マイクロモビリティのシェアサービスに都市は補助金を出すべきか?
case|事例
自転車や電動キックボードのシェアサービスは、都市交通のユビキタス的な特徴を帯び始めている。その中で、いくつかの都市ではより長期的で協調的な資金調達モデルが必要ではないかというような議論を始めている。
その1つがマイクロサブシディという概念で、シェアサービスを提供する事業者が都心以外で幅広いサービス展開を行う引き換えに、交通局などの公的機関がサービスの一部に補助金を拠出するというものだ。COVID-19の影響で経営が痛み資金難に陥っている状況で補助金の拠出はナンセンスだという考え方もあるが、一方で需要の薄いエリアをはじめとして公共交通への市民のアクセシビリティを高めるという潜在的な便益が補助金の拠出で期待できるという考え方もある。
アムステルダム市の担当者は、「マイクロモビリティのシェアサービスに対する補助金のプログラムはまだ存在しておらず、現在検討中の段階であるが、端末の移動手段への補助という発想で、現在公共交通に拠出している補助金の拡大はあり得る。特に需要の薄い郊外へのサービス拡大が実現できる。」と見解を示している。
もちろん事業者も好意的で、Lyftの担当者は「低密度なエリアで収益の見込めないエリアでサービスを提供するには公的な補助金が重要である。」とコメントしている。またフランスの事業者であるDottは、ブリュッセルでの実証においてマイクロサブシディの有効性を検証している。実証では低所得者の利用料金割引の導入効果を検証し、マイクロサブシディが都市の持続可能な目標の実現を加速させると結論付けている。
insight|知見
偏りを極力なくし、インフラとしての市民サービスとして移動サービスを提供する場合には、補助金などの公的な補助によるサービスの郊外への拡張が効果的だなと記事を読んで感じました。
完全な民間事業に頼っていると、事業収益によってサービスの濃淡が出てしまいます。特に、人口減少の局面ではなおさらです。
とはいえ、闇雲な補助金の拠出は避けるべきなので、どういう総合交通体系を描くかということを官民が連携して描くことが補助の前提だと思います。個々の赤字路線対応などに限らず、都市にどういう移動サービスが必要なのかという具体的な議論がもっと事業者と行政でできるといいなと思います。