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世界の通勤手段の半数以上は自動車である調査結果

case | 事例

オーストリアの研究機関である複雑性科学ハブ(Complexity Science Hub)とコロンビアEAFIT大学の研究者らによる『Environment International』誌に掲載された研究によると、世界全体で通勤の約51%が自動車で行われているとのこと。研究者らは61カ国794都市、合計人口約8億5,000万人の交通手段に関するデータを収集し、自動車、公共交通機関、アクティブ交通(徒歩や自転車)など、都市における交通手段の利用をモデル化することで、世界のさまざまな地域で人々がどのように通勤しているかを説明している。

地域によって通勤交通手段の割合は大きく異なっている。欧州では自動車に大きく依存しているローマ(66%)、マンチェスター(71%)、オランダのユトレヒト(75%)、スペインのビルバオ(66%)といった都市がある一方で、パリでは移動の大半を公共交通機関が占めており(60%)、ロンドンでも45%である。公共交通機関のシェアをみると、ベラルーシのミンスク(65%)、チェコのプラハ(52%)、ポーランドのワルシャワ(47%)、ハンガリーのブダペスト(45%)など、東欧の都市は公共交通機関への依存度が高い傾向にある。

南アジアと東アジアでは、公共交通機関が移動に占める割合が大きく、香港(77%)、ソウル(66%)、ムンバイ(52%)、東京(51%)などとなっている。また、南アジアと東アジアはアクティブ交通の比率も高く、パキスタンのダッカ(58%)、北京(53%)、上海(47%)、東京(37%)、ムンバイ(33%)、デリー(33%)など、アジアの大都市では徒歩や自転車での移動が多い。

ラテンアメリカとアフリカは自動車通勤はそれほど頻繁ではない。アクティブ・モビリティと公共交通機関が組み合わされ、よりバランスの取れた通勤手段となっている。例えばメキシコシティでは、自動車での移動は全体の21%に過ぎず、BRTやバスなどの他の交通手段と組み合わせた地下鉄システムが、市内の移動の半分近くを占めている。一方で、南アフリカのケープタウンのような裕福な都市では、車での移動がより頻繁となっている。

上述の地域とは対照的に、アメリカでは都市の規模によるモーダルシェアの差はほとんどなく、米国の都市の大半は、交通手段を自動車に強く依存した設計となっている。アメリカとカナダでは、通勤の92%近くが自動車で行われ、公共交通機関は4.6%、アクティブモビリティは3.5%という分析結果となっている。ニューヨークは米国で最も自動車を使わない都市であり、公共交通機関のシェアが最も高く(25%)、徒歩と自転車での通勤が通勤時間の8%を占めていることが明らかになった。

研究者らは、アクティブ交通や公共交通機関は自動車に代わる選択肢として、身体的、精神的、環境的に多くの利点をもたらすと指摘している一方で、移動に関する行動の変容は難しいことも認めている。中・大都市におけるアクティブ交通は、長距離通勤には難しく、また、公共交通機関は、頻繁に運行するための十分な乗客数が必要で、人口密度の影響を強く受けるからだ。

insight | 知見

  • 論文で作成されている分析結果を示す三角形のグラフがとても分かりやすく、しばらく眺めてしまいます。北米が極端な自動車依存で、欧州は多様な中でもかなりの割合は車に頼っていて、アジアはどちらかというと公共交通中心だという様相が視覚的に分かります。

  • 同じ手法で日本の都市を分析できるのであれば、恐らく自動車依存の都市や町もたくさん出てくるのではないかと思います。