矛盾も指摘されていた。

今回の附置義務の撤廃によって、路上駐車が増え渋滞が悪化するとの懸念や、附置義務制度の制度改革は段階的に行われるべきであるという意見も反対派から寄せられている。

オースティンだけでなく、ポートランド、ミネアポリス、サンノゼなどではすでに完全に駐車場の附置義務を撤廃しており、他の米国主要都市でも附置義務の撤廃もしくは縮小が行われはじめている。

insight|知見

  • アメリカの中でも特に自動車依存が強いテキサス州の主要都市であるオースティンが附置義務を撤廃するのは驚きです。

  • 日本でも交通需要の発生者が原因者負担として駐車場を確保するという原則の下、駐車場附置義務や大店法で駐車場が確保されていきます。また民間の駐車場事業者が駐車場を整備する場合もあります。

  • 自動車依存の緩和や気候変動への対応として駐車場の附置義務を見直すということは、日本でも考えられることですが、都市のシステムの一部として駐車場を一体的にマネジメントしていく方法も検討していく必要があるように思います。