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ドイツの自治体におけるデジタル・ツインの開発に関する研究

case | 事例

総合エンジニアリング・コンサルティング企業のアラップ社は、欧州委員会のイニシアチブのもと、独バイエルン州のレーゲンスブルク市のプロジェクトとして、ドイツの自治体における都市のデジタル・ツインの調査研究を実施した。研究では、ブラウンシュヴァイク、ヘレンベルク、ケンプテン、クレーフェルト、シュトゥットガルト、スルツバッハ、ホーフといったドイツ7都市のデジタル・ツインについて、実装されている技術的な形態、デジタル・ツインにかかる自治体の組織構造や財政的な枠組みなどを比較分析した。

7都市のデジタル・ツインは、全て持続可能な都市の開発に適したアプリケーションを特定するための戦略的な検討プロセスを経ており、モビリティ、気候、エネルギー供給、計画、文化、観光など、さまざまな側面での活用が検討されてきている。特徴あるアプリケーションとしては、個人の交通を制御することで都心部の交通緩和を図るもの、樹木への散水が気候変動対策に寄与するためにセンサー技術を活用するもの、都市の駐車スペースを管理するものなどがあった。多くのアプリケーションは、オープンソースのプラットフォームで構築されていることから、他都市への展開も可能である。

研究で明らかになったのは、デジタル都市への道筋は自治体ごとに異なり、各自治体はそれぞれの枠組みや条件に基づいて具体的な戦略を策定することから、デジタル・ツインの開発は、行政の長期的なデジタル化のプロセスと、継続的な行政内部のコミュニケーションに労力がかかることが多い。レーゲンスブルク市は「レーゲンスブルク・プラン2040」において、都市の現在と将来の課題を解決するにあたってデジタル化が不可欠であるとしており、スマートシティ戦略を採択し、新たな革新的都市開発プロジェクトの基盤を構築しているが、本研究は将来の道筋検討において参考になる。

insight | 知見

  • 記事にもリンクがありますが、研究レポートは公開されておりPDFでダウンロードできるのですが、全文ドイツ語なので残念ながら簡単には解読ができません。

  • 事例研究対象となった7都市で、知っていたのはシュトゥットガルトくらいだったので調べてみたのですが、他の都市は数万人~20万人程度の規模の都市で、シュトゥットガルトは60万人都市でした。これらの都市全てがデジタル・ツインに取り組んでいるというのが驚きです。

  • 都市のデジタル・ツインは、行政の計画や政策に活用できることが考えられるため、まずは行政が主体となって構築を進めるものだと思いますが、その構築は「行政の長期的なデジタル化のプロセスと、継続的な行政内部のコミュニケーションに労力がかかる」とあるように、行政内でリーダーシップを持ってヒト・モノ・カネをつけて取り組まないとなかなか進まないのだと思います。