ベルギーは2026年に自動車中心の道路法規を刷新
case|事例
ベルギー政府は自動車中心の道路法規集を2026年に刷新することを目指し、その改訂作業を進めている。現在の法規は50年前に制定されたもので、これまで100以上の修正が施されているが、幹線道路の自動車利用を想定したものであることは変わりなく、移動手段のパラダイムシフトに対応していないことが課題となっている。
今回の刷新では、幹線道路の自動車を想定したものから広範な道路利用者を含む法規へとすることを目的としており、その名称も「Highway Code」から「Public Road Code」へと変更することを予定している。
連邦交通大臣は、今回の刷新にあたって、「もはや自動車がデフォルトの標準ではなくなっている昨今の移動手段のパラダイムシフトを反映し、すべての道路利用者に対して公道の公平な共有を管理することが必要。」と見解を述べている。
今回の大規模な法規の刷新は、2026年9月1日からの施行を目途に見直しが進められており、今週ベルギー国王が新しい法規の改定案を批准したことで、法律承認の最終段階にある。
今回の刷新では道路の安全性を確保するために新しいルールも追加され、歩行者、自転車、バイク、自動車などすべての交通手段でルールの変更が行われる。今回の変更にあたっては下記の5つが柱となる。
あらゆる交通手段にとって道路を安全にすること
それぞれの道路ユーザーのために空間配分のバランスをとり再調整を行うこと
アクティブトラベルを推奨すること
道路の安全性を改善すること
明確さ、一貫性、読みやすさを確保すること
また、道路や歩道での自転車の利用をしやすくするために下記に代表されいくつかの点で規制が緩和されていることも特徴と言える。
歩道の自転車利用は11歳まで許可する(従来は9歳まで)
B22標識のある交差点において、歩行者および自転車は赤信号もしくはオレンジ信号の場合でも左折の際は通過可能とする(他の交通手段に道を譲る場合は直進もしくは右折も可能)
自転車レーンを整備するためのスペースが十分確保できず、その区間が危険な場合、交通管理者は自転車の歩道通行を許可できる
自転車のグループは10人以上から100人以下まで集団での通行とみなし、その場合は道路の走行や並走の許可など特定の法規に従うこと
交差点に緑色の四角い標識がある場合、斜め横断を許可する
自転車およびそれ以外の二輪車は渋滞時に車列を追い越すことができる
ライト、反射板、ブレーキ、ベルなど自転車に必要な装備リストは簡素化し標準化される
一方ですべての自転車利用に対して自由度が与えられるわけではなく、歩行者保護のために下記のような制約も追加されている。
歩道における二輪の駐輪は歩行者の通行用に常に1.5m幅を確保すること
車道上かそれ以外かに関わらず、走行中の二輪は歩行者との間隔を市街地では最低1m、市外市街では1.5m確保すること
電動自転車(Speed Pedelec)は歩行者ゾーンやプレイストリートへの進入が許されるが、その場合は歩行者のスピードにあわせるとともに歩行者ならびに他の交通手段を尊重すること
insight|知見
自転車の利用が促進され、さまざまなマイクロモビリティが導入されることは環境的、社会的メリットがたくさんあると思いますが、その導入がパッチワーク的な法解釈で進められていることに違和感を感じていました。
特例的な導入を重ねるだけではなく、きちんとルールを明確化し必要な法制度は抜本的な改訂を行うことが、望ましい利用環境を整えるために必要だと思います。日本も、短期的にしのぐのではなく、道路構造令の改訂など長期的な視野で社会インフラとしての利用環境を整えてほしいなと思います。