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リバプールのウォーターフロントの新たなステップ

case | 事例

リバプールのウォーターフロントは、数十億ポンドを投じたリバプールONEの開発、受賞歴のあるアリーナや会議場、クルーズ客船ターミナル、新しいリバプール博物館ができたアルバート・ドック、ピアヘッド、キングス・ドックの大規模なアップグレードなど、ここ数十年で大きな変化を遂げた。その結果、毎年数百万人の新規観光客が訪れるようになり、2008年の欧州文化首都から今年5月のユーロビジョンまで大規模な国際イベントの開催が可能になった。

今般(9/19)リバプール市議会に提出される議案では、今後10〜15年間のウォーターフロント開発の指針となる戦略とマスタープランを動かすための、プランニングとプレイスメイキングの専門家チームを募集することが求められており、リバプールのウォーターフロントが新たなステップへと進むことになる。戦略・マスタープランでは、7つの目的が設定されている:(1) 都市と都市圏の経済と持続可能な発展に対する貢献の最大化 (2) ウォーターフロントへの投資の近隣地域への波及メリット最大化 (3) 包括的なアクセスの確保と健康的なライフスタイルの実現 (4) 場所の質と都市デザインの卓越性の実現 (5) 持続可能で創造的・革新的な気候変動の影響への対処 (6) ウォーターフロント再生に必要な主要インフラの特定 (7) 公共空間、パブリックアート、道路標示、環境改善、グリーンインフラなど接続性、透明性、視認性を高めるための方策の検討。

具体的なプロジェクトとしては、市南部の大規模な住宅計画、北部のブラムリー・ムーア・ドックに建設されるエヴァートンFCの新サッカー・スタジアム、リバプール国立博物館等によるアルバート・ドックの建物の再生などが目玉となりそうだ。最終的なウォーターフロントのマスタープランは、補足計画文書(SPD)として採用される予定であり、このSPDは、2022年に採択されたリバプールのローカルプランに基づくもので、市の商業地区など近隣地域の開発の指針となる周辺のマスタープランを補完するものとなる。


insight | 知見

  • 日本国内でもウォーターフロント地区の再整備があちこちで構想されていますが、交通の路線ネットワーク、MICE施設の容量、憩いや賑わい施設の大きさなど機能別のスペックで計画が語られているものが多く、エリアのコンセプトがはっきりしないものがあると思います。記事のリバプールの戦略のような「都市圏経済・持続可能な発展への貢献」、「健康的なライフスタイルの実現」、「場所の質と都市デザインの卓越性の実現」など、広域経済や市民に対して達成する目標を示していくことでエリアの位置づけが明確になるのではないかと感じました。

  • 都市やまちづくりにおいてウォーターフロントはここ40-50年のテーマであり続けていると過去に記事で読んだ記憶がありますが、今後も都市の経済・産業のための基盤、生活やアメニティ空間として重要なテーマであり続けるのだと思います。