釜山市の15分都市形成に向けた取り組み
case | 記事
韓国釜山市は、2010年にスマートシティのコンセプトが誕生したときからスマートシティの形成に取り組んできていたが、2021年の市長選挙でパク・ヒョンジュン候補(後の新市長)は、「幸せな近さ」というアプローチで15分都市をつくることを選挙公約に、釜山市における住民サービスの近接性を大幅に改善することを訴えた。その後の市政では、日常生活に不可欠なアメニティを、全ての市民が簡単にアクセスできる範囲に都市空間に充実させる計画を策定し、単にスマートシティ技術を導入するのではなく、都市環境を見直し、改造して、住民にとってよりアクセスしやすく、サービスに近く、使いやすいものにするために投資することを推進した。これにより、釜山市のカーボンニュートラル達成という目的の達成も狙った。
15分都市釜山を形成するにあたって、市は各地域のコンセンサスの形成や具体的な開発戦略を策定を進め、また、15分都市のビジョンに特化した都市計画部門を創設し、50名に及ぶ人員配置と予算措置充てた。15分都市に向けた「幸せな近さ」アプローチとして、エコロジー、近接性、連帯、市民参加の4つを基本原則に、2021年8月には「ハッピー・チャレンジ」プロジェクトを立ち上げ300億ウォン(約34億円)、2027年までに総額1,500億ウォン(約170億円)を戦略的な課題に割り当て、釜山市をダイナミックなリビングラボに作り変える事業を進めた。ハッピー・チャレンジプロジェクトでは、歩くことに重点を置き、快適な生活施設の導入など、市民が気兼ねなく交流できる都市環境をつくり、多様で活力に満ちたコミュニティを形成することを目指している。
2022年以降も多額の予算が15分都市の形成に割り当てられ、道路、公園、公共空間などのインフラ整備と、地域生活を豊かにするためのさまざまな政策イニシアチブが展開された。また、地域経営の革新を図るため、試験的な住宅地において官民パートナーシップを確立することで自律的な地方自治のモデルを開発し始めた。2023年から2024年にかけて、さらに4つの地域が選定され、2027年までに5つの代表的な居住地域が完成する予定で、各居住区の特性を考慮したアクセス改善事業、地域社会の連帯強化事業、生態系復元事業などが進められる。
insight | 知見
当コラムでもパリをはじめ欧州を中心に15分都市の話題をいくつも記事として上げてきましたが、不勉強にも釜山市の取り組みはこの記事で初めて知りました。釜山市は福岡市の姉妹都市でもあるので、ちゃんと知っておかないといけないと反省です。
都市の炭素削減に向けて、どのような広報施策で市民の行動変容を促すべきか、という課題を設定している自治体の担当組織に先日接しましたが、市民の行動変容を促すために自治体が進めるべき事項は広報よりも、釜山市のようなハッピーな気持ちで低炭素型の生活ができる都市になるための改造なのではないかと思いました。