見出し画像

物理的な分離のないカラー舗装だけの自転車レーンは事故率が高くなる可能性がある

case|事例

アトランタを対象にした研究で、ペイントのみの自転車レーンでは自動車と自転車の衝突事故が発生しやすく、その確率は自転車レーンが未整備な場合よりも高くなる可能性があることが明らかにされた。端路部は物理的に分離されていても幅員などの理由で交差点部分はペイントのみとなっている場合も同様の傾向がみられた。また、縁石での区分かプラスチックボラードの区分かによらず、何らかの方法で物理的に分離されている場合は安全が確保されることも示されている。

この研究はエモリー大学のチームによって実施された。23カ月以上にわたる事故データと自転車利用者のデータを用いて分析が行われ、自転車レーンの整備タイプごととに事故率が検証された。また、周辺の街路データ等を加味してモデルを構築し、インフラ整備されていない場合の事故率を推計している。比較分析では、地区レベルで世帯収入や人口密度を考慮し、自転車に乗ること自体を楽しむサイクリング利用と経済的な利用による日常利用を区分し、自転車利用の習熟度などの差を加味してもペイントのみの自転車レーンの事故発生率は高く、何もインフラ的な措置がされていない道路区間よりも事故率が高くなる傾向が明らかとなった。

主著者は、この結果の理由のひとつに、アトランタ市内の自転車レーンが、NACTOなどで示されている自転車レーンの設置基準とずれて整備されている可能性を挙げる。NACTOでは、ペイントのみの自転車レーンの設置は、幅員が狭く、交通量が少なく、自動車の走行速度が40km/h以下の場合が望ましいと基準を示しているが、アトランタでは基準よりも交通量が多く危険な道路で導入されている。交差点部においても、右左折する自動車と自転車の錯綜を防ぐために、コーナーブロックの設置が推奨されているが、現状ではカラー舗装のみとなることで錯綜が発生してしまう現状がある。

insight|事例

  • 速度や挙動の異なる自転車と自動車がどのように道路空間をシェアしていくのかということを考えさせられる記事です。

  • 日本でも自転車走行空間の整備は進んでいますが、そのほとんどは車道混在とペイントのみのパタンです。アトランタでの研究と同じことが日本でも起きているとすると、ゾッとします。電動キックボードなどのパーソナルモビリティの導入も増えていますが、ヘルメット着用や交通ルール徹底以上に、インフラ側の対応が必須なように思います。

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/bicycle-safe/pdf1/bicycle-safe4.pdf

  • 福岡は道路幅員がもともと広くないので、歩行者空間をできるだけ確保するために路肩を極力設けていません。そのため、多くの自転車レーンが車道混在のパタンとならざるを得ません。路線バスも多いので自動車だけでなく、バスとの錯綜も課題になります。最近ではバスの遅れを発生させる主要要因のひとつが自転車との錯綜とも聞きます。せっかくどちらも環境にやさしい移動手段なのに、インフラが原因で足をひっぱりあってるのはもったいないですよね。