見出し画像

ニューヨーク市はマイクロモビリティによる宅配サービスを管轄する新部署を創設

case|事例

ニューヨーク市役所は、電動自転車や電動キックボード、スクーター、モペットなどのマイクロモビリティを利用する宅配サービスの急増に対処するために新たにサステイナブルデリバリー部という専門の部署をアメリカではじめて設立する。新たな部署は、二輪及び三輪のマイクロモビリティ―に依存する荷物や食料品の商用宅配サービスの規制を担う

マイクロモビリティは、新たな交通手段として、渋滞の緩和や大気汚染の改善に欠かせない。一方で、歩行者との錯綜や搭載バッテリーを原因とする火災の発生、ギグワーカーの労働環境など解くべき課題も山積している。エリック・アダムス市長は、「街路とその使い方は着実に変化をしており、我々もその変化にあわせて規制や制度、空間などを変えていく必要がある。」と述べている。

マイクロモビリティを使った宅配サービスには経済的なメリットもある。ニューヨーク副市長は「物流の効率化や技術革新など企業側のメリットに加えて、参入障壁の低い労働機会の創出は労働者にも恩恵がある。」と述べている。すでに物流企業は端末部分をトラックからカーゴバイクへと配送手段を転換しているが、今年中に導入が予定されているロードプライシングがその転換をさらに後押しすることが予想される。また、カーゴバイク以外の新たな車両の導入や新たなアプリの導入なども考えられる。しかし、現状では、最低賃金ルールの設定などの労働環境の改善は消費者労働者保護局が、道路デザインや交通ルールの教育は運輸局と、それぞれの部署がそれぞれの所管に応じて対策を進めている。今後、現状の課題を解決し市民生活に適切に導入するためには、より総合的な対策が必要となる。

ニューヨーク市は類似の取り組みとして1971年に設立されたタクシー・リムジン委員会を想定している。タクシー・リムジン委員会は、タクシーなど多くの車両が縁石スペースを取り合う状況を改善し、企業と労働者のワンストップの窓口として運転手の免許や保険の確認、台数上限の管理、安全性の確保などを担ってきた。近年では、イエローキャブとライドヘイリングの調整を行い、UberやLyftに対する規制の導入などを行っている。

今後、ニューヨーク市役所は、市議会が協力し、企業や労働団体を巻き込んだタスクフォースチームを組成し、企業の規制任務の草案策定などを進める。

insight|知見

  • 行政の体制を変えて、新しいサービスをうまく現在の社会システムにインストールしようという考えにとても感銘を受けます。日本でも縦割り行政が否定されたり、新しいサービスや技術に対して悲観論と肯定論との二項対立的な議論が起きたたりしますが、ニューヨーク市のこのような取り組みは見かけません。

  • マイクロモビリティもライドシェアも、推進か規制かの単純な議論ではなく、推進しながらも適切に規制するような進め方にしてほしいと思います。新しい技術やサービスに阿るのではなく、うまくて手懐けるような発想が必要な気がします。